㉒[介護ライブレポート]話し合っておくべきこと

義母には2人の娘がいます。2人とも嫁いでおり、別のところで家族と暮らしております。
それぞれに暮らしと仕事があり、なかなか家族が一同に集まって相談や手続きを進めることはできません。
今回の義母の介護についても、なるべく頻繁に連絡をとり、情報を共有しながらコトを進めてきました。
一人暮らしの親を介護する場合、今、困っている問題をどうすればいいのかがメインになります。
在宅にするのか、施設の入所を考えるのか?
施設の場合は、どんな種類があって、どこを選べばよいのか? などです。
現在の問題を対応するのに、精一杯でした。
でも、将来のために家族全員で話し合い、同意のもとに決めておきたいことがあります。
ウチの場合は、次の3点でした。

「介護の費用」
「延命治療」
「葬儀」

それぞれのテーマについて、少し説明します。

[介護の費用]
介護の費用を考えるとき、一番問題になるのは「不足」です。
そのために、介護費用をどこから捻出するか、その分担はどうするのかは最初に決めておくべきだと思います。

ウチの場合は、介護費用は親の資産から出し、不足した場合は子どもたちが折半して公平に分担することに決めました。
次は実際にどのくらいの費用がかかるかですね。

どのような介護をするかによって、必要なお金が異なります。
たとえば、施設に入所する場合、介護施設の種類によって費用がかなり違ってきます。
また、介護の期間がどれぐらいかも必要なのですが、これはわかりませんよね!
でも、大まかな数字は知りたいので、参考になりそうなデータをご紹介します。


「介護施設の費用」
介護施設の種類ごとの費用については、ネットから情報入手できますので、種類選択のヒントにします。
介護の種類が絞れたら、実際の施設の情報を見ます。
たとえば、介護付き有料老人ホームの場合、施設によってかなり費用に差があるからです。
ウチの場合は「ケアハウス」「介護付き有料老人ホーム」を選択したので、入所可能な実際の施設を片っ端から調べました。
ネットで探すと、施設ごとの情報が掲載されており、かなり詳しく費用を調べることができます。
入所時の費用とランニングコストがわかれば、ある程度シュミレーションできますね。

「いつまで介護をするのか?」
どのくらいの期間、介護をするかは誰にもわかりません。
なので、平均値を参考にします。


・「平均寿命」と「健康寿命」
「平均寿命」と「健康寿命」から、介護の平均の期間を推測できます。
「平均寿命」とは、簡単に言うと「死ぬまでに何年生きられるか」を示すもの。
「健康寿命」とは、介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を表します。
(健康寿命は国民生活基礎調査で「健康上の問題で日常生活に影響がない」と答えた人の割合や年齢別の人口、死亡者数から算出しており、3年ごとに数値を発表しています。)

つまり、死ぬまでの年齢から日常生活に健康上の問題がない期間を引けば、介護の期間が大まかに推測できます。

厚生労働省が公表した2019年のデータです。(2021年12月20日公表)
「平均寿命」は男性81.41歳 女性87.45歳。
「健康寿命」が男性72.68歳 女性75.38歳。

平均寿命と健康寿命の差は男性8.73歳 女性12.07歳
男性で約9年、女性で約12年程度がひとつの目安になります。


・生命保険文化センターの調査結果
生命保険文化センターが行った調査では、介護に要した費用は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。

また、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1カ月(5年1カ月)になりました。
「平均寿命-健康寿命」よりも短いですね。

出典: <生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度>
過去3年間に介護経験がある人に、どのくらい介護費用がかかったのかを調査
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html


「介護にいくらかかるのか?」
いろいろなケースで介護費用は変わってきます。たとえば、要介護度が高い方は、いろいろな介護サービスの質と量が大きくなりますので、介護費用は高くなります。
しかし、介護保険の利用限度額は高くなります。
ケースや種類によって必要額が変わりますので、変動する項目を知っておくとよいと思います。

<介護費用の変動する項目>
・要介護度:高い人ほど費用が高くなる
・介護保険の利用限度額:高い人ほど高くなる
・介護保険の自己負担割合:所得に応じて自己負担の割合が変わる
・介護施設の利用料:種類によって異なる。同じ種類でも施設によって差が大きい。

その他の費用
リフォーム:手すり設置など
購入、レンタル:車椅子、介護ベッドなど


「その他」
介護の費用を考えるとき、親の資産、介護者の収入などを把握するのはもちろんですが、基本は、ご本人(介護される親)の年金である場合が多いと思います。
平成30年の厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概要」によると、老齢厚生年金は厚生年金保険で平均月額は14.6万円、そして国民年金では5.6万円です。

