スポーツ少年団の未来
日本中で、あらゆる「スポーツ少年団」が数を減らしています。
表向きには「少子化・指導者不足という二大要素が原因」と言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
今回は各地でスポーツ少年団が数を減らしている本当の理由を、個人的な推測も含めて書いていきます。
因みに「スポーツ少年団の定義」は下記を参照にしてください。
出典:「フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)」
Ⅰ:少子化が原因ではない
少子化の影響が全くないとは言いません。
しかし笹川スポーツ財団の調査結果を見れば一目瞭然。2002年~2014年で減った子供の数8.8%に対し、スポーツ少年団の減少は20.6%。
子供の減少をはるかに上回るスピードでスポーツ少年団は数を減らしています。
出典:笹川スポーツ財団HPより「スポーツ少年団現況調査報告書日本スポーツ少年団登録データの分析(2002年~2014年)」
ではどうしてスポーツ少年団は少子化以上のスピードで数を減らしているのでしょう?
Ⅱ:かつてスポーツは「身近な遊び」だった
親御さんの職業がまだ一次産業や二次産業が中心で、商店街や自営業も多かった頃。
お習い事は富裕層家庭の子供が通うもので、稼業やお店のお手伝いを逃れたい子供たちが公園や広場に集まった時、野球やサッカーはルールの説明も必要なくチームに分かれて勝ち負けを競えるスリリングな遊びの一つでした。
メディアの影響も大きいですよね。
極端な言い方かもしれませんが、当時女の子は歌番組のアイドルに憧れ、男の子は野球選手に憧れる。
今のようにYoutubeやwebコンテンツで何時でも何処でも動画を見れるわけでもなく、アニメやバラエティ番組中心のテレビ番組も無い。
子供達を大きく分類すると、野球や外遊びが好きな子供・本を読んだり絵を描いたりを好む子供・大人やルールに反発してやんちゃなことをする子供、の3パターンくらいに分かれる時代です。
当時はそういった時代背景も重なり、野球やサッカーは子供たちにとって、誰もがルールを知ってる「身近な遊び」の一つでした。
Ⅲ:スポーツ少年団が増えた経緯と衰退していく理由
昭和の頃は「お茶の間の中心」だったプロ野球。子供たちにとっては身近な遊びで大人にとっては熱狂的な娯楽という位置づけでした。(家庭による差異はありますが)
そうなると当然、子供たちの遊びにも大人の介入が始まります。
空地の野球で育った地域のおじさんがボランティア指導者になる。「自分を育ててくれた競技スポーツへの恩返し」という熱い想いで学校の先生になって放課後や休日に指導する。
そんな人が増えてくると、子供達の遊びは次第に競技スポーツへと変化し、本格的な試合や大会が増えていきます。
そうやって広がっていったのが「スポーツ少年団」です。
まだ地域の商店街や自営業の景気が良かったことと、学校の先生たちが中心となって広がったこと。そして学校や公園など公共の施設が活動場所だったこともあり「お金がかからない」ことがより一層広がりを促進したのでしょう。
では何故、今スポーツ少年団は数を減らしているのか。
地域や種目によっても差はあると思いますが、1980年代中期~後期あたりからスポーツ少年団はその数を減らしているようです。
この頃になると、テレビゲームやカードゲームの流通により子供の遊びが多様化し、都会を中心に小さな子供だけで外に行かせることに不安を感じるようになり、自営業比率が減ることで平日の夕方にスポーツ指導ができる人が急激に減りました。
小学校の先生の仕事も多忙になり、スポーツ少年団を無償で支えてきた仕組みが崩れ始めました。
ただ逆にこの頃には、スポーツ経験者やスポーツを支援したい団体による、より本格的な競技スポーツの指導・育成を目的とした「クラブチーム」や、競技よりもスポーツ活動による社会教育を推奨する「スポーツスクール」が増え始め、スポーツ人口自体の減少は抑えられる可能性が残されていました。
Ⅳ:間違った対策
1980年代から2000年までの時期に適切な対策が講じられれば、スポーツ少年団の数は今ほどに数を減らしていなかったかもしれません。
しかし自治体とスポーツ少年団の選んだ対策は・・・
今までのスポーツ少年団の活動を推奨し、クラブチームやスポーツスクールなどの新たな団体や民間団体の参入を拒むものでした。
当時の関係者は「少子化と、少年団に属さない民間団体の参入がスポーツ少年団減少の原因」という見解から、「営利団体には場所を使わせない」「地域の理事の承認を得なければ大会に出場させない」「3つ以上の小学校で混成しているチームは大会に出場できない」「この地域には新たなチームは作らせない」などのルールを地域レベルで産み出していきました。
そうやって、地域の子供が自分たちの少年団しか選べないルール、環境を作ってしまえば子供の数は減らない。そう思っていたのでしょう。
