見出し画像

父の葬儀のこと

2018年9月に父を亡くしました。
一年以上経ち冷静にふり返れるようになりました。
母の葬儀も私の葬儀もいつの日かやってきますので、今の考えをまとめておきます。

交際範囲の狭かった父

父は76歳まで勤務し、がんの手術をきっかけに退職しました。
80歳で亡くなるまでの4年間は、午前は散歩をして、午後から夜は自室でテレビを見て過ごす日々でした。週に2.3度、買い物に行く母を車で送迎していました。
入院中の見舞いも家族と父の兄弟(叔父叔母)だけでした。
叔父叔母以外の親族とは全く交流がなく、ご近所の人はすれ違ったら挨拶する程度でした。同窓会に出るとか、退職後に元同僚などと会うこともなし。地域の団体や趣味の会など何らかの団体に所属していることもなかったし、インターネットも閲覧だけでSNSをやっている様子はありませんでした。
ですので、亡くなって葬儀という段になっても、叔父叔母だけしか連絡すべき先が思いつきませんでした。

葬儀社の言いなりになるしかない

亡くなる前夜21時頃に病院から連絡があり、母と私はすぐに駆けつけましたが、すでに意識はなく、最期に話すことはできませんでした。翌朝4時に母と私が見守る中、息を引き取りました。母が某葬儀社の互助会の積立をしていたので、その会社に葬儀を依頼しました。父の自室は二階でしたし、一階を片付ける暇もなかったので、自宅には帰らず、葬祭場の霊安室に直行しました。

葬祭場に着くと、死亡届と火葬許可の手続代行の書類と、僧侶手配(遺族が連絡するか、葬儀社で紹介してもらうか)について最低限の確認がありました。我が家は母の実家に近いので、母の実家がお世話になっているお寺にお願いしました。朝7時に連絡して8時に臨終勤行(枕経)に来ていただきました。

臨終勤行が終わると、母をタクシーで帰宅させ少しでも寝るように言いました。私は、叔父叔母の到着を葬祭場で待ちました。3人の兄弟のうち関西に住む叔母2人は9時頃、関東に住む叔父は10時半頃到着しました。その頃には火葬場の予約も決まり、その夜に通夜、翌日に葬儀と日程も決まりました。

1時頃に母が葬祭場に戻り、葬儀社と葬儀内容の打ち合わせです。明細についてひとつずつ説明があり、「棺はこのページから、骨壷はこのページから」とカタログを見て選んでいきます。途中に「湯灌をしても、どうしても臭いはしますので消臭剤を入れます。今の季節だとドライアイスは○キロ必要です」みたいに必須事項が入ってくるのですが、「本当に必要か?」と疑問を抱きながらも、調べてから返事というわけにもいかず、結局は葬儀社の言いなりになるしかなかったです。
そんな中で私が一つだけ葬儀社の提案に反したのは中陰壇。火葬後、四十九日(満中陰)まで遺骨を安置する祭壇です。「これは葬儀社で購入しなくても仏具店で購入できるんじゃないか。葬儀社では一種類だけど探したら種類も価格も色々あるんじゃないか。使うのは火葬が終わってからだし、まだ時間の余裕もある」と思って、中陰壇だけは断りました。

叔父叔母への対応に疲れる

葬儀社との打ち合わせが終わり、母と二人で帰宅。軽い食事をして一休みしてまた葬祭場へ。湯灌・納棺を済ませて19時から通夜。翌日10時から葬儀。どちらも家族と叔父叔母だけで見送りました。火葬、骨上げを済ませたところで、タクシーを手配し、叔父叔母には帰ってもらいました。

正直言って、叔父叔母への対応には疲れましたね。母と仲が悪かったので、母と一緒の場所にいるだけで気を使いました。
医師から「身内の方に連絡を」と言われて、父の兄弟のうち一番近くに住む叔母には23時頃に電話をし、「タクシーですぐ来てください。タクシー代はこちらで払いますから」と伝え、0時にも電話をしたのですが結局病院には来ませんでした。意識のない父の足を擦りながら「もうすぐ○○さん(叔母の名)が来てくれるから」と必死で励まし、延命のための輸血を何度もお願いしたので、「これだけ待ってこないということは、そういう事だと思います」と医師に伝えるときは虚しい気持ちでした。

臨終の旨を電話で伝えたときも「駅まで来たけれど、それなら着替えに戻らないといけない。タクシーでと言われても、女ひとりで夜中にそんなことできないし」とグズグズと言われ、「葬祭場は○○です。何時頃、来られますか?」と聞いてもはっきりしない返事で、前夜からずっと病院で徹夜で疲れている中、叔父叔母を葬祭場で待たなければいけませんでした。到着してからもお客様状態だったので、飲み物を用意したり食事の取れる場所を案内したりと気を使いっぱなしでした。
叔父は「初七日は葬儀に続いてしちゃうんでしょ」とか「東京は火葬場が足りないから何日も待たされるのが普通だよ」などと半可通な事を言うだけで、家族の助けにはなりませんでした。

大きな葬儀では喪主と葬儀委員長を立てますが、喪主たち遺族は故人との最期のお別れをし、葬儀の段取りや参列客対応を葬儀委員長が行うというのは、理にかなった役割分担だと思います。

