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尋ねること(5)

興奮している患者さんに「落ち着いてください」とか「ベッドに戻りましょう」などとよく声をかけると思いますが、そんな時は「どうしたんですか」「どこに行こうとしているのですか」というように尋ねてみてください。

不穏になるにもそれなりの理由があるはずで、落ち着いてくださいとお願いしたところでそう簡単に落ち着いてくれるものではありません。それに、どんなに丁寧なお願いであっても、本質的にはこちらの事情を押しつけているわけなので、相手の反発を買いやすくなります。

一方、尋ねるというのは相手の事情に思いを至らせる行為です。したがって敵対的な関係になりにくいといえます。少なくとも「押しつけ」に対する反発でさらに興奮させてしまう危険は減るでしょう、うまくいけば不穏の原因を聞き出すことができて、あっさり解決できることもありえます。

「尋ねる」のは遠回りにみえて、けっこう近道になる手段なのです。

文章:精神科やすだ (2006年5月25日初公開)
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