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注釈の違和感~※や*って、どこで習ったっけ?~

【1.問題の所在~統一ルールの不在~】

”ビジネスマン”が作る資料の注釈には「※」や「*」が多く使われる。
一方で、アカデミックライティングの世界では基本的に「数字のみ」もしくは「括弧つきの数字」とすることがガイドラインで定められている
ことが大半で、「※や*をつけましょう」というガイドラインは見たことがない。
では逆に、「ビジネスシーンでは、注釈は※や*を使いましょう」というガイドラインのようなものがあるかというとそうでもない。
「※」や「*」は出所不明の謎ルールであるというのが現時点での私の所感である。(いつかクソ暇になったときに「※」や「*」の歴史をさかのぼってみたい)

社内で注釈の統一ルールがあって「※」や「*」を使用しているのであればまだよいが、そんな企業はほとんどないと思われる。例えば、ソフトバンクグループの決算資料では、「※」と「*」が同じ資料の中で混同されている。

注釈の統一ルールを自分の中に持っておくことで快適な資料作成ライフを送るという意味でも、注釈は数字で打つことを徹底すべきだろう。


【2.使用例】

ビジネスシーンにおける注釈の使い方をサンプリングし概観してみる。

◆「※」の例①:資生堂

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資生堂の決算資料では、ボディ部分の補足が必要な単語に上付きで「※1」と打ち、ページ下部で「※1」として対応する注釈を記載している。

◆「*」の例②:SONY

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(見にくいかもなので一応拡大すると↓)

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SONYは、資生堂の※が*に替わったバージョンである。これもまあそれっぽい。
このアスタリスク方式は、SONYのほかにトヨタ自動車なんかが採用していた。

以上見てきたような、※や*くらいならまだギリギリ自然な感じもしなくもないが、中にはびっくりする注釈のつけ方をする例もある。

◆トンデモ注釈①「※」と「*」の混同:ソフトバンクグループ

「ソフトバンク」の決算資料は、SNS上でなにかと褒められることが多いが、「ソフトバンクグループ」となると、なぜか途端にめちゃくちゃな資料になっている。

◆トンデモ注釈②「注」:日本郵政

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なんと、上付きのうっすい字で「注1」と打つ離れ業である。思わず、そんなんどこで習ってん!とツッコミたくなる。


◆数字注釈の使用例:ライフネット生命

少数ではあるが、数字注釈を採用している企業も一部存在する。
ライフネット生命は、上付き数字を採用しており、非常に好感がもてる。

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【3.風説の流布】

「注釈のつけ方」でググってみると、以下のようなトンデモF**kin記事にも出くわしたりする。

曰く、

「注釈」の書き方は、「注釈」を加えたい言葉の横に(注1)、または(1)と書きます。

ということなのだが、だからそれはどこで習ってん…。日本郵政にわけわからんルールを吹き込んだのはてめえか…。
根拠や出典はおろか公開資料での使用例も載っておらず、事実なのか意見なのかの区別もできない。
でまあ、さらにこいつが言うには、

英語では文中で説明することが多いので「注釈」はあまり使わないようですが、「注釈」が必要な場合は「アスタリスク」(*)というマークを使うか、Note:を使います。
アスタリスクの日本版が米印なので、英語の文献などでは「※」ではなく「*」を使います。

ということなのだが、例えばNatureのFormatting guideには、

References
References are each numbered, ordered sequentially as they appear in the text, tables, boxes, figure legends, online-only methods, Extended Data tables and Extended Data figure legends.

When cited in the text, reference numbers are superscript, not in brackets unless they are likely to be confused with a superscript number.

とあるように、上付きの数字であること(混同の恐れがある場合を除いて括弧も使用しない)が記されているし、海外企業の決算資料でもきちんと数字注釈が使われている例を確認することができ、完全なでたらめであることがわかる。

◆海外企業の数字注釈の例①:L'OREAL

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◆海外企業の数字注釈の例②:Teslaリンク

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◆海外企業の数字注釈の例②:Tencent

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まあそもそも、「*」は、f**k のように伏字に使ったり、文法的に誤っている文の先頭につけたりする記号である。
トンデモ記事に惑わされないようにしたいものである。


【4.コンサルティングファームおよび学術論文での使用例】

自らの成果物に極めて高い品質を要求するプロフェッショナルファームや、論文によって知のフロンティアを開拓しているアカデミアでは、どのような注釈のつけ方が採用されているのだろうか。
以下、ネット上の拾い物ではあるが、プロフェッショナルファームの成果物や学会等のフォーマットガイドを概観する。ざっとみたところ上付きの数字を使用している点で共通しており、括弧のつけ方にバリエーションがある、といったかんじである。(アカデミックライティングにおけるいわゆるバンクーバー方式)

◆括弧なしパターン 1. :マッキンゼー、BCG、Nature

・マッキンゼー

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<リンク> https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000825.pdf

・BCG

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<リンク> https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000675.pdf


・Nature
<リンク> https://www.nature.com/nature/for-authors/formatting-guide


◆両側括弧パターン (1)  :教育社会学会

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http://www.gakkai.ne.jp/jses/pdf/toukoukitei_20200511.pdf


◆片側括弧パターン  1)  :SIST、日本社会学会、Strategy&

・SIST

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<リンク> https://jipsti.jst.go.jp/sist/pdf/SIST_booklet2011.pdf

・日本社会学会

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<リンク> https://jss-sociology.org/bulletin/guide/annotation/

・Strategy&

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<リンク> https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja/publications/digital-auto-2020-jp.html


【5.結論】

以上を踏まえ、以下のルールを提案したい。
(※本文執筆時点であり、今後柔軟に変更する可能性がある)

ルール①:
基本的には上付きの数字にする(括弧は任意だが不要でよい)

ルール②:
ページ全体に対して注釈をつけたいときは、注釈に対応する箇所がリードやボディに存在しないことを明示するために「注:」や「Note:」を用いる



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