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焚き火台で『役に立つ』と『意味がある』製品について考えてみる

この焚き火台、凄くいいですね!これなら、キャンプ場で他のキャンパーと被らずらい。絶対売れると思います...!

こんにちは!安永翔太です。これ、少し前に見たビジネス系テレビ番組でのキャンプ用品の展示会でのシーン。展示会に来場されていたバイヤーさんの発言です。

話題になっているこの焚き火台、機能性というより見た目の華やかさを重視したところが注目ポイントとして挙げられていました。

アウトドア好きの方ならご理解いただけるかと思いますが、冒頭のバイヤーさんの発言、少し違和感がありませんか?

アウトドア製品って、人と被らないことや見た目で選んで良いのだろうか…?

「役に立つ」より「意味がある」に価値がある時代

とはいえ、なぜそれに違和感があるかときちんと説明ができない自分にモヤモヤしていました。

そんな時、最近読み直していた書籍『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(ダイヤモンド社)にヒントになりそうことが書かれていました。

著者の山口周さんは、これからの社会では「役に立つ」ことより「意味がある」ことのほうが価値があると指摘されています。
これはつまり、自分らしい人生を生きる上で「意味」を与えてくれる商品やサービスの方が、価値が高いということだと思います。 

自動車業界での「役に立つ」と「意味がある」

具体例として挙げられているのが、自動車業界です。世界にはさまざまな自動車メーカーがありますが、メーカーや車種によって、「役に立つ」(機能価値)と「意味がある」(感性価値)のどちらに重点を置かれているかがはっきり見て取れるとのことです。

  1. トヨタや日産が販売している車種のほとんどが、快適で安全な移動手段という「役に立つ」要素を提供。

  2. イタリアのフェラーリやランボルギーニなどの超高級車は、「唯一無二の意味」を与えてくれる存在であり、「意味がある」要素を提供

  3. ドイツのBMWやメルセデス・ベンツは、快適で安全な移動手段(「役に立つ」)+BWMやベンツに乗る意味(「意味がある」)を合わせて提供。

と説明されています。

これをもとに、冒頭でバイヤーさんが焚き火台を売れると言った理由を振り返ってみます。これはおそらく、キャンプ場において他のキャンパーと違った焚き火台を使うことで、自分らしさを表現したいという需要があるからなのかもしれません。

つまり、1の「役に立つ」要素ではないことは確実で、2(もしくは3)の「意味がある」ことに軸足を置いた商品と言えるのではないかと考えました。

焚き火台で「役に立つ」と「意味がある」を考える

では、先ほどの自動車業界の例を焚き火台に当てはめてみたらどうなるのか。同じく山口周さんの図を参考に考えてみたいと思います。

おそらく、これまでの焚き火台はほとんどが、1の「役に立つけど意味がない」に含まれるのではないかと思います。

これはそもそも、アウトドア用品という特性上、軽量性、コンパクト性、組立ての容易さ、堅牢性などの機能的価値に重点を置いた製品となるのは当然のことです。

こちらの記事でもベストバイな焚き火台を比較・検討してランキングしてありますが、比較検証は薪のくべやすさ、料理のしやすさ、準備・手入れのしやすさの3点からされていて、全て「役に立つ」、機能的な価値での比較となっています。

では、焚き火台における4の「役に立たないけど意味がある」製品とはどんなものでしょうか?調べてみると、そこに当てはまりそうな焚き火台を見つけました。

焚き火が楽しかった頃に戻る焚き火台

「TAKIBISM」の”リアル ファイヤースタンド ジカビ”

現在、自然保護の観点から、直火での焚き火はNGとされているキャンプ場が多いです。焚き火台を使って地面への影響を最低限に抑えるというのは既にキャンプ時のマナーにもなっています。

それでも、直火には直火の良さがある。その直火本来の楽しさや、直火独特の足元から暖まる焚き火を楽しむことできる焚き火台として、極限まで地面に近づけた焚き火台。それが、「TAKIBISM」の”リアル ファイヤースタンド ジカビ”です。

この商品は’JIKABI(直火)’と呼んでいます。直火台なんてものは存在しないけれど、その矛盾点をあえて突いています。アウトドアの原点回帰というか、道具がどんどん複雑化していく流れのなかで、楽しかった頃の焚き火に立ち戻る。説明書がないと使えない道具なんて嫌なんです。

添付記事の本文中より引用

この”ジカビ”、お値段は3万3千円(税込)と焚き火台では最も高い部類であるにもかかわらず、収納の便利さやコンパクト性などの機能性を追求するのは”やめた”のだそうです。

このエピソードはまさに、「役に立たないけど、意味がある」に該当する例ではないかと思います。

キャンプ用品も「意味」の市場になってきている

「意味がある」製品の方が価値があり、高く売れる理由を山口周さんは以下のように説明しています。

「役に立つ」市場において収斂が発生すれば、ライフスタイルで他者と差別化することが必須の要請となっている先進国の人々は「意味」で差別化するという便益に高い価値を払うようになるはずです。

『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(ダイヤモンド社)

焚き火台を始め、キャンプギアはこれまで「役に立つ」機能価値を中心に製品が生み出されてきました。そして現在、キャンプブームのおかげでたくさんのキャンプギアが開発されています。

そうしてキャンプギアもモノの飽和状態になり、役に立つ製品が溢れると、山口周さんが言うように「意味」で差別化しなければ、競争に勝てないようになってくる。

既に「役に立つ」機能に加えて「意味がある」ストーリーで差別化に成功しているメーカーも出てきています。 

あなたなら焚き火台やキャンプギアにどんな意味を持たせますか?

これからのキャンプ業界にどんな意味を持った製品が生まれてくるのか、とても楽しみです!

今週は以上です。また来週!

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