しかしそういった「指導者自身が努力せず自分のチームを守る」という手法は、結果としてスポーツ少年団だけではなく、子供の競技スポーツ人口そのものを減らすことに繋がってしまいます。
近年はサッカーなど中心に、クラブチームも少年団と同様の大会に出れるなど変化が進んでいますが、競技によっては未だに旧態依然としたルールが残っており、そういった種目ほど子どもの数が減る傾向が間違いなくあります。
Ⅴ:生き残るスポーツ少年団
ここまでにあげたスポーツ少年団が数を減らす理由は「子供たちの遊びの変化」と「指導者の不足」、「新たなチームが産まれることを抑制してしまうルール」です。
しかしチームの子どもの数が少子化以上に減る最大の理由は、スポーツ少年団の「指導者」にあると思っています。
(もちろん全ての少年団指導者ではないですし、少年団以外にも問題のある指導者はいますが)
衰退するどころか団員の数を増やしているスポーツ少年団があることからも、「少年団であること自体が原因ではない」ことは明らかです。
では、どんな少年団が団員数を減らしているのか。
それは「指導力の無い指導者が暴言暴力を伴いながら威張り散らしている」チームです。
企業はコンプライアンスを求められ、学校教育においても暴言暴力がタブーとされる現代。未だにスポーツ指導の現場では前時代の風景が残っています。
画一的な旧態依然とした指導しかしないのに、負けたら選手のせいにする指導者
指導力の無さを練習量で誤魔化し、子供の心身に傷害が出ると「今どきの子供は弱すぎる」と吐き捨てる指導者
発育の遅い子供を邪魔者扱いし、主力選手しか指導しない指導者
雑用は保護者に押し付け、保護者に対しても威張り散らす指導者
こういった人間が指導するスポーツ少年団に、人は集まりません。
競技スポーツくらいしか子供に刺激や楽しみが無かった時代とは違うのです。
子供が成長できる・楽しめる環境が選べるほどある時代に、理不尽極まりないスポーツ少年団に入る必要があるでしょうか?
だからこそ、月謝が高くても安心して預けられるスポーツクラブやスポーツスクールに人が集まるのです。それを「あいつらは金を取ってる営利団体で、俺は善意でやっている」と声を荒げ存在を否定しても、選んでいるのは子供と保護者なんです。
そんな中でも団員数を増やしているスポーツ少年団は、大きく分けると2つの傾向があります。
1つはスポーツクラブやスポーツスクールの良いところを取り入れ、今時の子供たちの特性に合わせた指導をしたり、少しお金を徴収してスタッフを雇って保護者の負担を軽減したりと「変化しているスポーツ少年団」。
もう1つは単純に「試合に勝てる」もしくは「全国レベルの選手を輩出する」スポーツ少年団です。(個人的にはここにも色々思うところはありますが)
「時代に合わせて変化できる」
「強みを持っている」
このどちらかが、今でも団員数を抱えているスポーツ少年団の特徴だと思います。
Ⅵ:スポーツ少年団の未来
今後もスポーツ少年団は、今のスポーツ少年団の定義を変えない限り数を減らしていくでしょう。
実際にはチームで話し合い自ら変化したり、スポーツ少年団の定義の緩和を始めている地域も多いようです。
少しずつ、少年団やクラブチーム、スクールといったような分類自体が無くなっていくのかも知れませんね。
どちらにしても、私が伝えたいことはただ一つ。
「チームを勝たせることよりも地域全体のスポーツ普及を優先してほしい」
ということです。
勝利を優先してしまうと選抜が始まり、練習内容も初心者にはハードルが高くなります。
自分が選ばれない、難しすぎて楽しくないスポーツにハマるほど、現代の子供たちは刺激に飢えていません。楽しいことはいくらでもあります。
もちろん心身の成長を想えばスポーツ活動はたいへん有意義で、ゲームやYoutubeより教育価値は高いと私も思っています。
だからこそ。
スポーツの敷居を下げて、楽しませてあげましょう。
既にスポーツに関心がある子供を奪い合うのではなく、スポーツに関心を持ち取り組んでくれる子供の絶対数を増やしましょう。
「この地域で野球がしたければ、週に6回厳しい監督がやってるこの少年団しかない」という環境では難しいんです。今の時代、「じゃあ野球はいいや」となってしまいます。
地域のスポーツクラブやスポーツスクールと連携し、子供たちが運動やスポーツ活動に触れる機会を増やしてあげる。そうすれば、結果として地域の全てのチームに恩恵があるのです。
※それでも増えない場合は、確実に自チーム(もしくは指導者本人)に原因があります
私が生涯をかけて取り組みたいのは、『地域のスポーツを愛する全ての団体・関係者が、子供たちのスポーツ活動を振興・推進するために協力し合う、新たなスポーツ普及の環境づくり』なんです。
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