知っておきたいのは、「高額介護合算療養費制度」、「高額介護サービス費制度」という制度です。聞きなれない制度ですが、知っておくことで介護にかかる費用を減らし、経済的負担を抑えてくれる場合があります。

高額介護合算療養制度とは、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合算したときに、基準額を超えた場合にその分の金額が支給されるという制度です。
高額介護サービス費制度とは、介護サービスを利用して支払った負担額が一定額を超えた場合に申請すると、超過分が払い戻されるという制度です。

他にも、介護費用を抑える制度として医療費控除や介護休業給付金などがあります。

老人ホームや介護施設の料金は、都道府県ごとにかなり差が出ることも知っておくとよいと思います。


[延命治療][葬儀]
これからお話しするテーマは、いわゆる「縁起でもない話」になります。
ご本人が元気なときには話づらいテーマで、もう少し必要性が増してからでいいのではないかと思う人も多いでしょう。
また、話すときには当事者の方は嫌な顔をされるかもしれません。
しかし、体調が悪化したり、入院した後では、なおさら話せる内容ではありません。
コトが起きてからではご家族が大変苦しむケースになるかもしれませんので、是非、お元気なうちに話し合っておかれることを勧めます。
ちなみに、私は両親のときにこのコトで大変に迷い、苦しみました。

入院するときに確認される「延命治療」と亡くなられたときの「葬儀」についてです。


[延命治療]
患者さんが救急搬送されたときに、家族は「延命治療」に関して主治医から説明を受け、治療方針について「本人の意思」を確認されます。
本人の意思の確認できない場合、家族としてどうしてほしいかを聞かれます。
このとき、家族はかなり重い決断をすることになります。
もちろん、どのような選択をするかに正解はありません。
(なので、延命治療自体については、ここでは触れません。)
私の場合には、親が入院したときに本人に確認できる状態ではなかったので、家族の代表として私が聞かれました。
その時のことは、今でもハッキリ覚えています。
家族の命に関することを自分が決めていいのかと悩みぬいたからです。
結局、その日は返答できず、残された家族全員と話し合って、治療方針を決めました。

家族で話し合うとき、各人の意見が異なると、なかなか同意にいたりません。なぜなら、この討論に「正解」がないためです。
どのように決めても、意見が異なる家族は心にモヤモヤを抱えることになるかもしれません。
本人が納得できる最後を迎えるため、そして、残された家族が苦しむことのないようにするためにも、延命治療の方針を決めておくべきだと思います。

当たり前ですが、もっとも重要なのは「ご本人の意思」です。
これが決まっていれば、家族全員が同意できるからです。

本当は、高齢者の方だけでなく、成人した人はすべて考えておくべきことだと思いました。
ちなみに私も親の葬儀のあと、家族全員に「自分の意思」を伝えてあります。


[葬儀]
家族が亡くなられた場合、直後から数日は葬儀といろいろな手続きでかなり忙しく過ごすことになります。
私の場合、自分が喪主だったので最初の3日間はかなりハードでした。
実家の近くの葬儀会社(全国チェーン)にお願いをしたのですが、精神的にキツい時に、限られた時間で葬儀を行わなければならないプレッシャーもあったからでしょう。
いろいろな方に助けていただき、なんとか無事に葬儀を済ませました。

葬儀会社の方と葬儀の打ち合わせを行うことから始まるのですが、最初の関門は「形式(宗教)」をどうするかです。
その家の宗派が決まっており、依頼先がハッキリしている場合は問題ありません。
また、ご本人の希望が明確な場合も問題ありません。
問題は、無宗教の場合です。

私の父は無宗教でした。
この場合は、葬式の形式をどうするのかを決めなければなりません。
特に宗教の指定がない場合、お坊さん等の手配をどうするのかなどをその場で打ち合わせるのです。
父は、葬儀に関する希望は残しておらず、家族で話し合ったのですが、なかなか一致しませんでした。
「宗教を信仰していないのだから、宗教的な儀式はないのが普通だ」「父を成仏させてあげたいから、どこかの僧侶に供養してほしい」と意見が分かれました。
この議論も、もちろん正解はありません。かなり、話し合ったのですが時間も限られています。
結局、母の希望を重視して、仏教の一派、天台宗の僧侶をご紹介いただきました。

ちなみに父の葬儀の後、母にはあらかじめ希望を確認しました。そのおかげで、母の葬儀は混乱なく手配をすることができました。

最近は、「終活」という言葉がいろいろな場面で聞かれて一般化してますし、葬儀の形式も多くの種類が増えています。
以前よりも話しやすいうえに、選択肢も多いので、ご本人の意思を確認しやすいと思います。


以上、事前に話し合っておくべきテーマを3つほど紹介しました。
この記事の内容が皆さまの親孝行に少しでも役立ちますように。


以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?