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羽島市・旧庁舎等の解体工事契約の締結の停止を求める住民監査請求【棄却】

https://www.city.hashima.lg.jp/secure/2810/R060422kansakekka.pdf

住民監査請求の結果に基づいて請求内容、羽島市の主張および監査委員の監査結果をまとめると下記のとおりです。

住民の請求内容

  1. 解体理由の不提示
    旧本庁舎は著名な建築家の作品であり、文化的価値が高い。しかし、羽島市は合理的な解体理由を提示していない。

  2. 委員会の審議不十分
    旧庁舎あり方検討委員会には建築や文化財の専門家が含まれておらず、解体ありきの審議が行われたとされています。審議時間も僅か5時間であり、現地見学会も実施されていない。

  3. 市長の不回答および面談拒否
    DOCOMOMO Japanなどの団体からの保存に関する要望書に対し、市長は回答を行わず、市民や専門家との面談を拒否している。

  4. アンケートの信頼性の欠如
    市民アンケートの質問内容が保存反対に誘導するものであり、その結果は信頼性に欠ける。さらに、耐震改修費用についての専門家の試算が無視されている。

  5. 解体費用の増額と関連工事の見積り不足
    解体費用が当初見積もりから3倍に増額した理由についての説明が不十分であり、関連工事の見積もりも含まれていない。入札手続きについても、予定価格とほぼ同額であることから、適切な入札が行われなかった疑惑がある。

羽島市の主張

  1. 解体の合理的理由
    旧本庁舎は老朽化が進んでおり、耐震性に問題がある。市の財政状況を考慮し、解体が最適との結論に至った。耐震改修には多額の費用がかかり、財政負担が大きい。

  2. 委員会の審議プロセス
    旧庁舎あり方検討委員会は、学識経験者や市内公共的団体の代表者、公募委員など多方面の専門家で構成されている。委員会は慎重な審議を経て、解体が最良との答申を出した。

  3. 市長の対応
    市長は特定の団体や個人の意見を直接聞くことを避け、委員会の答申や他の事例を参考に判断している。要望書や質問書には可能な限り誠実に対応している。

  4. アンケートの信頼性
    アンケート調査は統計学上有意であり、市民の意向を把握するために実施したもので信頼性がある。耐震改修費用や維持管理費用についても、合理的な根拠に基づいて示されたものである。

  5. 解体費用の増額理由と入札手続き
    アスベストや杭の除去費用など、詳細な調査結果に基づく増額であり、予測の範囲内。予定価格の事前公表により透明性を確保しており、適正な入札手続きが行われた。

監査委員の判断

  1. 事実の確認
    旧本庁舎は文化財としての指定や登録はされておらず、重要文化財の候補でもない。解体理由についても合理的な説明がなされている。

  2. 委員会の信頼性
    旧庁舎あり方検討委員会は、多方面からの専門家で構成され、慎重な審議を経ている。審議内容は信頼に足るものであり、解体の結論に至るプロセスは適切である。

  3. 市長の対応とアンケート調査
    市長は重要な決断をする際に委員会の答申や他の事例を参考にしており、その対応は適切である。アンケート調査も信頼性があり、市民の意向を把握するために合理的に実施されている。

  4. 解体費用の増額理由と関連工事の見積り
    解体費用の増額は詳細な調査結果に基づくものであり、合理的な範囲内。関連工事の見積りも含まれており、費用増額の理由は十分に説明されている。

  5. 総合的な判断
    住民の請求に理由がないと判断され、請求は棄却された。市の対応が適切であり、解体工事に関する契約手続きおよび方針決定の過程に不当性は認められなかった。


本件については、住民訴訟が提起されました。

歴史的建造物の保存を求める住民監査請求は、最近では北海道でももんだいとなっています。