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言葉を簡単にするだけじゃダメ!
「やさしい日本語」って、言葉を簡単にすればいいんでしょう
そう思っている方はたくさんおられます。
もちろんそれも大切ですが、基本はそこじゃありません!
単語や文を簡単にすることは最後の「作業」です。
①単語(語彙、ことば)の言いかえ
言葉を簡単にすることはもちろん大切ですし
講習では「言葉の書きかえ」からお話しします。
言葉ですので、数学のように正解があるわけではありませんが
「やさしい日本語」には基準があります。
「やさしい日本語」が開発された当時に使われた基準が
旧日本語能力試験の3級、4級の語彙・漢字です。
旧日本語能力試験は外国人の日本語能力を測る試験として使われていて、
4級がいちばん簡単で、1級がいちばん難しい。
それぞれの級で語彙・漢字の一覧表がありました。
たとえば、「会う」は4級、「合う」は3級と決まっていましたので
この一覧表を「やさしい日本語」の基準としていました。
これを元に、弘前大学人文社会科学部言語学研究室から
2017年に公開されたのが『用事用語辞典』です。
ですから、語彙の一覧は下のように「級」で書いてあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1669185324813-3FePnPFhpG.png?width=800)
しかし、2009年から日本語能力試験は
N5、N4、N3、N2、N1に変わりました。
語彙・漢字表がなくなって
N4 基本的な日本語を理解することができる
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
のように文章で表されるようになりました。
そして今は
カテゴリーⅠはN4、N5、+α(災害時によく使われる言葉など)
カテゴリーⅡではN2 +α(外国人が生活情報で知っておくべき言葉など)
が基準となっています。
詳細は『生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン(カテゴリーⅡ)』(弘前大学社会言語学研究室 2019)を見てください。
迷ったときや、誰かと意見が違ったとき
「用事用語辞典」や「図鑑」で使っているからOK
という判断基準にできて便利です。
また、「リーディングチュウ太」も
文単位で調べられるのが便利ですよね。
ただ、ネット環境がない場合や、
何らかの原因でブラウザがクラッシュして
アクセスできないこともあるので
手元に用字用語辞典があるのは心強いです。
最近はマニュアルも公開しているところが増え
単語単位の言いかえや文例集もたくさん出ていますので
参考になります。
【出入国在留管理庁、文化庁】別冊やさしい日本語書き換え例
【横浜市】「やさしい日本語」で伝える
【愛知県】「やさしい日本語」のてびき
【港区】やさしい日本語による公文書
また、福祉関係や医療関係、学校にも専門用語が多いので
こうした文例辞書が出てくることを期待しています。
②文(文法・会話文)のルール
「やさしい日本語」には文法的なルールがあります。
文体は「です・ます」、文を短く単文にする、二重否定を避ける
可能は「れる・られる」ではなく「~することができる」
行動指示は「~して ください」という文体にするなど
どれも日本語初級を学んでいる外国人でも理解しやすい表現にしたものです。
難しいのは会話ですね。
行政の窓口などでは、FAQのような形で
会話のフローチャートを作成したり
指差しボードを作っているところもあります。
【三重県】やさしい日本語による窓口対応事例集
いずれにしても、使い慣れることが一番です。
他人が作ったマニュアルを読むだけで
ホイホイ使いこなせるものではありません。慣れが必要です。
「書き写し」もお薦めです。
PCで『これさえあれば!!「やさしい日本語」図鑑』の掲示物を書き写すだけでもかなり勉強になります。
これはカテゴリーⅠですので
ことば選びや文の作り方、分かち書きのコツも習得できます。
③まず、情報を絞る!
「やさしい日本語」の作成には元情報があることが多いと思います。
まず最初にするべきことは「情報を絞る」こと
言葉の書きかえではなく、
「伝えたい内容は何か」をしっかり把握することから
作業は始めてください。
愛知県の「「やさしい日本語」てびき』p5に
とてもわかりやすい手順が書いてありますので、ぜひ参考にしてください。
![](https://assets.st-note.com/img/1669182739978-veSNiv8Rmb.png?width=800)
日本語ではどうしても大切なことを最後にするという慣習があります。
実際に行政のHPで「断水による水の配給のお知らせ」ページがありましたが
日ごろお世話になっているというあいさつ文から始まり
断水に至った状況説明とお詫びが続き
今後の対応策のいろいろ書いてあって
やっと最後に水の配給の場所と時間 という構成でした。
読み手のニーズから考えると
やはり「水の配給の場所と時間」が初めにあるべきかと。
愛知県の手引きからわかるように、
1.数ある情報の中から必要なものを取捨選択する
2.文章レベルでできるだけ余分な情報をカットする
と、まずは情報を絞ることが最初の作業です。
次に
3.伝えたいことを前に持ってくる
大切なことから順番に書く。
何が書いてあるのか、最初の数行でわかるようにする。
最後まで読まないとわからないのは悪文かと。
構成の工夫も大切です。
単語や文法やふりがなや分かち書きは
その後の作業となります。
![](https://assets.st-note.com/img/1684825549735-e0SbgbDXH1.png?width=800)
ちなみに、2021年「新型コロナウイルスワクチン接種」が始まりましたが
HPや届いたお知らせ文がとにかく、何度読んでもわかりにくかった。
腹立つほど難しかった。
これをとてもわかりやすく「やさしい日本語」に書きかえたのが
中野区国際交流協会さんでした。
なぜ、このような順番にしてあるか、タイトルや字の大きさや色
言葉だけでなく、イラストもわかりやすい。
私もこんなのを受け取りたかったです!
ご参考までに。
![](https://assets.st-note.com/img/1686540221174-ET6qkdWKAO.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1686540523847-GpsUmkbOOn.png?width=800)
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