こんな僕を2度も日本一にしてくれた【ボブ】
こんにちは、【STATES omotesando】という美容室で店長をしている小川泰明です。
現代は、スマホを開けば、髪型が探せる便利な時代。
自分がなりたい髪型はインスタで探せる、たくさんの美容師さんが自分のヘア作品を発信できる、そんな素晴らしい時代になりました。
この記事は、そんなヘアカタログについてのお話です。
ヘアカタログ
ひと昔前までは、雑誌でしか髪型を探すことができない時代がありました。
ヘアカタログや雑誌の切り抜きを美容室に持っていき、その髪型をオーダーする。
ほんの10数年前まではそんな時代だったんです。
しかし、インターネットの普及と共にヘアカタログという概念も大きく変化していきました。
ホットペッパービューティーをはじめとする美容室検索サイトの台頭。
そしてその検索サイトの多くにはヘアカタログページというものが存在します。
さらに、ヘアカタログの閲覧数などを元に作成されるヘアスタイルランキングというものも存在します。
ヘアカタログページやランキングページなどの気に入った髪型から、その髪型を作った美容室・美容師にたどり着くことができる。
ヘアカタログは紙面からネット上へと、その住処を変えていきました。
今でこそiPhoneでヘアスタイルを撮影し、アプリで加工、インスタグラムで発信と、誰でも簡単にヘアスタイルを世の中に発信できるツールが整いました。
しかし、10数年前までは、
一部の一眼レフカメラを駆使する美容師さんを除けば、カメラマンさん・モデルさん・スタジオ代を自分で工面し、身銭を切ってひとつのヘアスタイル作品を作り上げる時代でした。
そんな時代に自分はヘアスタイルの作品撮りを始めたのです。
ヘアスタイル撮影
1回の撮影に費やす費用はおよそ1万5千円程度。
モデル代・カメラマン代・スタジオ代・メイク代etc...
当時の自分の収入では、ヘアスタイル撮影費は月1回がギリギリの捻出でした。
「絶対に誰からも素敵と思われるヘアスタイルをつくる」
そんな強い思いでヘアスタイル撮影に臨んでいました。
そして、日本一を獲得するヘアスタイルを2つ生み出すことができたんです。
ナチュラルワンレングスボブ
「ビューティーナビ」という美容室検索サイトの全国人気ヘアスタイルランキングで、10周連続1位を獲得した作品です。
その後ホットペッパービューティーのヘアスタイルランキングでも、全国トップ10に入りました。
当時Google検索で「ボブ」と検索すると画像で1番上に表示されていました。
そして、この髪型にしたいという方の指名予約が殺到。
あまりの問い合わせに、多くの予約を断っていたことを思い出します。
このヘアスタイルがきっかけで出会い、今もお付き合いをさせて頂いているお客様がたくさんいらっしゃいます。
このヘアスタイルは、自分の美容師人生を大きく変えてくれた、そして今の自分を作ってくれた、とてもとても大きな意味を持つ作品です。
スウィートボブ
先述の「ナチュラルワンレングスボブ」から1年後に、再びビューティーナビで全国1位を獲得したヘアスタイルです。
そして、ユーザー投票で決まるその年の年間ランキングでも2位を獲得することができました。
あ、その時の1位は自分が辞めたお店の同期が取ってましたね。。
まあ色々と思うところはありましたが、、組織には逆らえないってことです笑
その後、ホットペッパービューティーでも上位を獲得し、沢山のご新規様にご来店頂いた作品です。
ボブが好き
2つのヘアスタイルには共通していることがあります。
そう、どちらのスタイルも「ボブ」だということです。
2年連続でボブがヒットしたことで、自分の抱える顧客様の8割が「ボブ」のお客さんで埋め尽くされていた時期です。
あ、自分、ボブが得意なんだ。
というより、ボブが好きなんだ。
そのとき初めて実感したんです。
その2年間は、恐らく日本で1番ボブを切っていた美容師だと思います。
上手く切れないこともありました。
お客さんに納得してもらえないこともありました。
悔しいから、情けないから、上手くなれるように練習しました。
いろんなことを試しました。
そして自信を持って切れるようになったとき、
魔法が解けたかのように「ボブ」のオーダーがなくなりました。
人生ってそんなものです。
人気というものは、良し悪しで決定されるのではない。
露出と認知度がすべてということに、そのとき初めて気づき、目が覚めました。
ヘアスタイルでお客様を呼ぶことを辞めました。
もっと深い部分に突き刺さるもので、自分を知ってほしいと、そう思うようになったのです。
ふたつの日本一が教えてくれたこと
昨今のヘアスタイル事情は、10数年前とは訳が違います。
ヘアスタイルは昔に比べて遥かに多くの数が、世の中に発信されています。
同じものを再投稿したり、人に見られる時間帯を狙って投稿したり、ハッシュタグを駆使したり、SNSを駆使して広めたりetc...
水面下に上がってきて、人の目に触れるものはほんのわずかで、正攻法ではもはや誰にも見られることのないまま埋もれていってしまう、非常に難しい時代です。
本当に素敵なヘアスタイルが、正当な評価を受けることなく埋もれてしまう、ヘアスタイルは流れては消えてゆく消費されてしまう時代になりました。
自分が2度も日本一を獲れたのは、
「時代が良かったんだよ」という人がいるかもしれません。
確かにそうかもしれません。
けれど、良いものがきちんと良いと評価されている時代に、きちんとした評価をしてもらえた事をとても光栄に、そして誇らしく思います。
・人の目に触れれば勝ち
・売れたものが正しい
・売れるために勝て
いつのまにか美容師の創作活動は、ただ消費されるためだけのルーティンになってしまっていることを、とても残念に思います。
自分はこの2つのボブから学んだことがあります。
自分の信じるものを作れ。
売れたいとか、稼ぎたいとか、勝ちたいとか、そんな思いで作るヘアスタイルではなく、本当に自分が素敵だと信じるヘアスタイルを作ればいいんだと。
たかが日本一、されど日本一。
挫けそうになったとき、押しつぶされそうになったとき、自分が作ったこのふたつの日本一が、いまでもそっと自分の背中を支えてくれています。
だから今日も、明日も、自分を信じて、自分のままで進んでいけるんです。
このふたつのボブは、自分の美容師人生を支えてくれている、とてもとても大切な作品なんです。
自分たちの美容業界だけではなく、
すべての創作活動に携わるクリエイティブな業界で、どうかまた、良いものがきちんと良いと評価される時代が来ることを願っています。
長文にお付き合い頂きありがとうございました。
小川泰明
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?