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ごはんについて書くための習作48

品川駅に向かっている。小田原駅から乗れる東海道新幹線は「こだま」と「ひかり」で、「ひかり」に乗ると車内販売がある。今乗っているのは「ひかり」だが、乗車時間も短いので一度も利用したことはない。
仕事をしているクライアント指定のチャットツールが1つのタイムラインしかないので、複数話題に向いていない。私が投稿した昨日作ったラフの話を飛び越して、今日この後の予定についてやりとりが始まってしまった。飛び越えたことを以って合意とする。
まもなく新横浜。とくに反応もない。飛び越えられてしまった私は昨日の昼ごはんについて書いてしまおうと思う。左手の窓から見える空は灰色。

昨日は武蔵野美術大学で打ち合わせ。東京の小平市にある私の卒業した大学。10年くらい前から仕事をしていたこともあり、卒業してから何度か訪れていたが、最近は用事もなく、行くのは2、3年ぶり。自宅からは車で1時間半程度。14:00からの打ち合わせに間に合うよう、12:00前に自宅を出発。

新横浜。網目の大きなニットをきた男性を含む4人組がそれぞれ片手に2本の空き缶(ビール、酎ハイ)をもって車内の通路を通り、降りていった。降りた彼らの手からは缶がなくなっていたので、車内デッキのゴミ箱に捨てたのだろう。

13:00過ぎ、中央自動車道を降りる直前にあるサービスエリアで簡単な食事を済ませてしまおうと、左のウインカーを点灯させて左に外れて減速。駐車場が思ったより狭い。車を徐行させつつ空きを探すが一般車のエリアには空きがないように見え、通り過ぎてしまう。先の大型車エリアに少し空きがあったが、と、この段落をここまで書いて「ありのまま書くということをスタイルとしているが、それは取捨選択をしないということではなくて、どこを書いてどこを書かなかったか、が私のその時の心情を表すのだ」と思ってテキストを書く指を止めた。
サービスエリアに立ち寄ったことについて私が書きたかったのは、サービスエリアの店内に入る自動ドアは(滅菌室か、動物が放し飼いにされているエリアのように)二重になっているということと、その自動ドアに挟まれた狭い空間に置かれた手指の消毒用アルコールで手を除菌した、ということだけだ。

昼ごはんは結局サービスエリアではとらなかった。打ち合わせの時間を調整して(大学に勤める友人との打ち合わせなのでいくらか調整は可能)、久しぶりに学食で食べる方がこの文章として残しておくべきことが何か起きるのでは、という気がしたのだ。その旨を友人にLINEする。彼も一緒に食事をとるという返事。

車を停めるべく、大学の正門にいる守衛に行き先の学科と用事を伝える。普段文字を手で書かないので、訪問先などを書くのが苦手。今日も形があやふやな漢字を雰囲気で書いた。

友人の担当する学科がある建物で待つ。MacBookを開いて作業しながら待っていると「久しぶり」と声を掛けられて目線を上げる。大学勤務になったからか、髪色や身につけているものが普段(のイメージ)より奇抜さが抜けていて暫く眺めてしまった。オンラインのミーティングでは顔を合わせていたが、実際に会うのは数年ぶりなのも一因。これは彼なのだろうか。久しぶりに並んで歩く。教員用の食堂もある、と言われるがせっかくなので学生と同じところで食べたいと答えて、別の建物の2階にある学食へ向かう。

学食の横、昔からあった売店がなくなってセブンイレブンが入っていた。大学に久しぶりに来た私は「セブンになったのか」と少し驚いたような声で彼に話をし、彼はその経緯を説明してくれた。ただ、説明を受けている時に、そういえばFacebookで最後の営業日に卒業生たちが集まったという投稿を見たことを思い出した。私はそこには参加していないし、在学中もこの売店を利用したことは殆どなかったので、その投稿を思い出したことは言わないまま、学食のドアに続く階段を上がった。

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