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【本】闇に香る嘘

久しぶりに本の話。

先日『伊集院光とらじおと』でも紹介させていただいた、ミステリー小説『闇に香る嘘』が面白かった。

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装丁も最高にかっこいい。

ミステリー自体はそんなに好きなジャンルではなく、大極宮に松本清張を軽くさらった程度なんていう僕でものめり込む傑作は、第60回(2014年度)江戸川乱歩賞受賞作品。

満場一致で今作を選んだ選考委員会。その中で有栖川有栖先生は「相対評価でなく、絶対評価でA」と言い切ったという。

読み終わった後、「これでもSが付かないなんて有栖川有栖ともなると辛口だな」と思ってしまった。まあ、Aの上にSがあるのかどうかは知らないが。

ある日主人公は、中国残留孤児で後に帰国した兄が本当の兄ではないかもしれないという疑念に駆られ、調査を始めるのだが…というのが超絶大雑把なあらすじ。

「中国残留孤児」という重難しく思えるテーマを、綿密な取材でしっかり描ききっているのもポイント。

本題に入る前に、コンテナ船から密入国者の死体の山が発見されるという関係のないショッキングなシーンから始まるが、それも後々全部効いてくる。

とにかく与えられる情報量が多く、どれが伏線でどれが伏線じゃないのかこちらには判断できない。

まあ、最終的に全部回収して、すっきり終わるのでお楽しみに。

詳しくはradikoで9/3(木) TBSラジオ『伊集院光とらじおと』の"ぷれぜんと"のコーナーを聴いていただきたい。

作者の下村淳史先生は、この作品で江戸川乱歩賞への挑戦は実に9回目。執念が実りついに受賞に至ったそうだ。

コンビ結成9年目にこの執念の傑作に出会ったのも、偶然じゃなく伏線だと思いたい。



コーヒーが飲みたいです。