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スポーツが持つ「まちづくり」の可能性と大きな課題

I:一般的に日本人が「スポーツ」だと思っているもの

日本人の持つスポーツのイメージは、部活・体育・オリンピック・勝負の世界・努力と根性・筋骨隆々・しんどい・・・・そういうイメージが多いのではないでしょうか?

これはスポーツが持つ本来の意味や、欧米が考えるスポーツのイメージと少し違います。

スポーツの語源は、英語「sports」からの外来語で、sportは「気晴らし」や「楽しみ」「遊ぶ」などを意味する「disport」が変化した言葉です。
※語源由来辞典より


つまりスポーツとは本来、楽しみを求めたり勝敗を競ったりする目的で行われる「身体運動の総称」のことなんです。

しかし日本人はスポーツと言うと「競技スポーツ(部活)」や「運動能力の向上(体育)」のイメージが強く、どうしても好き嫌いが分かれてしまう傾向があります。


II:スポーツが持つポテンシャル

競技スポーツ(勝利のために極限まで心技体を極める)だけがスポーツではありません。

スポーツ活動による恩恵は間接的なものまで含めれば、生涯健康・教育(社会性や学力)・地域コミニティづくりなど、いわゆる自治体が「未来のまちづくり」として掲げるような内容ばかりです。

※『スポーツが持つポテンシャル』の記事で詳しく書いています


ただしここで理解していただきたいのは、決してスポーツだけが万能であるという意味ではなく、様々な社会問題を解決するにあたりスポーツというコンテンツは非常に効果的な手段の一つであるということです。


しかし、この優秀なコンテンツには大きな弱点もあるんです。

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Ⅲ:地域にスポーツのポテンシャルを引き出すプロがいない

スポーツの魅力やポテンシャルを理解している人は多く、日本中の学校や自治体で「スポーツ」をウリにしようとする動きは昔から見ることができます。

しかしそれを効果的に継続できている組織は意外と少ないという現実も。


それは何故か。


一つはスポーツの魅力を競技スポーツだけで引き出そうとしていること。

競技スポーツは選手の人間的成長や、多くの感動を産むという副産物から、学校教育(学生募集)や町おこしに非常に有効だと思われていました。

しかし近年は「勝たなければ評価されない」という現実が壁となり、その手法にも陰りが見えています。

勝つことが条件となれば、学校教育においては青少年の心身にどこまで負荷をかけるのか、試合に出れない選手が学生募集の犠牲になっているのではないか、という問題が「逆に教育的ではない」と指摘されるようになりました。

町おこしの観点では、地域にプロスポーツチームがあっても勝利を義務付けられれば、政令指定都市に本拠地を置くチームが結果的に有利になり、勝てない地方のチームには人もお金も集まらないという現実にぶつかることになります。


もう一つはスポーツのポテンシャルを理解し、それを職業にする人が少ないこと。

もともと日本のスポーツは競技スポーツがメインで、競技スポーツにおいては少年団・部活・実業団・プロスポーツが普及や振興の役割を担っていました。

しかし少年団や部活を中心に、スポーツ活動にはお金がかからないという文化が産まれ、いざスポーツを活かしてまちづくりをしようと思っても、それを委託できる人材が地域にはほとんどいないということが大きな課題になっています。

これは部活や学校の先生を中心とした公務員、自営業を営みながらボランティアで指導する少年団の指導者たちに、スポーツの普及と振興を依存しすぎた歴史が原因です。

(決して指導者の皆さんが悪いという意味ではありません)


結果として今の日本でスポーツ指導やスポーツを活かした仕事をしようとしても、お金を払ってまでスポーツ活動をしようという習慣が無いため、ビジネスモデルの構築に非常に苦労するという背景が「まちづくりにスポーツを活かす」という自治体の取り組みを停滞させる原因となっているんです。

(自治体が管理するスポーツ施設の多くが営利行為を禁止していることが更に拍車をかけています)

※『スポーツ施設に収益性を』の記事で詳しく書いています


Ⅳ:日本の「スポーツの未来」をデザインする

20年ほど前から、サッカークラブやサッカースクールを中心に「お習い事」として子供に指導するスポーツチームが増えてきました。

今や子供たちのスポーツ環境は、お金を払うのが当然という文化ができつつあります。

これに対し「貧困家庭の子供がスポーツ活動ができなくなるのでは」という声も聴きますが、スポーツ指導を職業とする民間企業や任意団体が増えれば、部活や学校体育の現場にスポーツ指導を職業とする人材を派遣することができ、それが結果として全ての子供たちのスポーツ環境を向上させることに繋がると思っています。

また、フィットネスクラブやテニススクール、ゴルフレッスンやスイミングクラブなど確実に有料のスポーツサービスが増加しており、リハビリデイサービスなどの健康寿命延伸を目的とした施設も当たり前になってきました。


次は、彼らの所得を上げることです。


よりスポーツ業界を活性化させ、まちづくりに活かせる人材を増やすには「スポーツ業界で稼げる」という前例を増やし、業界に有能な人材が流れてくるようにすることです。

そのためには「子供のスポーツ」「高齢者のリハビリ」のように、狭い範囲でマネタイズしようとするのではなく、教育・健康・育児・競技トレーニング・コミニティスペースという様々な要素を組合わせた活動をマネジメントする必要があります。


これこそが正に「まちづくりにスポーツを活かす」手法です。


今後、自治体がそういったビジョンを持つ民間企業や任意団体と連携し、公共施設や地域イベントを活かす取り組みができれば、スポーツという有能コンテンツをまちづくりに繋げることができる。

それを実現し証明し続けることが私の志事であり、地域貢献になると考え日々奮闘しています。

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