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私論④~政策批判~

 国民にマスク2枚を配る。当初のものはどうも不良品だった。ガーゼを重ねて製作されたそれは、どうも大人の顔には小さくみえる。それでも数百億円かけてやる。郵送料、目に見えない宣伝費、すべて込みにしたら、とても高いマスクですね。
 10万円といえば庶民には大金。これが全国民に配られる。その費用は13兆円!今回のコロナ対策費は先に発表されたものが100兆円超。さらに24兆円もの国債を出す。ほとんどは赤字国債。
 10万円を配っても、消費は増えません。人々を温泉に行かせたいなら、レストランに一家そろって食事に行かせたいなら、コロナ禍の終息宣言の後にしたほうがよい。ある経済評論家が「今は何もしないで、お金(財政力)を貯める時」と言っているのは同感です。政治家は再選を気にして、何かアピールすることをしたい。人々の側も、あれをしてくれ、これをしてくれと要求する。まさに絵に描いたようなポピュリスムです。本稿のテーマではありませんが、日本の政治はあきらかに劣化し、財政はさらに危機に向かっています。
 大盤振る舞いの背景には2つの言い訳がありそうです。1つは、緊急時だから“なりふり構わず”というもの。もう1つは、MMT(Modern Monetary Theory):現代貨幣理論)という、まことに都合のよい理論を信じたふりをすることです。後者はL.R.レイというアメリカの学者が唱えた説です。これは、信用創造論を極端にしたものです。この説については、建部正義さんが『経済』で論評しています。(「価値論なき貨幣理論」『経済』2020年6月)
 国債も心配です。最大の保有者は日本銀行です。その次は郵政グループですが、彼らも2020年の3月末決算をみると国債保有額を減らしています。ゆうちょ銀行、2019年比4兆6300億円の減、かんぽ生命は1兆3100億円の減。では13兆円の赤字国債を買う人は?
 野党も、もっと出せとしか言いません。財源についての見解なしに、ただ執行額の増額だけを要求する。これでは10万円の功績を挙げた政党を批判することはできません。及川智洋さんというジャーナリストが『左翼はなぜ衰退したか』(祥伝社新書、2014年)で、財政問題・赤字の是正議論を放棄したことを彼らの衰退の一因として挙げています。無責任はあちこちに浸透しています。少し前のギリシャのようなことにならなければよいのですが。
 10万円に話を戻せば、ほとんどが貯蓄されて市中の銀行経由で日本銀行に還流し、残るのは国債残高の天文学的増大、つまり中央銀行の資産勘定の拡大と、同額の日本銀行発行額の増大、負債勘定の拡大です。少し将来をみると、こんなにたやすく手に入ってしまった10万円に、本当にそれだけの価値があるのかという疑いが出てきます。これは、タヌキの葉っぱかもしれないと思い、使えるうちに他の手持ちの日本銀行券(カードでも同じこと!)も使ってしまおう。そうなれば結果は恐ろしいことになります。もうどこにいっても商品の棚はすべてカラ。そう、今日のマスクのようのことが全商品について起こるのです。
 少し冷静になって考え、打つべき政策を考えましょう。ひとつは、外被層の傷みを軽減する。それは象徴的な表現ですが、人々に近いところです。凍傷がひどいのは、産業分野的には消費産業、そして属性としては小経営・自営業。ここが耐え切れなくなって大量脱落すれば大量失業が発生する。しかもこの失業は、手に職のある技術職は少なく、サービス業に従事する単純労働者ですから転職が難しい。地方にある小経営、そこに働く人にこそ、何かを届けねばなりません。
 もうひとつは、消費が凍結して、そこから普及して製造業へ。特に外被層にある小さな製造業に大きなしわ寄せがいく。しかし、これは放置しておけない。既に述べたように、国内サプライチェーンの末端を構成しているのです。これをダメにすれば、ほぼ永久に外国依存、中国依存から抜け出せない。そして、この外被層の小さな製造部門こそ、創意・工夫の生まれる古里なのです。ここに注目し、効率よく政策を展開する。それには10万円を配るほど、予算はかかりません。

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