小さな声にしてもらう(64)

「悲しいから泣くんじゃない、泣くから悲しくなるのだ」という有名な言葉があります。感情が行動に影響を与えることは当然ですが、行動もまた感情に影響を与えるのです。

一般的に興奮すると声は大きく早口になり、姿勢も前のめりになってきます。逆に大声でまくし立てることによって、ますます気持ちが昂ぶってくるという悪循環も生じます。

ですから、大声で怒っている人に「もう少し小さな声でお話しいただけませんか」と頼んだり、早口に泣きじゃくる人に「もう少しゆっくりと話してみましょうよ」と促すのは、相手を落ち着かせるためのひとつの方法になります。

「落ち着いてください」と相手に言うのは、指示があまり具体的でないですし、そもそも興奮している人はそのことに気づいていないので、「落ち着くのはそっちの方だ！」などとますます怒らせるはめになるだろうと思います。

文章：精神科やすだ　（２００７年８月１８日初公開）
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