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悪性腫瘍メラノーマの疑いで生検した話

初めての診察

ボーっとテレビを見て、ふと自分の足を見ると、足裏に今までは無かったほくろのようなものがあることに気付いた。

「足裏のほくろは良くないらしい」

どこかで聞いたことがあった私は、その次の週に皮膚科へ行った。運よくダーモスコピーという特別な装置?があって医者は丁寧に診てくれた。そのダーモスコピーという装置がないと診断しにくいらしい。

「まあ大丈夫でしょ。」

そんな風におもっていた。しかし診察が長い。一眼レフのカメラで私の足裏のほくろの写真を何枚も撮っている。だんだんと不安になってくる。

「時間がかかっているけど、もしかして何かあるのか・・・。」

10分ぐらい医者はほくろの画像の観察をしていた。そして診察の最後に言われたのは、

「うーん、なんとも言えないけど、大きさが今6ミリだから少し様子を見よう。また3か月後来てください。」

不安だった。3か月後絶対来よう。というか3か月も待って大丈夫なのか?そんな気持ちで初回の診察は終えた。

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大きくなるほくろ

結局私は3か月待たず、2か月後に病院に行った。前回と同じように一眼レフのカメラで写真を撮られる。そして、

「大きさは変わってないね。また3か月後来てください。」

それから私は3か月に一度、そこの皮膚科で診察をしてもらって、初回の診察から約1年半後、ほくろに変化が現れ始めた。ほくろが大きくなりだしたのだ。

大きさは6ミリだったのが7ミリになり、色がはっきりと濃くなっていた。形も左右対称ではなく、歪な形をしている。そこから、

「次は2か月後に来てください。」

今まで3か月に一回の診察が2か月に一回になった。

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生じてくる不安

何かしているときや、仕事をしているときは良いのだが、裸足になってほくろが気になりだすと不安になった。なるべく忘れるようにしたくて、いつもと変わらない生活を心がけながら、2か月に一回の検診に通った。検診に行くたびに不安からか嫌な汗をかいた。

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渡された紹介状

定期診察が2か月に1度になってから1年後、いつものようにカメラで画像診断をしてもらいながら、嫌な汗をかいていた私に医者が言った。

「ちょっと大きくなってきているので、紹介状書きますから、病院で診てもらってください。」

えぇ・・・。)

もし悪性だったら・・・。こんな不安な気持ちを抱えるんだったら、一刻も早く取ってしまいたい・・・。

そう思った。

すぐに病院の予約をとり、直近で診てもらえる3週間後、大病院で診察してもらえることになった。

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意思

3週間後、大病院を訪れた私は、大勢の患者を見ながら名前を呼ばれるのを待った。待ちながら、病気を患っている人がこんなにたくさんいると思うと複雑な気持ちになった。そして自分も他人から見るとその一人なのかと感じてきた。

1時間ぐらい待って名前が呼ばれた。

精神状態からかその日は特別変な汗をかいていたので、靴下を脱ぐとき足が臭わないか気になった。

足裏をアルコール消毒して、2種類のカメラ(レンズを変えただけかもしれない)でほくろの写真を撮った。通っていた皮膚科よりも短い時間の診察だった。そして待合室で待つこと約20分。再び名前が呼ばれ大病院の先生は、

「恐らく大丈夫なものだとは思いますが、確証はもてません。不安なら取ってしまった方が良いと思いますよ。」

紹介状を渡されたときから、早く取りたかった私は、取ってほしい意思を伝えた。

そして約1か月後に手術することが決まった。

診察の最後に、手術の同意書を書き、明るくて元気な看護師さんに手術当日の説明をされた。

「足裏の麻酔は他の場所より痛いのでそこだけ先にお伝えしておきます!頑張ってくださいね!」

看護師の笑顔が眩しかった。

その夜、私はネットで足裏の麻酔のことについて調べた。

どうやら結構痛いらしい。びびっていた。

びびっても時間は変わらないので、とにかく1か月待つことにした。

名医

いよいよ手術の日がやってきた。長い間気にしてきた黒いシミをようやく取り除ける日が来た。

手術は朝9時15分から。9時に病院に到着。血圧を測って待っていると今回はすぐに呼ばれた。

診察室の隣の処置室に行く。処置室と言っても人が横になれるくらいの台をカーテンで仕切った空間だ。

「うつ伏せで待っていてください。」

私はアプリゲームをして手術の意識を消そうとした。10分くらい待っていると医者と看護師2人がやってきた。

「体調はいいですか?」−「はい。」

「それじゃあ始めるけど、今日唯一痛いことするからね~。」

(きた。麻酔だ・・・。)

足首が固定される。眼前のゲームはついているが、プレイできない。神経が足に集中している。

プッツ・・・・

針のささる感覚の後、冷たい液体が注入される。

つねられるような痛みはあったが、予想していたより痛くない!

足の小指をタンスにぶつける方が2,3倍痛い。あの息が止まるような痛みに比べれば全く痛くない!

2本目が来る。同じような痛みだが、1本目よりさらに痛くない!

3本目。ここまでくると痛みはほとんどない。麻酔が効いてきているとすぐわかった。

4本目は感覚がなくなって打ったのかどうかも分からない。

医者が、

「これ感覚ありますか?」

と、何回か聞いてくるも

「ありません。」

「大丈夫だね。はじめるよ。」

もう余裕だった。私は完全にアプリゲームを楽しむことができるくらいに。

10分ぐらいして、

「もうすぐ終わるよー。」

「はやい!!」

足裏の皮が固いからか縫合のとき肉を寄せている感覚があった。痛みはない。そして

「終わりましたよー。」

私はすぐに傷口を見た。血が全然出ておらず、縫い糸が3本綺麗な平行線となって傷口を塞いでいる。私は麻酔と医者の腕に感動した。そして何より麻酔の痛みが杞憂で終わったことに安心した。現代医療に感謝するばかりだ。

後日分かったのだが、担当してくれた医者はメラノーマの専門医であり、学会でも有名な名医だと分かった。それは、手際の良い手術の腕を見れば言われなくても明らかだった。

術後

「検査の結果は3週間ぐらいかかります。その前に抜糸に来てください。」と言われ、10日後に抜糸することになった。

足裏は皮膚が固いため、くっつくまでに他の場所よりも時間がかかるらしい。

その日は痛み止めの薬と抗生物質を1週間分もらって帰った。

夕方まで麻酔が効いていたが、夜になると麻酔が切れ痛むようになった。

痛み止めは飲まなかった。それぐらい大した痛みではなかった。少しジンジンするような痛みといったらよいか。痛み止めを飲まなくても、ちゃんと眠れた。

シャワーも次の日から浴びれた。「傷口は毎日洗ってください。」と言われたので優しくなでるように洗ったが、感覚が気持ち悪かった。何もしなければ傷の痛みは3,4日で完全に消えたが、足裏なので刺激しないことが難しかった。そういったこともくっつくまでに時間がかかる要因なのだろう。

抜糸~検査結果

抜糸も問題なく終え、検査結果を聞くために病院を訪れた。

名前が呼ばれ、医者から言われたのは、

「色素性母斑。いわゆるほくろでした。傷口ふさがるまでしっかりテープを貼ってね。はい。いいですよ。」

本当に安心した。

人はいつか死ぬ。それはいつなるかも分からない。だから治ったら自分の好きなことをしよう。元気なうちに。そして生きた証を残そう。それが今自分の一番好きなことだ。

足裏のほくろから私はそれを学んだ。

ありがとう。ほくろ。

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