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生命(いのち)のメッセージ展

というのをご存知だろうか?

事件や事故によって理不尽に生命を奪われた
犠牲者が主役のアート展であり

御遺族の手で造られた等身大のパネルは
「メッセンジャー」と呼ばれ
本人の写真と家族のメッセージが貼られており
足元には「生きた証」である靴が添えられ

つながれ つながれ いのち

をテーマに
全国を巡回しながら
いのちの大切さを訴え続ける活動である

この度
職場での教育事業の一環として
設営から参加させて頂いた

開催前日
引越し業者の手により
メッセンジャーの皆さんが運ばれてくる

彼らが入った箱を受け取ったときの
ずっしりとした感触は今でも忘れられない

材質だけで見れば
発泡スチロールと紙で造られた人型だが
被害者や御遺族の「思い」や「想い」があり
だからこそ、こんなにも「重い」のだと感じた

上司の指示の下、会場まで慎重に運ぶ
箱を開き、中のキルト素材の袋を開けると
メッセンジャーの姿が露わになった

私は静かに手を合わせてから
メッセンジャーを一人ずつ慎重に取り出し
それぞれの仮位置に立っていただいた

不意に
背後から肩を触れられた感触があったので振向く
メッセンジャーの一人が私に倒れてきていた

「私たちを雑に扱わないで」

そう言われたようで、思わずはっとする

次に
足元へ靴を添えていく
使い込まれた巾着袋から一足ずつ取り出し
型くずれや靴紐の乱れがあれば直してあげた

ひと際
小さい巾着袋があった
中から可愛らしい靴を取り出すと
砂がパラパラと落ちてきた
砂場で遊んだりしていたのだろうか

もっと遊びたかったよね・・・

ふと
そんなことを考え
作業する手が止まる
込み上げてくる感情を押し殺しながら
私の任務を淡々と遂行していく

一通り済んだところで
動線を確認しながら、改めて彼らと向き合う
それぞれの生き様が、克明に描かれている
御遺族の無念と共に
私と同世代や親世代、青春真っ盛りの若者
そして「生き様」と呼ぶにはあまりにも短い
幼児や赤ちゃんの姿も

メッセンジャーはそこに佇んでいるだけで
何を感じるかは受け手次第
昔の私だったら、何を感じただろうか

展示終了後
メッセンジャーの皆さんの身支度を整え
次の目的地への旅立ちを静かに見送った

今回、この機会をくださった関係者の皆様
そして私に人間としての成長と命の大切さを教えてくれた、すべてのメッセンジャーへの感謝を込めて

合掌

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