マスコットの試合終了後ツイートについて~解釈を限定することの重要性~

 昨夜8月9日、東京2020オリンピックによる中断期間が明けたJ1リーグ。サンフレッチェ広島は敵地でアビスパ福岡と対戦し、J.サントスのゴールで先制しながらも福岡の猛攻に耐え切れずロスタイムに失点し1-1の引き分けという結果に終わった。敵地で勝ち点1。負けなかったのだからよしという考え方もある一方、リードから試合の最終盤で追い付かれた試合展開を考えれば勝ち点2を失ったという方が合っているかもしれない。さらに今季はホームでの試合を4月に終えていて1-2と敗戦。今季福岡には1勝も挙げられなかった。

 そんな中、試合終了から30分経たないうちにサンフレッチェ広島のマスコット、サンチェの公式ツイッターアカウントの投稿が広島サポーターたちの間で賛否を呼んだ。

 サンフレッチェのサポーター以外でサンチェの公式ツイッターについて詳しくない人にあらかじめ言っておくと、サンチェはのんびり屋で楽天家な性格で、難しい漢字が使えないので普段サンチェの公式ツイッターのツイートは基本ひらがなとカタカナ、それに絵文字を多用していて、そんな「ゆる~い」ツイートが魅力になっている。

なので、カタカナやひらがなを多用しているのはいつものことなのだ。おそらく、今回も同じように「ゆる~く」ツイートを発信しただけにすぎないはず。
ただ、「アウェイでまけなかったし、しゃーなしだよ!」という公式マスコットから発せられた一文が、勝利寸前で追い付かれ、ささくれ立ったサポーターたちの目に触れると
「しゃーなしとかそーゆう問題じゃねーよ」「その緩さが今のクソみたいなチーム状況を作るんでしょうね。あんたら中の人がこんな事言うのは違うやろ?」「お前本当にサンフレッチェの一員か?しゃーなしで済ませる次元じゃねーんだよ。ふざけんな」(ツイートへのリプライ・引用リツイートより)
といった一部のサポーターたちからの非難や批判が公式ツイートに寄せられる事態になった。

 あらかじめ前置きをすると、マスコットの公式ツイッターに不満をぶつけることに対して、サポーターとしてそこはやっちゃいけないと咎める内容の引用リツイートの方が多かった。私自身もそういった公式アカウントに対して心無い発言をぶつけるような人を決して擁護はしない。ただ、一方で今季すでにホームで敗戦しているチームにアウェーで勝てそうだったゲームを後半ロスタイムで同点に追い付かれて茫然自失としたサポーターも多い中、試合が終わってから30分経たないうちに「しゃーなしだよ」とツイートされたら、心がささくれ立っているサポーターから心無い引用RTがつくのも無理もないなと思うし、いいねもリツイートもちょっとする気にはなれなかった。ゆるい内容のツイートで投稿することが持ち味なのは百も承知。ただサポーターの気持ちに寄り添うという意味でもうちょっとうまくやりようがあったのではないかとも思う。

 注目すべきは「しゃーなし(仕方ない)」の部分。もっと言えば「アウェイでまけなかったし、しゃーなしだよ!」の一文である。この「しゃーなし」の解釈において、様々な捉え方がある中でそれを読み手に委ねてしまったことが今回のミスだと思うのである。また、今回のポイントとしては、4月にホームで敗れている相手との再戦だったことも関係している。たとえばこれがホームでの対戦を残しているのであれば、アウェイで負けなかったしホームでは絶対勝とう。というニュアンスを加えることができる。今回はそれができなかった。
 そうなってくると「(今の広島のチーム状況で)アウェイで負けなかったし、しゃーなしだよ!」なのか、「(福岡のサポーターの熱い応援や福岡の選手たちがとても強い中で)アウェイで負けなかったし、しゃーなしだよ!」なのか、解釈に幅ができてしまい、いろんな捉え方をされてしまう可能性が出てくる。これは何もマスコットの公式アカウントでなくても、我々が日常的にツイッターを使う中でも言葉足らずで真意が相手に伝えられないのと何ら変わらないことが今回起こってしまったと思っていい。

 では、どうするべきだったか。もし私がいわゆる「中の人」だったらこうツイートするだろう。

「せんしゅのみなさん!
アビスパのせんしゅのねばりづよさすごかったね、しゃーなしだよ!
ふくおかサポーターのみなさんのようなあついおうえんで
こんどはホームでぼくたちがあとおしするばん!つぎかとうね!」

多少長くなったけれども、先ほどの解釈でいうところの後者の解釈に限定させることができた。それがそもそも気に食わない人もいるかもしれないが、スポーツマンシップ、ともにJリーグを盛り上げる仲間という観点でいえばチームのマスコットとして相手チームやサポーターを素直に讃えることは何も悪いことではないはずだし、むしろこっちのほうがいいと感じる人が多いはず。そしてサポーターに向けては来週のホームでの試合に向けていい雰囲気をつくってくれるようにお願いする意味合いもある。

 ツイートは書き手の考え方に左右されやすい。そこにJリーグクラブのマスコットの公式ツイートという要素が入ると「キャラ付け」「中の人の解釈の仕方」「Jリーグの理念に反していないか」ということを常に考慮しつつアカウントを運用する必要性が出てくる。時としてサポーターの感情をうまく捉えられず摩擦を生むこともある。画面の向こう側にいる人たちにどうしたら真意を100%に近い数値で伝えられるのか。複数ある解釈をある程度送り手側で絞り込ませることで中の人が本当に伝えたいことを伝えることができれば、もっとサポーターとマスコットのSNS上での関係は良くなる。今回の一件からSNSの扱い方をまた考えさせられたなと思った。

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