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ごはんについて書くための習作46

「東海道新幹線の頭上にある荷物を置く棚、こんなに低かっただろうか。」と、15時44分小田原発、1号車11Aの席に座ろうとして思う。そういえば今月の初め、ウェブサイトのデザインを担当している美術大学で久しぶりの撮影立ち会いがあり、案件のプロデューサーにも「大きくなった?」と聞かれた。大きくなったのかもしれない。昨日届いたロンTも僅かに袖が短くて、朝から何度も袖を引っ張って伸ばしている。
前職を辞める直前、私がコンペの提案までを担当した案件が無事納品を終え、今日はその打ち上げに参加するためにこのテキストを書きながら移動している。新横浜を過ぎたあたりで線路が左にカーブし、窓から見える建物が右斜めになる。

朝、来週の月曜日に釣りに行く知人からLINE。近所の海の定置網にヒラマサが大量に掛かったらしい。知人は料理店を営んでいて19kgのヒラマサの背、半身を仕入れたらしい。19kgから内臓や頭を除いた4分の1.4kgくらいだろうか。「釣るしかないですね」と返信。
午前中の打ち合わせを終え、11時過ぎ。Amazonの置き配で月曜日に使うルアー4つと、仕事の技術書が届く。ルアーの開封と収納に時間を使う。技術書はイントロダクションと目次を読んで、やる気だけTwitterに宣言。12時。妻が何も言わずに上着を着出したので、私も何も言わずにパソコンを閉じて、オーディオインターフェイスの電源を落とす。

マスクでよく聞こえない。聞き返すと「天気が良いけど、何を食べようか」と言うので、天気が良いから何を食べてもよいと答える。ピザがいいと言うので、ピザ屋に向かう。
途中の呉服店の店先、自宅に生えてしまったのだろうか、普段はアンパンマンの枕が置いてあるところに沢山の筍が並んでいる。米糠も添えられている。

天気が良いのでピザが混んでいた。席は空いていて、入店。少し前から店舗向かいの建物の一階も借りて拡張されていて、初めてそこに通された。本店舗の窯でピザを焼くオーナーに挨拶されたくて視線を送るが気付かれない。最近になって何故か認知され、僅かに常連になったのだがこちらから声を掛けることはない。
テーブルに案内してくれたスタッフはそんなことは知らないし、私もこの人を知らないので、丁寧にメニューの説明をするし受けた。ジェノベーゼと肉団子(もっといい名前がある)の乗ったピザを注文。天気が良いのでビールも。

と、ここまで書いて東海道新幹線が東京に付き、東京駅から私は徒歩で神田にあるサングラス屋に行き釣り用のどつきサングラスを注文した。これ以降の文章は度付きサングラスを注文して、前職で担当していた案件の打ち上げに参加して(参加する前に常連の小料理屋で小一時間お酒を楽しんで)、打ち上げ終わりにバーでウイスキーを何杯か経た私が書いている。

ランチでビールを飲んだ私が昨日ツイートした「ビリヤニがメニューから消えていた」というテキストの「ビリヤニ」だけに反応したビリヤニをウンタラカンタラというアカウントに、私が前菜のハムを食べているタイミングでフォローされる。世界はキーワードに左右されている。ジェノベーゼはパスタかと思ったら、パスタではなくマカロニのオシャレな名前のそれだった。隣のテーブルの夫婦らしき2人も同じものを注文していた。ジェノベーゼは正義。ビールを飲んでいたのでぼんやりと私がピザを半分食べたかどうか分からず、なんとなく皿に残していたら妻が食べたので私が半分食べたことを理解した。
つまり、世界は私以外のもので形成されていることを理解した。

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