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鏡になる(39)

精神療法のひとつの方略として「相手の姿を映す鏡になる」というものがあります。

具体的な方法としては、相手の発言を分かりやすい形に整理して再び提示する(繰り返しや言い換え、要約)、混沌とした感情を言語的に表現できるように仕向ける(「どんな気持ちでした?」と尋ねる、「悔しかったのですね」などと感情に名前をつける)などが挙げられます。自分では気がつきにくい自分の思考や感情に目が向くよう、相手の発言や感情表出をそのままの形で返していきます。

ふとのぞいた鏡に眉間にしわを寄せた険しい顔が映っていたら、「いかんいかん、リラックスしよう」などと我が身を振り返ったりするでしょう。鏡は事実をそのまま映すだけで解説も説教も嘘も言いませんが、思考や行動を変えるきっかけになります。他人が指摘するのではなく治療者という鏡を通して自分の力で気づいてもらうというところがポイントです。

文章:精神科やすだ (2006年12月8日初公開)
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