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Gemini 1.5 Proのコンテキスト長『100万トークン』を活かした手法『コンテンツマージ』を試してみた

Executive Summary

  • トヨタ、テスラ、BYDの3社の決算書をGemini 1.5 Proに読み込ませることで、膨大なデータから業界分析、企業分析、記事の執筆までをAIで自動化。

  • 従来の人間の作業では難しかった、複数企業の決算書の内容を統合・分析し、そこから記事のコンセプト立案、記事執筆、図表作成までを短時間で実現できることを示しました。

  • 本記事では、Gemini 1.5 Proが持つ100万トークンという圧倒的なコンテキスト長の長所を活かし、複雑な情報分析と文章生成を自動化する、次世代のコンテンツ作成のあり方を提示しています。

はじめに

ChatGPT一強時代が終わり、Claude3やGeminiといった新たなLLMが登場し、用途によりLLMを使い分けることで、様々な課題をクリアできるようになってきました。その中でも、Gemini 1.5 Proは、傑出した能力を持っており、その能力を利用すれば、今までのLLMでは実現できなかったことが実現できるようになります。

Gemini 1.5 Proの強みは、コンテキスト長が100万トークンということです。2024年6月9日現在では、GPT-4oが12.8万トークン、Claude3が20万トークンなので、主要LLMサービスの中では最長のコンテキスト長を誇ります。
コンテキスト長が長いと何が良いかというと、読み込めるデータ量が多くなり、多くのデータを利用した分析や生成が可能になるということです。例えば、人間でも、ワーキングメモリが高い人は、多くの情報を記憶でき、頭の中に溜め込まれた情報から複雑な状況を分析したり、未来を推定したりすることができます。今までは、一部の能力の高い人だけが実現できていたことが、これからはAIの力を借りて実現することができます

今回は、このGemini 1.5 Proに複数企業の決算書を読み込ませ、業界や企業を分析した記事を作成してみたいと思います。

コンテンツマージについては、さとりさんが詳しく解説してくださっています。初心者の方は、次のYoutube動画を見ると、理解が進むと思います。


1. インプットする資料集め

今回は、自動車業界の動向を見るために、中国のBYD、米国のテスラ、日本のトヨタの決算書を集めました。
それぞれ以下の資料になります。

2. 資料のインポート

Google AI Studioを開きます。以下のリンクからどうぞ。

次に、Google Driveに資料をアップロードします。「Upload to Drive」からアップロードすることにより、チャット欄に自動的に資料が差し込まれます。

私だけに起きている現象か不明ですが、3社の決算書を一度にインポートしたら、なぜかエラーが発生しました。そのため、1社ずつインポートを実施しました。

3. 資料を読み込めているか確認

しっかり資料を読み込めているか確認するために、BYDの決算書の内容をまとめてもらいました。

BYDの決算書の内容をまとめて教えてください。

ファイルの種類: PDF
ファイル名: BYD Auto_Annual Report_2023.pdf
ファイルの内容: 比亞迪股份有限公司(BYD)の2023年度年次報告書

主な内容:事業概要:
- 新エネルギー車を中心とした自動車事業
- 携帯電話部品・組立事業
- 二次電池事業
- 太陽光発電事業
- 都市鉄道事業
2023年度のハイライト:
- 新ブランド「Yangwang」と「FANGCHENGBAO」の発表
- 革新的な技術「易四方」アーキテクチャ、「雲輦」システム、「DMO」プラットフォームの発表
- 海外生産拠点の設立(タイ、ブラジル、ハンガリー)
- 多数の販売記録更新(中国NEV販売11年連続首位、世界首位、600万台達成など)
- Euro NCAP五つ星安全評価獲得
財務状況:
- 売上高:前年比42.04%増の602,315百万元
- 純利益:前年比80.72%増の30,041百万元
今後の展望:
- 技術開発の強化と製品競争力の向上
- 多ブランド戦略の推進と海外市場開拓の加速
- 二次電池事業、太陽光発電事業の成長
コーポレートガバナンス:
- 董事会の構成、委員会の活動状況
- リスク管理体制、内部統制システム
財務諸表:
- 連結貸借対照表
- 連結損益計算書
- 連結株主資本変動計算書
- 連結キャッシュフロー計算書

その他:
- 従業員数: 約70.35万人
- CSR活動: 環境保護への取り組み、社会貢献活動

特徴:
- 2023年度は、BYDにとって記録的な成長を遂げた年であり、年次報告書にはその成果が詳細に記されています。
- 技術革新に注力し、次世代自動車技術の開発を積極的に進めている姿勢が読み取れます。
- グローバル展開を加速させており、世界市場でのプレゼンスを高めようとする意欲が伺えます。

本当に合っているのか確認するために、売上高が前年比42.04%増、純利益が前年比80.72%増の箇所を決算書から探してみました。すると、以下の箇所が見つかり、しっかり読み込めていることが分かります。

