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ごはんについて書くための習作43

「冷凍の牛肉が届くから冷蔵庫に入れる」を忘れないよう復唱する。ママ友と子供たちと昼ごはんに出る妻に頼まれたコープの受け取り。その中に冷凍の牛肉が含まれているはずでそれを夕飯に使うから冷蔵庫で解凍しておいて欲しいと言うことだった。

そしてここまでの文章は、「冷凍の牛肉が届いたので冷蔵庫に入れた」ことを忘れる前にと、昼ごはんへ外出する前に書いたものである。(ここで昼ごはんのためにSpotifyの一時停止ボタンを押し、離席)

明日から台風の影響で天気が悪くなるらしい。土曜日に予定していた友人らとの沖堤防での釣りも中止になってしまった。体を動かさないといけない。今日は食事の内容よりも食事の場所が自宅から離れていることを重視することにして家を出る。

自宅とその周辺環境の関係図として、南から海、自宅、駅、川、山の順になっている。海側に飲食店があればそちらに向かいたいのだが、殆ど無い。海の家くらいのバラックでスクラップ&ビルドを年中行ってくれないだろうか。仕方なく北へ向かう。

北も駅を過ぎてしまうと途端に住宅地となる。とはいえ、駅近辺で済ましてしまうと明日からの運動不足を賄える距離は歩けないので、駅から離れていくようなかたちで歩き続ける。このスーパーマーケットを越えると飲食店発生限界域を越える。

明日からと違って今日は天気が良いので、東海道線の隣駅にあるイートインスペースのあるパン屋まで歩けるのでは無いか、という気がしてきてiPhoneを取り出しGoogle Mapsで距離を見る。現在位置(自宅から800mほど歩いた地点)から3km35分。行ける。帰りは電車で帰って来れば良い。

住宅地を歩き続ける。この辺りは、この辺りに限らずか、言われるように地方都市は車社会で天気が良かろうと悪かろうと、駅から1kmも離れれば殆ど歩いてる人がいないことに気付く。スーパーマーケットから少し歩いたところ、小さな川の橋に差し掛かったところでやっとお婆さんとすれ違う。

セブンイレブンから警察官が弁当を買って出てきた。私の前を歩くが少し歩くのが遅い。私の歩行速度の9割程度。しばらく紺色の制服と黒いベルトに携帯された警棒を見ながら歩くが、iPhoneに「コンビニ、警察官、歩くのが遅い」とメモしながら後ろをついていくと不審がられそうな気がして、歩く速度を上げ追い抜く。が、交番の前の交差点で追いつかれた。歩く速度が私より遅い警察官は何事もなく交番に入る。信号が変わる。

信号の先に見えていた酒匂川の大きな橋を渡り始める。花火大会の会場にもなる広い河川敷。まっすぐ掛かる橋の上は見通しがよいが、それでも歩いている人は5人もいない。橋の上から川を眺める。茶色い川底に魚が見ずらいが、護岸工事の時につかわたまま残されたのか白い袋に入った土嚢があって、その上を10cmくらいの魚が群れているのははっきりと見えた。橋の中腹、後ろからロードバイクに乗ったデニムシャツにジーンズ姿の青いリュックサックをしょった男性に抜かれる。橋を渡り切るところで、私が渡り始めたときに中腹にいたおばさんを抜いた。

以前、花火大会に来た時には今向かっている駅からこの河川敷まで歩いたので、川を越えると隣駅に近づいたという気分になった。

駅が近くなり歩く人も増えてきた。歩行器がわりのキャリーを押すお婆さんとすれ違う。時間差で線香の匂いがした。私は寝巻きを翌日のインナーとすることが多い。冬用に着ていた無印良品の暖かいインナーから、涼しいものに切り替えられていなかった。暑い。マスクも息苦しい。隣駅に到着。パン屋が駅の反対側だったので、呼吸と汗を整えるべくエスカレーターで上下し、パン屋へ。

店内での飲食が可能なことを確認し、コロッケバーガーとクロワッサンと珈琲アンパンを伝える。トレーとトングはない。飲み物はアイスカフェオレを。

パンが乗せられたトレーを持って窓際のカウンターに座る。本が並んでいるが、ウェストポーチから持ってきた本を出す。喉が渇いて駅で買った水を飲む。見られていたのか、水を持ってきて来れた。

パン屋のスタッフが「タピオカドリンクが好きだったが、この前、わらび餅ドリンクを飲んだら美味しかった。日本人はタピオカじゃない、わらび餅が体に合う。」という話をしているのを聞いていると、アイスカフェオレが運ばれてきた。

牛乳とコーヒーが二層に分かれていて、ストローでそれを混ぜようとすると、浮かんだ氷がグラスの内側に当たり、音が店内に響いた。私の他には利用者はいない。郵便配達の人が持ってきた封筒の宛先が間違っていたらしい。わらび餅が体に合うスタッフが慌てて赤いバイクを追いかけて出ていった。


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