葬儀社について

霊安室での布団はビニールカバー(テーブルクロスくらいの厚み)がついていて、寝心地悪そうでした。汚れ防止なのでしょうけれど、9月上旬の霊安室は強い冷房が入っていて、ビニールカバーつきでは寒そうでした。

湯灌は二人の女性職員により手際よく進められました。底が昇降するバスタブで、ストレッチャーからお風呂への移動もスムーズ。体を洗うのはもちろん、シャンプーや髭剃りもあり。「逆さ水」などの説明や、遺族が足から胸に向かって湯桶の湯をかける儀式もありました。母が用意した着物の着付けも上手にやってくれましたし、今回の葬儀社のサービスの中では一番満足度が高かったです。

生花を用意する際、「お好きだった花や、お好きだった色はありますか?」と聞かれました。母も私も答えられませんでした。父に関心がなかったわけではないですが、花を買ったり飾ったりする習慣のない人でしたし、洋服にもこだわりがなかったので、本人の好みはわかりませんでした。

通夜の際には僧侶が準備した白木位牌を職員が祭壇に置くのですが、裏表逆に置き、僧侶が入場して気づいて直すということがありました。通夜が終わってから担当者に「最初、裏返しに置くというのは、そういう風習があるのですか?」と聞いたらミスを認め謝罪を受けました。前夜からほとんど寝ておらず気が苛立っていたため、その時は強く怒ってしまいました。

葬儀の朝、母が「病院から直接葬祭場に来てしまったので、火葬場に行く時に自宅の前を通って欲しい」と言いました。「葬祭場から火葬場へは地域との取り決めで決まったルートしか通れない。病院から葬祭場へ運ぶときなら対応できたのですが」と担当者の返事。母は納得できない様子で「なんでや、なんでや」を繰り返すので、再度お願いしたところ、特別に内密にとのことで、自宅の前を通ってもらいました。(書いちゃったら内密でないですけど、1年以上前のことなので許してください)

初七日は葬儀当日には行わないことにしたので、葬儀社とは火葬場でお別れ。その葬儀社は担当者が直接集金できないとのことで、火葬場に経理の人が来て、火葬場の待合室で現金で支払いを済ませました。母が担当者に心付けを渡そうとしましたが固辞されました。

葬儀社で頼まなかった中陰壇ですが、火葬場から家に戻ってネット通販で調べましたがすぐ買えるのは一種類くらいしか見つからず、近隣の仏具店3件に全部電話しましたが、どこも「うちには置いていません。葬儀社に頼まれたならセットに入っていませんか?」との返事。それで、結局は葬儀社に追加購入したいと電話しました。見積では中陰壇と仏具(ろうそく立てや香炉)がセットで2万5千円だったたので、お金を持って葬儀社に出向いたのですが、「通夜の不手際のお詫びです」と無料でもらえました。見積もりの際に全く値引き交渉をしなかったのでその程度は値引き可能だった、火葬場で支払いを済ませた後だったので追加の処理が面倒だった、といった理由かなと想像しました。
葬儀費用って値段交渉しづらいですよね。この記事を書くのに請求書を見直しましたが、消費税(まだ8%でした)を含むと一円単位の端数があり、「千円単位にまとめて」くらいは言っても良かったかなと思います。

葬儀社に払ったのは約70万円でした。参列は家族と叔父叔母の合わせて5名の、いわゆる家族葬です。棺を選ぶときランクの高い国産のものを母が選んだのと、その他もオプション品をいくつか選んだので、それらを省くと50万円くらいになったと思います。もちろん、お寺へのお布施は別です。

葬儀の後

この年の10月下旬に年賀欠礼のハガキを出しましたので、郵送での香典や、自宅への弔問が数件ありました。我が家は数件で済みましたけれど、交際範囲が広い人だと、人から人に伝わって断続的に香典や弔問が続き、遺族の負担になると聞いたことがあります。

父の実家は家の近くのお寺の境内墓地に墓があり、その寺は浄土宗なのですが、家の宗派は浄土真宗だと聞いていました。生前、祖母から「仏壇には帰命無量をあげている」(正信偈をあげている)とも聞いていました。それで、今回の葬儀は母の実家でお願いしている浄土真宗本願寺派のお寺にお願いしました。ですが、火葬場で火葬の待ち時間に叔父から聞いた話によると、祖父も祖母も東大谷に分骨しているとのこと。そう言えば、父の実家からもらった数珠入れに牡丹の紋があったな。と言うわけで、代々は大谷派だったようです。父は宗教に関心のない人だったので生前に聞く機会がなかったのですが、家代々の宗派を守りたい人は、早いうちに確認しておくほうが良いと思います。

お願いしたお寺は母の実家のお寺だったので、ご住職と父とは生前に面識がありませんでした。面識のない住職に法名(戒名)をつけてもらうと言うのは寂しいなと思いました、

次の葬儀では

・本人が、葬儀をお願いするお寺、葬儀社へ生前予約しておくのが一番
・葬儀社は事前に見学&見積で、見積の疑問点は葬儀社に聞いたり自分で調べたりして解決しておく
・通夜、葬儀は家族だけで行い、最期のお別れに集中する
・弔問があるようなら、四十九日、百か日などの節目に、親類や友人に案内を出してお別れ会をする
→事前案内を出せば弔問者も予定がしやすいし、断続的な弔問による負担もなくなると思います

サポートのお金をためて、仏教についての本を購入します。 その際には感想をnoteしますね。