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「お役所言葉」と「やさしい日本語」

辞書を調べると、「お役所仕事」という言葉は載っていますが、「お役所言葉」はありませんでした。「お役所仕事」とは、官庁の融通の利かない非能率的な仕事ぶりを皮肉った言い方(三省堂Web Dictionaryより)だそうです。とはいえ今、「お役所言葉」を「カイゼン」するところは増えているようです。

市民が「お役所言葉」をどのように思っているか。

分かりにくい、親しみが持てない、なじみの薄い、違和感、権威的、命令的、権威的、押しつけがましい、不快感、長い文は、読みにくい、文の構造が複雑、主語と述語の関係や修飾語のかかり方がわかりにくい、文章の意味がはっきり伝わらない、あいまい、読む人によって解釈に違いが生じる、ごまかそうとしている、遠回しな表現、否定形の文章は印象が悪い、やたらにカタカナ語、専門用語が多い、役所の中で使われている略語、使いすぎて返って無礼な印象の敬語・・・

私が思っている内容じゃないですよ。東京都港区の『実践!やさしい日本語による公文書』に書いてある内容の一部です。いやいや、悪口が明確に書いてあるだけでもすごい。実は、港区では1997年に『分かりやすく親しみにある文章表現のための手引き』を作成し、「読む側の立場に立った文章表現の改善に取り組み、2017年に国際化や情報化の急速な進展に対応できるよう、全面見直しを行ってこの手引きを作成した」とのこと。(拍手!)

お役所言葉

この動きは、全国でも広がっているようですね。現在、「お役所言葉」で検索すると下記も見つかりました。
・佐賀県中津川市(2012年)
 「お役所言葉」改善の手引き サービスはわかりやすい言葉から
・千葉県銚子市(2018年)
 お役所言葉みちしるべ
・北海道富良野市(2005年)
 カタカナことば・お役所ことば見直しの手引き

『パッと伝わる! 公務員のデザイン術』佐久間智之著、学陽書房
という本もあります。

どの内容も、市民に分かりやすく伝えるために改めるべき点や、行政用語、カタカナ語の言い換え一覧があり、「やさしい日本語」に通じることがたくさんあります。先日横浜にインタビューに行ったんですが、「A4用紙があったら、行政は、とかくそこにできる限りの情報を詰め込もうとする」って、ウマい。上記の中には、弘前大学の「やさしい日本語」の『「やさしい日本語」作成のためのガイドライン』とほぼ同じレイアウトのものもあって笑ってしまいましたが・・・。

 神戸市のNPO多言語センターFACILさんは、市民向けのお知らせ文を多言語に翻訳する仕事を請け負っておられますが、当初は「やさしい日本語」に書き換えたものは市役所の上司の許可が下りず、内容、順序などを変えたり、情報の取捨選択が許されなかったそうで、「やさしい日本語」に理解を得るまで数年かかったそうです。そういえば、昨年、とある市の担当者から「上司から、行政文書はできるだけ難しく書くように指導されています」と聞かされたことも・・・。

「やさしい日本語」カテゴリーⅡの用事用語辞典 では、

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横浜市の「やさしい日本語」で伝える では、

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ね、わかりやすいでしょ!
難しい説明や手続きが多い中、概要だけでもわかると、その後の手続きも、がんばろう!って思える。日本人にも分かりやすいし、外国語にも翻訳しやすい。まさに、ユニバーサルデザインかと。

行政や医療、学校現場で、それぞれの現場の方が、「やさしい日本語」の主旨を理解し、取り入れてくださることを期待します。

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