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[トピック]悲報!少子化対策はすでに手遅れ

こんにちは!先日、ちょっとしたことで少子化関連のツィートがバズりましたので、今日は少子化 がすでに手遅れということについて書いていこうと思います。人口動態の統計上、女性・母親の母数中心に書いてますが、これは人口統計の基本中の基本ですので「女性ばかりに押し付けるな」とか斜め上の批判はやめてくださいね。人口動態の統計・将来予測は男性はどんだけ居てもシシャモのオスなみに無意味です。( そう言えば、シシャモのオスってどうなってるんですかね?食べてるんでしょうか) 。

出生数80万割れの衝撃。焦る政府

今回のバズった経緯にもなりますが、少子化対策は手遅れです。みなさんもご存知の通り、出生率はここ10年1.3-1.4程度になります。これは1人の女性が一生の間に何人の子供を出産してるかの数字になりますが、例えば1.4ということは1人の女性が1.4人を出産してることになります。当然、人口は女性だけでなく男性もいるので、1.4人では足りず自然死も含めて一般的には2.07に達しないと人口維持できないと言われています。

日本の出生数は急激に減少しており、元々2030年で予測されてた出生数80万割れが8年も前倒しで2022年に達成してしまったことは、衝撃を与えたニュースです。

これに焦ったのか、政府は「異次元の少子化対策」と銘打って、今まで無関心だった少子化に急にやる気を出すようになりました。少子化対策をすること自体は当然必要なのですが、ここで茂木幹事長がこの10年が最後のチャンスと発言したことでもうツッコミをくらいます。

最後のチャンスはとっくに終わってた

出生数を決めるのは出生率だけではありません。人口動態の統計的には母親の母数が非常に重要な数字になってきます。下記図の通り、日本の人口構成は徐々に縮小していくのは明らかなのですが、実は最後のチャンスはありました。それが緑の丸で囲った、団塊ジュニアとも第2次ベビーブーマーとも呼ばれる世代ですが、この世代の出産適齢期の最終局面であった2003年〜2013年くらいがほんとのラストチャンスでした。ただ、不幸なことにこの世代をバブル崩壊や就職氷河期が襲ってしまい、色々な理由が重なり出生率が2005年は最低の1.26を記録します。結論から言えば、何がなんでもこの世代を救済し、せめて出生率を1.5程度に維持する必要があったでしょう。この世代(氷河期世代)を見捨てた時点で、詰んでると言っても過言ではありません。

引用 : https://jp.gdfreak.com/
(この図はこの後の全ての数字のベースになります)

それでもこの世代は母数が多いので、1.26という低い出生率でもある程度の出産数を維持することはできました。下の青丸のように、本当は出生率的には人口が急落するような数字でも、母数の多さから出産数は緩やかな減少に維持されてました(政治家はこれに油断・甘えてたわけです)。出生率の低さからくる少子化の崖の問題が覆い隠されてしまいました。本当はこの青丸にもう一つ山を築かなければならなかったと言われてます

引用:少子化白書2022

タイミング悪く、出産適齢期がすぎた2013年以降のアベノミクスあたりから1.4に出生率が復活します。正直、1.4でも低すぎる数字には変わりないのですが、試しにこれを45-49歳の479万人の母数に当てはめると、なんと67万人の差が生まれます。1.5であれば115万も違うので、この世代に対する少子化対策は人口維持の観点から難易度が最も低かったのは間違いないでしょう。ここが本当にラストチャンスでした。

479 * 1.26 = 603万
479 * 1.4 = 670万 
479 * 1.5 = 718万

2020年に入って急に出生数が減少してきたのは出生率が回復しない中、団塊ジュニア世代の出産適齢期が完全に終わり、少子化世代が出産適齢期に突入したためでしょう(下の緑丸)。2010年台の出生数の減少が緩やかだったのは、団塊ジュニア世代の母数と40歳前後でも出産を続けてくれたおかげであったとも言えます。

引用:少子化白書2022

人口回復するには脅威の出生率が必要

さて、茂木幹事長は今が10年のラストチャンスだと意気込んでいるようですが、2021年の出生率はコロナの影響もあり下落して1.3でした。仮に今の出産適齢期の世代を30歳から34歳とすると322万人になります。先程の団塊ジュ
ニア世代(45-49歳)の479万人と比べると157万人も少ないです。

引用 : https://jp.gdfreak.com/

団塊のジュニア世代(45-49歳)は実際には出生率のバラツキもあったと思うので、男女トータルで600万(1.26)-650万人(1.35)ほどの出生数となったと思います(出生率1.3程度)。これを現代の30歳-34歳の世代が達成しようとすると出生率1.87-2.01の驚異の出生率が必要になるわけです(下方計算参照)。 当然の話になりますが、人口維持(緩やかに減少しつつもある程度維持)の観点からすれば団塊のジュニア世代の時に頑張って出生率を1.5に引き上げ今の出生率を1.6あたりを目指した方が遥かに簡単なのはいうまでもありません(計算は再帰計算になってめんどうなので省きますが今頑張るより昔頑張った方が楽だよねってことです)この計算からもいかに女性の母数が減ったあとに少子化対策しても人口が回復しない難しさがわかると思います。人口規模を維持(緩やかに減少)することすら2023年から出生率が1.9に回復するウルトラCが必要になります。

