立春の朝4時。窓から大きく身を乗り出し
白い息を吐きながら オリオン座に向かって呟いた。
「 おはよう。 」
最も寒いこの時季は、最も空が美しいシーズンでもある。
大気は澄み渡り、星の輪郭までもがくっきりと見えるほど。
冬空の美しさは 寒さがもたらす最高の贈り物である事に気付かされる。
その冴えざえと輝く星を見つめている間、
耳の奥で流れていたのは
映画 【 風と共に去りぬ 】の為に作曲された < タラのテーマ > だった。
なのでその日は久々にDVDで堪能。
これぞ映画の中の映画だと改めて思った。
そして、また勇気を貰えた気がした。
今も昔も レット・バトラー役は
クラーク・ゲーブル以外、誰も演じきれないだろう。( ⇚私の初恋の人 )
そしてヴィヴィアン・リーは情熱的なスカーレット・オハラそのもの。
ワガママ放題のお嬢様育ち。そのくせ律儀で意志が強く、奔放でありながら気品に満ちている。
実はこのスカーレット役がなかなか決まらず、2年間も探し続けてオーディションとカメラテストを繰り返すばかり。そんな中、主演女優の決まらないまま映画の撮影が開始されたという。
そのスカーレットとは まるっきり正反対の人物のように描かれているメラニー。でも彼女だって 尋常でない強さを 胸の奥底に秘めている。
彼女の強さは イコール 優しさ。
あの役もオリヴィア・デ・ハビランドがあまりに素晴らしくて
私には他に誰も考えられない。
それから圧倒的な存在感で助演女優賞に見事 輝いたハティ・マクダニエル。
厳しく温かい召使役の彼女が スカーレットのウエストをギューっと締めるあの有名なシーンに憧れ、少女だった私は母に コルセットが欲しいと言って 笑われたものだった。
もう軽く100回は観ている作品だけれど、
この最高のキャスティングに 改めて ため息がもれた。
< タラのテーマ > を初めてフルで聴いたのは 中学校の音楽室。
何て美しいメロディーなの...
身動きひとつせず、13歳の私は恍惚として聴き入っていた。
そのレコードを何度も繰り返し聴きに音楽室へ通った真冬の放課後。
あの感動は 今もしっかりと記憶に刻み込まれている。
そして
この映画とテーマソングは私にとって
情緒不安定気味の時に必ず観たくなる、
聴きたくなる、
特効薬のような存在であり続けている。
あれから30年以上経ったある冬の朝。
頭上から文字が降ってくる夢を見た。
まるで ぼたん雪のように舞い降りてくるそれらを拾い集めると
こんな文章になった。
とにかく最高に美しいものにたくさん触れる
素晴らしいものだけに触れる
一流の感動で自分を満たす
それが薬になる
それらを自分の中で混ぜ合わせ
丁寧に調合すれば
また新しい薬が生まれる
それは誰にでも 効力を発揮する
不思議な薬となる
つまり心を良い状態にする薬は
自ら作り出すことができると。
素晴らしい映画や音楽、
スポーツ観戦での感動。
大自然の驚異的な美しさ。
小説や絵画、実生活での人間愛の物語 etc ...
材料は身の回りにたくさんある。
それらを、きっと自分でも気づかないうちに
調合しながら人は生きているのだろう。
これから先は 意識して作りなさい、
そうすればもっと良い薬ができるはずだよと
誰かがメッセージを送ってくれたに違いない。
その日は目が覚めた時、全身に鳥肌が立っていた。
心が大きく揺さぶられ、
感極まった時に味わう独特の快感がある。
あれは全身の細胞が浄化されてる感覚なのかもしれない。
感動という刺激によって。
年齢を重ねるにつれて涙もろくなるのは、
それなりに経験を積んだ分、想像力・理解力が深まるがゆえだと思う。
だからだろう、
この立春に見た【 風と共に去りぬ 】は
今までで一番ぐっとくるものがあった。
理性で片付けようとしても堪えきれない熱いもの。
時折、それは涙に姿を変えたりして
他者の目にも触れ、伝染を引き起こす。
感動の伝染。感激の涙。そういう類いになら喜んで感染しよう。
それがまた、新たな薬を生み出す材料にもなるのだろうから!
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