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チャールズ国王の戴冠式で頑張っていた馬たちまとめ

こんにちは。Pacallaという馬のWEBメディアで「Pacalla馬図鑑」 など連載をしている一介のライターです。

先日、英チャールズ国王の戴冠式がロンドンのウエストミンスター寺院で行われました。ニュース映像などを見た方は、馬たちの活躍も目についたのではないでしょうか。なんと200頭を超える馬たちが式典のために頑張ったのだそう...!!

ライブ中継を見たり、現地のニュースをざっと調べたり、家にあった本を確認したレベルなので、正確さに少々欠けるかもしれませんが、私が把握できた範囲で今回の戴冠式で活躍していた馬たちをまとめてみました。

国王たちを乗せた馬車を引く8頭の白い馬

チャールズ国王とカミラ王妃は、故エリザベス女王の即位60年を記念して作られた馬車「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」に乗って、バッキンガム宮殿からウェストミンスター寺院へ向かうパレードを行いました。式典後は、戴冠式で代々使われてきた黄金の馬車「ゴールド・ステート・コーチ」に乗り換えて復路を戻ったそうです。(ちなみに前者の馬車は最新式で快適、後者の馬車は乗り心地が最悪らしい)。

これら8頭立ての馬車を引いた芦毛の馬たちのことを「ウィンザー・グレー」といいます。ウィンザー・グレーというのは品種ではなく、体格や色などを考慮して選抜された彼らのチーム名のようなものです。この芦毛たちはイギリス王室の様々な儀式において、馬車を牽引するために使われています。儀式以外では馬車競技に王室代表として出場したりもしているのだそう。

23.06.30追記)白馬なのになぜホワイトじゃなくてグレーなの?と思う方もいるかもしれませんが、この馬たちはもともと灰色っぽい毛色で、歳を重ねると全体的に白っぽくなるタイプ(それが芦毛)の馬だからです。ちなみに、生まれたときから白い馬は芦毛ではなく白毛といいます。

今回の戴冠式で馬車を引いたのはアイコン、シャドウ、ミルフォードヘブン、ニューアーク、エコー、ナイツブリッジ、メグ、ティロンの8頭。普段は英国王室が所有するロイヤル・ミューズ厩舎で暮らしています。重さが4トンもある王室で最重量のゴールド・ステート・コーチを引いた8頭...お疲れ様でした...!!
(なお、イギリス国民のなかでは青いタテガミの飾りには賛否あった模様...)

そういえばですが、今回の馬車は一般的な座ってるタイプの御者がいなかったですね。馬に乗ってる人が、隣の空馬(って、競馬じゃなくても言うのかな?)もコントロールしていました。勝手な予想ですが、座ってしまうと国王夫妻にお尻向ける形になるからでしょうか。

馬車を警護する近衛騎兵連隊の馬たち

360年ほど前、チャールズ2世の警護のために発足したイギリス陸軍の近衛騎兵連隊。前述の馬車の前後について、国王夫妻の警護をしていた馬たちです。今回の式典にあたって、NEWS23で騎兵隊を密着取材していました。その情報によれば、騎兵隊の馬たちは仕事がない長期のお休みはロンドン郊外の牧場におり、戴冠式に選ばれた馬はロンドンのハイドパーク兵舎へ移動。毛刈りなど身なりを整えて、100日に及ぶ様々な調教を受けて当日に臨むということでした。調馬索での調教をはじめ、街に出て隊列を組んで行進する練習、にぎやかな場所や車の音に慣れる練習なども行う様子が配信されていました。てっきり普段からそういったことに慣れている馬が集められるのかと思っていましたが、やはり70年ぶりの式典とあって訓練はなかなか大変なようです。隊列を組んでの行進なんて人間でも難しそうですよね…立派です!

ちなみに近衛騎兵連隊の馬に、品種の制限はありません。ただ、一般には黒鹿毛か青毛が選ばれるとのこと(例外あり)。

※近衛騎兵連隊の中にはいろんな隊があって、それぞれの騎兵隊の役割などもそれぞれ違うようなのですが、しっかり調べるにはちょっと時間が必要そうなので、今回はかなりざっくりな説明になっています。すみません!