BYD Annual Report 2023から抜粋

4. 各社の情報を統合して分析

BYD、テスラ、トヨタの決算書を読み込ませたので、コンテキストには各社の決算書の内容が蓄積されている状態にあります。ここで、各社の情報を統合した分析をしてもらいました。

BYD、トヨタ、TESLAの有価証券報告書またはAnnual Reportから、各社の戦略を分析・比較してください。

BYD、トヨタ、テスラの3社の戦略を、各社の有価証券報告書やAnnual Reportに基づき分析・比較します。

各社の戦略概要

企業戦略概要
BYD: 「技術主導」と「市場多角化」

電動化技術をコアコンピタンスとし、自動車以外にも二次電池、太陽光発電、都市鉄道など多角的に事業を展開
トヨタ: 「全方位戦略」と「地域密着」
HV、PHEV、BEV、FCEVなどあらゆる電動化技術を追求し、各地域のニーズに合わせた商品・サービスを提供
テスラ: 「EV・エネルギー・AIの三位一体」
EVを中核に、太陽光発電や蓄電システム、自動運転技術などのAI技術を融合させ、持続可能なエネルギーエコシステムを構築

3社の戦略比較

1. 電動化戦略
BYD
: 早くからEVに特化し、低価格帯から高級車まで幅広いEVをラインナップ。電池技術を強みとし、外部への電池供給も積極的。
トヨタ: HVで先行し、長年培ってきた内燃機関技術と電動化技術を組み合わせた「マルチパスウェイ」戦略を採用。近年はBEVへのシフトを加速。
テスラ: 創業当初からEV専業メーカーとして、高性能・高価格帯のEVでブランドを確立。近年は低価格帯のEVも投入。

2. グローバル戦略
BYD
: 中国市場を中心に、欧州、アジア、南米など世界各国へ進出。海外工場建設や現地企業との提携など、積極的なグローバル展開。
トヨタ: 世界170カ国以上で事業展開する、世界最大の自動車メーカー。グローバル生産・販売体制を構築し、各地域のニーズに対応した商品・サービスを提供。
テスラ: 米国市場を起点に、中国、欧州など世界主要市場へ進出。グローバル規模の生産・販売体制を構築。

3. 技術戦略
BYD
: 「ブレードバッテリー」など、独自技術による高性能・高安全なバッテリー開発に注力。EVプラットフォームの開発も進め、技術優位性を強化。
トヨタ: HV、PHEV、BEV、FCEVなど幅広い電動化技術を開発。自動運転技術やコネクテッド技術など、CASE技術開発にも注力。
テスラ: EV向け高性能バッテリー、電気モーター、パワートレインなどの開発に強み。自動運転技術「FSD」やAI技術「Optimus」などの開発をリード。

4. 事業ポートフォリオ
BYD
: 自動車事業に加え、二次電池、太陽光発電、都市鉄道など幅広い事業を展開。「垂直統合型」ビジネスモデルでシナジー効果を追求。
トヨタ: 自動車事業を中核に、金融事業、住宅事業、情報通信事業などを展開。近年はモビリティサービス分野への進出も加速。
テスラ: EV事業を中核に、エネルギー生成・貯蔵事業、自動運転技術、AI技術などを融合。

各社の強みと課題
BYD
- 強み: 低コストなEV生産、高性能・高安全なバッテリー技術、多角的な事業ポートフォリオ
課題: ブランド力向上、海外市場での競争激化、多角化による経営資源の分散
トヨタ
強み: グローバル規模の生産・販売体制、ブランド力、多様な電動化技術、豊富な資金力
課題: BEVへのシフト加速、ソフトウェア分野の強化、イノベーションの加速
テスラ
強み: EVの先駆者としてのブランド力、革新的な技術、垂直統合型ビジネスモデル
課題: 生産能力の向上、品質管理、顧客サービスの強化、マスクCEOへの依存リスク

まとめ
3社は、それぞれ異なる強みと課題を抱えながら、電動化、グローバル化、技術革新などを軸に、持続可能なモビリティ社会の実現を目指しています。今後は、各社の戦略がどのように進化し、競争がどのように激化していくのか注目されます。

補足
各社の戦略は、有価証券報告書やAnnual Reportの情報に基づいて分析しています。
各社の戦略は、今後も変化する可能性があります。

決算書を跨いで分析しており、各社の状況が非常に分かりやすくまとめられています。人間の手でやろうとすると、各社の決算書に細かく目を通さないといけないですが、Geminiだとインプット情報から必要な情報を提示してくれるので、非常に便利ですね。

5. 記事のコンセプトを決める

各社の決算書の内容をまとめて提示してくれることが分かったので、ここから記事を作成していきます。しかし、私は自動車業界に詳しくないことと、決算書を読み解いたわけではないので、どのような記事を書けば良いか思いつきませんでした。そこで、まずは記事のコンセプトをGeminiに考えてもらいました。

ここまでの分析結果を記事にしたいです。まずは、記事のコンセプトを検討してください。

これまでの分析結果を記事にするにあたって、下記の3つのコンセプトを提案します。

コンセプト1: 100年に一度の大変革期!自動車業界の覇権を握るのは誰か?

