【ち○ちんの手術をした。】#8 〜悲劇〜
「.....あれっ?」
抜糸を目前にした僕のちんちんを見た先生の、第一声だった。
窓から差し込む太陽の光で朝が来たことを知る。
ブラックのコーヒーで眠気を覚まし、新聞の経済面に視線を落とす。
朝食のトーストとベーコンエッグを口へと運ぶ。
夜のうちにかいた汗をシャワーで洗い流し、身体に付いた水滴を真っ白なバスタオルで拭ったら、ちんちんの傷口に優しく軟膏を塗る。
包帯を外した僕の、モーニングルーティン。
『今日の抜糸が終われば、あの泌尿器科へ行くこともないのか。』
病院へ向かう電車の中で、嬉しくも少し寂しくも思う。
通い慣れた道を歩き、病院に到着。
最後の診察が始まる。
僕のちんちんを先生に披露するのも今日で最後。
いつものようにズボンを下ろし、診察台の上に仰向けになる。
名残惜しいのか、先生がちんちんを診る時間はいつもより長めだ。
先生が口を開く。
「いやぁ〜、完璧ですね!!」だろうか、
はたまた「前代未聞の回復力です!傷口がどこかわかんなくて、しばらく探しちゃいましたよ!!」だろうか、
どんな言葉で僕のちんちんの傷口を賛美してくれるのだろう。
「.....あれっ?」
『ん?今、先生は「あれっ?」って言った?』
「ちょっと待ってくださいね.....んん〜なるほどぉ〜、んん〜〜〜。とりあえず、糸を切りますね(チョキン)。」
「はい。うっ(イタッ...)」
「そうかぁ〜、挫滅(ざめつ)のせいかぁ〜。」
先生が”鬼滅の刃”みたいなことを言った。
「挫滅って何ですか?」
「挫滅っていうのは、強い衝撃とか圧迫で組織が破壊されることです。
塊を摘出するときに、切った両端を小さい洗濯バサミみたいので挟んで摘出するんですが、
縫い合わせた部分はその挟んだ部分で、
挟んだことによって組織が再生する能力を失ってしまって、ちゃんと治らなくなってるみたいです。
まさか、十数分挟んだだけで挫滅してしまうなんて、全く予想出来ませんでした。」
期せずして、僕のちんちんの皮膚が他人よりちょっと弱いことを知る。
実は、僕もおかしいとは思っていた。
血は止まると聞いていたのに、シャワーを浴びようとパンツを脱いだら、今日までずっとほんのちょっと血が付いてたし。
他の部分をケガしたときに治る感じと違う気がしてたし。
ちんちんの雰囲気はなんか暗かったし。
全部、納得がいった。
..........で、どうするんだ?
先生はこう続けた、
「あ、でも大丈夫ですよ、すぐ縫い直せるので。じゃあ、準備しますね。」
「あ、はい。」
『すぐ縫い直せるならよかったぁ〜。もしかしてこのまま治らないかと思ってドキドキしたぁ〜。また縫うってことは完治までも一週間延びちゃったなぁ〜。まぁ、仕方ないか。.......すぐ縫い直せるって軽く言ってたし、このままささっと縫っちゃうのかなっ?もしかして、また、あの麻酔ぃぃぃぃぃぃいいいいいいいイテェェェェェェエエエエエエエっ!!!!』
悪夢の”ちんちん麻酔”の再来。
やはり、とんでもない痛さだった。
俺はもうほんとに
ずっと我慢してた!!
前回の麻酔を打った時も
糸を切った時も
すごい痛いのを我慢してた!!
俺は長男だから
我慢できたけど
次男だったら
我慢できなかった
もちろん今回も、何も見られなかった。
目を開けたときにはちんちんは包帯ぐるぐる巻きの状態で、今回は6針縫ったと聞かされた。
前回2針。今回6針。
増えたことに、何故か笑ってしまった。
「包帯を外すので、また明日来てください。」
「はい、ありがとうございました。」
デジャヴュか。
僕は病院を後にした。
大きな荷物を抱え、よしもと有楽町シアターへと向かう。
今日のスケジュールは〔再縫合〕からの〔R-1グランプリ2021(2回戦)〕だった。
ネタはちゃんと出来るだろうか.....
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