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ごはんについて書くための習作71

飲食店、入り口のドアが開けられている。12時過ぎ、換気しているくらいがちょうどいい気温。ただ、この文章を書いている13時過ぎにはもう日が強く差してきて、家が暑い。釣り仲間がやっている飲食店も入り口のドアが開けられていたので、カウンターしかない店内が見える。外と室内の光量の差で見にくかったが、満席のよう。そのまま通り過ぎる。その先にある古い和食料理屋のランチメニューを眺める。1,600円〜3,000円。第二候補的に食べるには高いだろうと思う。そもそも自炊とかした方がいいのでは、ぼんやりと、一瞬だけ思う。
外食と自炊の間、テイクアウトが良いだろう。今いるところから少し歩くが惣菜パン、といっても横文字のオシャレなパンを買って、海で食べることにした。

1,600円〜3,000円のランチメニューから10分ほど歩いてパン屋のある通り。買いにきたであろう車が停まっているので営業していそう。全面ガラス張りのファサード。ファサードって正面のことだよな、と一応ググる。レジに一人、女性客。店に入って、パンを眺めていると(パンは欲しいものを取ってもらう形式)、「…のお父さん?」と声を掛けられる。女性客は息子が通っていた幼稚園で音楽を教えていた先生で、最近、息子が通い始めたピアノ教室の先生でもある。こんなところで会うなんて、という、僅かに驚いた感じで、「あー、こんにちは」と挨拶をする。一旦、レジでの会計と、パンを眺める動作にそれぞれ戻る。会計が終わって、こんなところで会うなんて珍しいですね、くらいの会話をして別れる。ピアノ教室のリズムを教える教材に音符のカードあって。これが16分音符と8分音符の組み合わせや、付点付き音符など、なかなかに難しい内容。この話を世間話的にしようかと思ったが、パンの前でする話じゃないなと思ってやめた。

昼に海でパンを食べるのは熱海にあるシェアオフィスを利用してた頃によくやっていたが、家の近所ではやってなかった気がする。バイパスの下、日陰にある消波ブロックに買ってきたパンと紙パックのカフェオレを置く。昨日までの低気圧のせいで波は高い。男の子とお母さん、石を積んで遊んでいる。遊漁船が近くに3隻。海はやや濁り、青緑に寄った明るめのグレー。好みのカラー。
ピザのようなトマトベースで炒められた具材が乗ったパン。ビニール袋に入れたまま食べる。パンの上の具材が剥がれて、袋の奥にいくつか落ちたところで、具材は中に入ったタイプのパンが正解だったか、と思う。
パン片手に、「文章が横田さんに似てるから」と勧められた日記『不確定日記』を読んでいる。確かに似ている。似ている部分があるとちょとした嬉しさがありますね。男の子とお母さんが波打ち際に近づいていくので、パン片手に不安になる。雲の隙間から光が差して、高い波が細かく光る。スマホの写真には上手く写らなかった。海岸にいる何人かもスマホを構えていた。
日記のためのメモとして、クリームが中に入った(袋の奥に落ちない)パンの写真を取ろうと、カメラアプリを起動する。海を撮ったときのキャッシュが残っていて、一瞬、水平線の画像が表示された。


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