大砲を運ぶ馬も!王立騎馬砲兵隊

ウェストミンスター寺院でチャールズ国王の頭に王冠が置かれた瞬間、王立騎馬砲兵隊がホース・ガーズ・パレードで、6門一斉射撃を行いました。大砲を運ぶのはアイリッシュ・ドラフトという、前述の騎兵連隊の馬たちよりも体の大きな馬(体重750kg前後)です。大砲って1.5トンもあるそうで、パワーのある馬が必要なんですね。日本にいるとパレードでも大砲なんて見ることがないので、そんな大きなものだとは思っていませんでした...(恥)

大砲の音を近くで聞くことがある役割ですから、アイリッシュ・ドラフトはすごく温厚で落ち着いた馬なんですが、実はサラブレッド(←繊細さん)の血を引いているというのも面白いなと思いました。以前25%サラブレッドの血が入っているばん馬に会ったことがあるのですが、その子にはサラブレットの繊細な気性が見え隠れしていて、個人的にそれがかなり印象に残っていたため、これは結構意外でした。(もちろん個体差もあると思うし、アイリッシュ・ドラフトにどの程度サラの血が入っているかにもよると思うのですが)

農耕に適すように改良されてきたアイリッシュ・ドラフト。現在は非常に数が少なくなっているといいますから、このような活躍の場が確保されているのは嬉しいですね。

アイリッシュ・ドラフトの種牡馬。がたいがいいけれど確かにサラブレッド感はある気がする(Losmurfs at English Wikipedia, CC BY 2.5

また、この隊に所属できる馬の毛色は鹿毛、青鹿毛、青毛のみとされています。競馬や乗馬が好きな方はご存じだと思いますが、青毛は真っ黒な馬のこと。そのため国葬の際に起用されるのは青毛です。ただアイリッシュ・ドラフトの青毛はとても珍しいそうで、下のBBCニュースの動画でもほとんどの馬が鹿毛です。なお、砲兵隊(人間)の半分は女性だそう。これもちょっと意外かも!?

※ホース・ガーズ・パレードはイギリス王室の様々な儀式が行われる場所

200頭の馬を引っ張る!ドラムホース

近衛騎兵連隊の中には楽器を演奏する音楽隊も。その先頭を務めるのが2頭のドラムホースです。ドラムホースのドラムとはケトルドラム(小さめのティンパニ)のこと。体の左右にケトルドラムを装着し、奏者を乗せます。200頭の馬を引っ張って行進する、大変重要な役割を担いました。

今回の式典の写真ではありませんが…。ケトルドラムがよく映っている写真。

LIVE中継でドラムホースを見た瞬間、私の好きな馬の品種トップ3に入るクライズデールでは?!と心躍ったのですが、下記のBBCニュースによるとシャイヤーだったようです。(シャイヤーも好きですよ!)

動画の向かって右側のドラムホースは、エドという名のシャイヤーなんですが、ウェールズの田舎町の農場で育てられたそうで。そんな田舎育ちの馬が戴冠式の行列の中心を飾ることになった!ということで話題になっていました。

クライズデールとシャイヤーだと、シャイヤーの方がちょっと大きいイメージで、1トン前後といわれています。クライズデールにエドのような鹿毛が多いことと、エドの体重が800kgということでクライズデールに近い体格だったので間違えてしまいました…。(ちなみにドラムホースはいつもシャイヤーが担うというわけではなく、時にクライズデールだったり、はたまた他の品種だったり、ミックスだったりします)

なお、クライズデール(とシャイヤー)について知りたい方は下記の記事もご覧くださいませ。


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戴冠式で頑張っていた馬たちまとめ…いかがでしたか?

馬が使用されることが少なくなった現代でも、高い乗馬技術を持ち続けるイギリス騎兵。実にカッコいいパレードでしたね!

一部、観客列に物見した馬が突っ込んでしまうトラブルもあったようですが、そこはやはり生き物なので。どんなにトレーニングを積んでいても避けられない場面はあるでしょう...。幸いにも馬にはケガがなく、人間も軽症だったようでほっとしました。

ほんとうに馬も人も大変な式典だったと思います。全ての人馬に敬意を!ですね。

例のごとく、また追記するかもしれませんが、今日のところはおしまいです。ではまた!

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