見出し画像

「ラブの秘密」が知りたくて──。

はじめに ー話をしようー

かつて「シスタープリンセス」という作品があった。ある程度以上の年齢のオタク層には知名度があるであろう、12人の妹達の物語だ。複数のヒロインが「自分」ないしは「主人公」にひたすら愛を語る基本構造はコテコテもいい所なのだが、その両端の関係が兄と(大勢の)妹であるとなると途端に独自性がいや増すのだから面白い。

僕自身も今やこの特異さに魅せられた「兄」の一人であり、およそ20年ほど遅れつつも妹沼に浸り、時折(概ね毎週月曜夜20時~20時半)喜悦のうわごとを漏らす(傍から見れば気持ち悪い)幸福な日々を送っている。前置きが長くなったが、この記事では僕をこの沼のほとりに引き留めているとある関連楽曲について(妄想まじりに)語ると共に、僕が今のシスプリに求めるものを熱に浮かされるまま、思うがままに書き連ねていく。

「ラブの秘密」の秘密

表題にもほぼそのままの気持ちを書いたのだからもうまんま出オチなのだが、何を隠そう「ラブの秘密」こそが僕にとっての特別な一曲だ。鈴凛という妹を演じる声優:神崎ちろ氏のキャラクターシンガー(ほとんど造語だ)としての歌唱が素晴らしいのは言うまでもなく、原作テキストを手掛けた公野櫻子氏自身の手になる歌詞から秘められた一つの物語を見てとれる(あるいは勝手に妄想できる)からである。

ポップなイントロから歌いだされる『男の子』が『優しく甘えられ』て『イチコロ』で篭絡される情景は原作テキストやゲーム版等でお馴染みの「アニキに資金援助のお願い」をする様子の俯瞰だろう。『資金援助してくれるアニキの事が大好き!』(公式書籍「オリジナルストーリーズ」より抜粋)という説明文は鈴凛というキャラクターを説明しきれるものではないが確かに彼女の真実の一端であり、資金援助を取り付けたのならこれは喜ばしい日常の1ページで済む話のはずだ。にも拘わらず、歌の主は釈然としない様子である。目的を達したにも関わらず「どうして気が付かないの?」ともどかしく思い悩み、兄妹関係への小さな嫉妬心さえ見せるこの歌い手は一体何者なのか。

その疑問を解決するのは、この曲がキャラクターソングとして作られたという事実であった。オリジナルCVである神崎氏自身が歌うのならばそれは鈴凛に他ならず、さりとて自分を客観的に眺める立場にもいる。そう考えて行きついた答えが、鈴凛自身の最大の発明品である所のアンドロイドであり、彼女の形代たるメカ鈴凛であった。

キャラクターコレクション8巻7話によれば、鈴凛自身の来るべき旅立ちに備えて、不在の間兄のそばを守る為にこの映し身は作られている。しかしそれと同時にやはり自分自身こそが兄の隣にいたい、離れたくないという思いもまたあった事に気づいてしまい、鈴凛の心中に葛藤が生まれる。好意と宿命の間で逡巡するもう一人の自分の姿を、大人しく忠実な機械はどう見つめるだろうか?『とぼけたらダメ』、『ごまかしちゃダメ』、『知らなかったなんてもう言わせない』このやや激しい詰め寄るような言葉は、12通りの兄妹関係の中で最も現実のそれに近いと言われた鈴凛と彼女のアニキとの関係を、真意に気づかせる事でより一層近づけようとしたエールだったのではないか?

もう少し私(の真意)に近づいてほしい、そう歌って終わった1番の後から、同じくキャラクターコレクション8巻2話を想起させるような模型飛行機の歌詞で2番が始まる。幼少期に二人で乗る為に作った飛行機の思い出、それこそが発明家としても兄妹愛の発露としても原点であり、そこに鈴凛というキャラクターの合一を見る。

おわりに ーあともう少しだけー

感情のままにキーボードを叩いてもとりとめのない乱文をこさえるばかりだという事がよくわかる仕上がりになってしまった。が、それでもこの文章を読み切ってくれた人がいるのなら、それだけの熱量を生み出しうる良曲だという事ばかりはご理解いただきたい。そして願わくば、現在youtubeにて進行中のシスプリVtuberプロジェクトにて鈴凛が参加した暁にこの歌がもう一度歌われる事を1ファンとして望んでやまない次第である。