名人戦第4局が終わって

 2024年5月19日、名人戦第4局で豊島将之九段が藤井聡太名人を下し、4タテを免れ、逆転で名人奪取の目を残した。

 第4局も、この名人戦シリーズと同じく、豊島さんの研究が光りつねにペースを握った。第3局までと違ったのは、、中盤に緩手があったものの、藤井さんに終始ペースを握らせず、評価値が「藤井曲線」ならぬ「豊島曲線」を描いたことだ。

 この戦い方から見ても、藤井さんに勝つ方法は次のように言えるだろう。

 ① 序盤で藤井さんに作戦勝ちをする。
 ② 中終盤で絶対に間違わない。
 ③ とくに、藤井さんが仕掛けてくる毒饅頭に絶対にひっかからない。

 このようなことは、アマチュアでも強い方、プロなら全員、藤井さん自身もわかっているはずだ。③は、「その手を指す以外、藤井有利になる」という「一択」の場面であることが多い。そこで最善手を指すこと、これがわかっていてもトッププロでも至難の業だということだろう。

 この日の豊島さんは、藤井トラップも見事にくぐり抜け、藤井さんを投了に追い込んだ。これは、現在伊藤匠七段が2勝1敗と藤井さんを追い込んでいる叡王戦でも見られた。伊藤さんが作戦勝ちをし、見事王者を寄り切っている。

 私自身は、藤井さんも好きな棋士の一人であり、いつまで八冠無双状態が続くか、期待を込めて見ている。しかし、ライバルがいてこそ、棋界は盛り上がるし、なにより将棋の内容も濃くなる。当面の将棋界は、藤井さん中心に回っていくだろうが、永瀬九段や渡辺九段にも奮起してほしいし、藤本渚五段や上野裕寿四段ら若手のタイトル戦登場にも期待したいと思っている。

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