今の30-34歳の女性の出生率ごとの出産人数(男女合算)

322 * 1.3 = 405万人
322 * 1.4 = 450万人 
322 * 1.5 = 483万人 
322 * 1.87 = 602万人 
322 * 2.01 = 650万人

さて、2022年時点で0歳から4歳の乳幼児世代が445万人、5歳から9歳までの小学生世代が513万人なわけですが、すでにこの世代の時点で人口は大きく減っています。ですが、すでに予測される女性の母数(将来の母親)の数字を元にこれらの人口を維持するには、445万人の出生数を維持するにも将来的には出生率1.65程度必要、513万人の場合は1.95程度の出生率を目指さなければなりません。逆に今の出生率の1.3のままであれば、344万人まで減少することになり、シンプルに1年に生まれる子供の数は68万人でしょう。母数が少ないところに低出生率を掛け合わせるわけですから、人口減少は今までのような緩やかな減少ではなく、崖のような減少になるはずです。

引用 : やす研究所

なぜここまで放置されていたか?

ここではあまり深く触れませんが、厚生労働省の機関に人口問題研究所という機関があります。ここでは将来の人口予測の統計や社会保障の計算などを行なってるのですが、その計算の元となる出生率の予測がガバガバだったということは指摘しなければなりません。2002年くらいになるとようやく現実を直視し始めたのですが、少なくとも97年くらいまでは楽観すぎる出生率ののもと将来の人口や社会保障について政治家に対して「問題ないですよ」というレポートになってたと思います。僕はまだ小学生くらいだったので実際はどうだったかは知りません。まぁ、真面目に出生率を出してしまうと人口や社会保障の将来が酷い数字になってしまうので、ここを楽観的に捏造した方が当時の政治家は遥かにやりやすかったでしょう。出生率を0.1いじるだけで将来の人口や社会保障の数字の見た目は劇的に良くなるので、弄りやすい数字とも言えます。増税や負担増をお願いするよりここを0.1改善すれば解決するわけですから、そりゃ人口問題研究所に色々プレッシャーかけた方が楽だよなと勘繰ってしまいます。

ちなみに、この人口問題研究所は2017年にも同じミスをしてます。一応、ミスったのは中位推計だったわけですが、中位ってことは社会保障などの計算のベースはこちらだったんじゃないでしょうか?(最も悲観的な低位推計通りと言われてます)

まとめ

このことから、人口や出生数を反転していくことはほぼ不可能と言えます。10年前に対策を打つのと、今対策を打つのでは難易度は何倍も違ってくるのがわかるはずです。10年前の出生率は1.3程で団塊ジュニア世代の出生数は600万-650万ほどと予想されます。今、10年前と同じ出生数を維持するには1.9必要。それだったら10年前に1.5に引き上げる努力をする方が遥かに簡単だったわけです。何度も書きますが、団塊ジュニア・氷河期世代を見捨てた時点で詰んでます。

それでも、今後は出生率1.8-1.9程度を今後10年で目指さなければ、人口の縮小再生産にループに入っていくのは間違いありません。なので、岸田首相や茂木幹事長が急に少子化にやる気になったことを反対はしませんが、遅きに失したというのは間違い無いでしょう。まぁ、どうせ予算で揉めて少子化対策なんてできないと思いますが、その辺りは今後のノートで書いていこうと思います。

ちなみに、移民は置いておいて、人口減ってもいいじゃん?みたいな反論があるかもしれませんが、1国のGDPは生産年齢人口 * 1人あたりGDPで定義されるので、今の国力を維持するには1人あたりの生産性を劇的に増やさないと維持できないというところも付け加えておきます。今日は長くなるのでここには触れません。

最後に、内閣府から出てる少子化白書はよくできており、ここに少子化の原因の答えがほぼ詰まっているような気がします。僕は2005年前後にこの白書を結構よく読んでましたが、その時からこのレポートの作成者は少子化には危機感を持っていたと記憶してます。ですが、政治家の耳には届かなかったかもしれませんね。おそらく同じ人口問題研究所が関わってるかと思います。少子化に興味ある方はぜひ1読して見てはいかがでしょうか?

このノートがきっかけで少しでもみなさんに少子化問題に興味を持ってもらえたらいいなと思うとともに、ここまで少子化に焦点が当たったのは初めてだと思うので、少子化対策をしない政治家には退場してもらいましょう。

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