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23/04/16 台灣小吃教科書

せっかく週末なのでどこか出かけようと考え、候補に浮かんだのが美術館と動物園。ギャルゲーや乙女ゲーのデートの選択肢みたいだ。活発系の子をオトすなら動物園で文化系の子なら美術館が正解なんだろうな。

文化系真っ盛りなので美術館に行くことにしました。いや、本当の理由は暑いからですが…(最高気温32度でした)。
台北市立美術館の最寄り駅であるMRT圓山駅で電車を降りると、物凄い人の数でごった返していました。こんなに美術館に!?と思ったのですが、花の市場をやってるみたいだったのでそっちが人気だったのかも。

とりあえずまずは腹ごしらえに、駅から結構離れた飯屋に行きます。
昨日の雨で日光を遮るものがなくなった空からは正午の日差しが容赦なく降り注ぎ、アスファルトがにおいたつような猛暑。すっかり夏を感じます。

訪れたのは圓山駅から1kmほど離れた、老牌張猪脚という格ゲーの技みたいなお店。豚肉料理の有名店で、お店の前には行列ができていました。

千と千尋の最初みたいな調理された豚の脚がいっぱい

もも肉の煮込み、メンマ、煮汁かけごはんをオーダーしました。

とにかく豚ももの煮たのがめーっちゃうまい!
味はずばり「豚の角煮Lv.100」って感じ。チャーシューの最高地点だけずっと食べ続けている気持ち。脂身の部分が単体で来ちゃってもなんか罪悪感を覚えるくらいうまい。不健康なうまさ。この豚肉と白飯だけ食べてたいけどこれだけ食べてると早死するから他のものも仕方なく食べようと人生の指針について考えるくらいうまかったです。

老牌張猪脚での昼食を終えると、美術館に行くためにまた圓山駅への1kmを歩いて戻るのがなんとなく億劫になり、そのまま街歩きへ移行することにしました。どうやら僕をオトすのは動物園デートでも美術館デートでもなく街歩きデートだったようです。

そのまま歩いて迪化街へ。台北に来て最初の週末になんとなく流れ込んだ通りです。
本屋を見つけたのでフラフラッと吸い寄せられるように入ります。そして、ここが素晴らしい場所でした。

良い本屋は入っただけでなんとなくわかるものですが、その感覚は異国の地でも正しく働くようです。入って感じた「良さげな感じ」は果たして真実でした。
新しい木の匂いがする階段を登って2階へあがると、外国の本が置かれていました。外国の本ということは日本の本もあるわけで。

『虚無への供物』だ!
《小市民》シリーズだ!

本棚を眺めたりパラパラと立ち読みしたりしているだけでも楽しい。
そうこうしていると、三國志やら李白詩集やらいわゆる漢籍が並ぶ書棚を見つけました。
ここでふと気になります。「台湾の人は、漢詩をそのまま読めるのだろうか?」と。試しに李白詩集を開いてみると、原文に発音記号が読み仮名のように振られています。
漢字の読み方が李白の使ったものと違っていて当時の韻が成り立たなくことがあるので、それに対するフォローなのでしょう。この「漢字の読みが違ったら昔の漢詩が韻踏まなくなったりしない?」というのも実は前から気になっていたことなので、ちょっとわかって嬉しい。また「韻文として読む」というのは日本の授業で漢詩を習ったときにはなかった読み方なので新鮮な気持ちがします。

そして原文に続いて、「注釈」と「対訳」が置かれています。注釈は原文中に登場する単語(多くは漢字1字)の解説。対訳はいわゆる現代語訳のように見えます。
なので、ちょうど我々にとっての枕草子なんかの「古文」と同じようなものなんでしょうね。面白い発見でした。

3階から隣の建物に空中を通る階段がつながっていて、隣はブックカフェになっていました。最高の本屋にブックカフェがあるというのはこの上なく最高なことです。せっかくなので涼しい部屋でアイスコーヒーをいただくことにしました。

お茶請けに『台灣小吃教科書』という本を読みました。

台湾料理(甘味も含む)122種類のレシピが詳細な写真つきで載っています。これまでの滞在で食べたことがある料理もあれば見たことしかない料理もあり、見たことすらない料理もあり。
材料が載っているのが良いですね。これまで食べたことがある料理でも何でできているのかわからないものがあったりしたので、そうしたところがわかるのが嬉しい。また先週の蘿蔔をはじめとして「こっちに来てから覚えた食材の名前」が結構出てくるので、それらの知識が活きるのも楽しかったです。

いちおう出発前やこっちに来てからも台湾華語の勉強はしていたのですが、正直文法知識ってあんま役に立ってる実感がなかったんですよね。ところが今回文字で読むとちゃんと勉強した文法知識が役に立ったので、それも嬉しかったです。

あとは単純に料理の知識が得られるのが良いですねえ。これから食べてみたいものも見つかったし。よく「情報を食べる」なんて言いますが、事前知識を持っていると「情報も食べられるようになる」ので食事の中の可食部が増えると思います。

「この料理よく見かけるけど載ってないなあ」みたいなものはあまりなかったので、かなり上手に網羅されているのではないかと思います。ただ、いわゆる小菜…副菜のたぐいは食堂で必ず見かけますがほとんど載っていません。主食・主菜・点心・デザートがメインです。

全体と俯瞰してみて印象的なのは、材料に豆腐を使うことが多いことと、それでいて「生の豆腐」を使うことが非常に少ないことでしょうか。
干したりなど加工した豆腐を使うことが多く、そのままの豆腐は一部のスープの具に使われていた程度だったと思います。
本来豆腐は日持ちしないもので、それゆえ日本では豆腐屋さんからその日使う分だけ豆腐を買っては使っていたと聞きますが、台湾ではその日持ちしなさに対して流通でなく食文化の側が寄せる形で対応したということなのかもしれません。

中にはカレー麺が載っていて材料に普通にカレー粉が入っていたり、完全に台湾ネイティブ一色ではないのも面白いところ。ちなみに焼き餃子(鍋貼)も普通に載っています。よく「中華圏だと餃子は水餃子がメインで焼き餃子は翌日余ったものを食べるときしかやらない」と聞きますが、少なくとも台北では鍋貼と呼ばれる焼き餃子は一般的で、それが看板メニューのお店も少なくありません。

夕食はローカルのフライドチキンチェーンと思しきケンタッキー的なお店でケンタッキー的なセットを買いました。食べて驚いたのが…フライドポテトがジャガイモじゃなくてサツマイモだ…!!
まだまだ、知らないことがたくさんあります。