読者ターゲット:
- 自動車業界の最新動向に関心のあるビジネスパーソン
- 自動車関連企業の従業員
- 自動車の購入を検討している一般消費者

記事のポイント:
- BYD、トヨタ、テスラという異なるバックグラウンドを持つ3社の戦略・業績比較を通して、自動車業界の現状と未来を描き出す。
- 電動化、ソフトウェア化、グローバル競争激化といったキーワードを軸に、業界のダイナミズムを伝える。
- 各社の強みと課題を分析し、今後の覇権争いを展望する。
- 図表を効果的に活用し、視覚的に分かりやすく情報を伝える。

想定される見出し例:
- BYD vs トヨタ vs テスラ:自動車業界の覇権を握るのは誰か?
- 100年に一度の大変革期!自動車業界を席巻する3つのメガトレンド
- 「製造業」から「テック企業」へ:自動車メーカーが生き残るための条件
- EVシフトだけじゃない!次世代自動車を制するカギは「ソフトウェア」と「サービス」


コンセプト2: BYD、トヨタ、テスラ徹底比較!3社から読み解く次世代モビリティの未来

読者ターゲット:
- EVや次世代モビリティに関心のある一般消費者
- 自動車業界への投資を検討している投資家
- 自動車関連企業で働くエンジニアや研究者

記事のポイント:
- 3社の事業戦略、技術戦略、財務状況を多角的に分析し、それぞれの個性と魅力を浮き彫りにする。
- 各社のEVの特徴、自動運転技術の開発状況、バッテリー技術などを分かりやすく解説する。
- 3社の取り組みを通して、次世代モビリティの未来像を提示する。
- 写真やイラストを効果的に活用し、読者の興味関心を惹きつける。

想定される見出し例:
- BYD、トヨタ、テスラ:次世代モビリティを牽引する3社の戦略を徹底比較
- EV、自動運転、バッテリー…3社が描く次世代モビリティの未来予想図
- 投資家が注目する自動車メーカーは?3社の財務状況を徹底分析
- 「中国の雄」BYDの躍進、「世界のトヨタ」の挑戦、「イノベーター」テスラ:それぞれの強みと戦略


コンセプト3: テスラ「一人勝ち」は終わる?中国BYDと日本トヨタの猛追!激化するEV覇権争い

読者ターゲット:
- EV市場の動向に関心のあるビジネスパーソン
- 中国市場や日本市場の動向に関心のある投資家
- 世界の自動車業界の勢力図の変化に関心のある読者

記事のポイント:
- Teslaの「一人勝ち」状態から、BYD、トヨタの追い上げにより、EV市場の競争が激化している現状をレポートする。
- 中国NEV市場の成長とBYDの躍進、トヨタの巻き返し戦略などを分析する。
- 米中対立、サプライチェーン問題など、EV覇権争いを左右する地政学リスクにも触れる。

想定される見出し例:
- テスラ「一人勝ち」は終わる?中国BYDと日本トヨタの猛追!
- 激化するEV覇権争い:3社の戦略と勝算を徹底分析
- 中国NEV市場が世界を席巻!テスラにとって最大の脅威となるか?
- トヨタの逆襲が始まる!「全方位戦略」でEV覇権奪取を狙う


どのコンセプトを選ぶかは、ターゲット読者や伝えたいメッセージによって異なります。

例えば、幅広い読者に向けて自動車業界の大きな変化を伝えたい場合はコンセプト1、EVや次世代モビリティに関心のある読者に向けて3社の魅力を比較したい場合はコンセプト2、Teslaの優位性が揺るぎ始めている現状を強調したい場合はコンセプト3が適しているでしょう。

コンセプトを3つ提示してくれました。また、各コンセプトで読者のペルソナや記事のポイントを出力してくれているので、どのコンセプトが自分の書きたい記事に近いかの理解が進みますね。

6. 指定したコンセプトで記事を執筆してもらう

今回は、コンセプト3で記事を執筆してもらいました。生成された記事は長いので、別記事として以下にまとめました。

記事の内容は、決算書の情報だけでなく、そこから得られるインサイトも含まれているので、現在の自動車業界の動向がよく分かる記事になっています。ただ決算書を見ているだけでは得られないインサイトが記事の形で分かりやすく表示される点が素晴らしいと思いました。

まとめ

コンテンツマージの威力は痛感したでしょうか。
今回は、記事の形で出力しましたが、他の形で出力することで様々なメリットを得られるでしょう。例えば、参考書を一冊丸々読み込ませて、そこから問題を作成してもらうと、参考書の内容の理解が進むと思います。決算書ならば、そこから株主総会でのスピーチ内容を検討してもらうこともできるでしょう。
考え方次第で様々な利便性を得られるので、ぜひ一度試してみてください。


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