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退き際と生え際

“氷の皇帝”

我が青春のPRIDEチャンピオン “氷の皇帝” エメリヤーエンコ・ヒョードルが、ロシアの格闘技団体Bellatorのヘビー級グランプリの決勝戦でライアン・ベイダーにKO負けを喫した。試合時間僅か35秒だった。

悲しい事だが、悲しい事に慣れてしまった事も悲しい。

ヒョードルは2000年〜2010年まで無敗だった。PRIDEではミルコもノゲイラも、Affliction ではシルビアもアルロフスキーも倒した。いずれも当時のヘビー級トップコンテンダーだ。

ヒョードルはその後Strikeforceに渡って、ファブリシオ・ヴェウドゥムに負けた。その後3連敗。関連誌はこぞって『落日の皇帝』と書きたてた。

落日から8年。

一階級下の王者・ベイダーのパンチが、見えていないようだった。

42歳。

なんでそこまでして戦うのか分からない。どうも悪い奴に絡まれてお金が無いという話を聞いたが…

戦績も身体もボロボロになっても、ヒョードルはまだ、引退はしていない。


“同い年の横綱”

稀勢の里は引退した。

特別相撲が好きなわけじゃないが、いつもほっぺが赤くてコロコロしててるし、同い年(この歳のお相撲さんは“花のロクイチ組”というらしい)なので頑張ってほしいと思っていた。

大怪我を押して強行出場したのがたたった。貴乃花の引退時がダブる。


引退した稀勢の里、引退しないヒョードル。


“嵐”

そんな事を思っていたら嵐が2020年で活動休止するらしい。記者が「無責任」という言葉を使って叩かれているが、当然だと思う。

何かの熱心なファンになった事はないが、無責任だなんて、そんな事を思っているファンはいないだろう。

「応援している方のために…」というのはもちろんそうだし、応援してる人がいるからこそ成り立っているのは紛れもない事実だが、それが全てではない。

結局のところ突き詰めると全部自分の為にやっている。それは自分の人生だから。それを応援したい人がする。これが基本構造のはずだ。

ちゃんとしたその人のファンはその事を理解していると思う。よほどファンの気持ちを踏み躙る行為は別だが、自分の思い通りに動かないからと文句を言うのはお門違いだ。

応援する側は応援するし、応援される側はそれに応えようと努力する。そして応援している対象の幸せが前提でファンの幸せもあると思う。

ヒョードルも稀勢の里も嵐も、退き際も自分で決める権利がある。


“ドドん安田”

ところで、お坊さん漫才でお馴染みドドんのツッコミ安田の頭髪は、めっきりと冬めいてしまった。

今まで彼の額の前線を守備していたはずの兵は随分と後退しており、本来見えていないはずの面積の額が露出している。

僕は


「君の今の生え際はここだよ」


と触って教えてあげた。

しかし当の安田本人は認めない。


「違います。もっと前です。」


そんな事があるのか?

実際に生えていないのに、もっと前から生えているというのはもはや虚言ではないのか?

いや、違う。


生え際は本人次第なのだ。


登山家がその山に登頂成功したかどうかは、結局のところその本人のその宣言次第らしい。

もしかしたら生え際も同じなのかもしれない。例え生えていなくても、そこが生え際だと宣言すればもうそこが生え際なのではないだろうか。

稀勢の里もヒョードルも嵐も退き際を選ぶ権利があるし、安田には生え際を制定する権利があるのだ。



アスリートもアイドルも長くできる仕事じゃない。


漫才師はずっとできる。



ドドんもヤーレンズも、おじいちゃんになったらもっと面白い。

もし僕の生え際が、

宣言するのも虚しくなるくらい交代しても、

それでも応援してもらえるような、

にこにこおじいちゃん漫才師に、

僕はなりたい。





コーヒーが飲みたいです。