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ノンフィクション いい年こいてガチ誘拐された話

初めてのnoteだけど、私の人生のなかでもトップ3に入る事件を話していこうと思います・・・。

私は、病院の受付をやっていて、その日は水曜日で半日で仕事は終わりでした。帰りにスーパーに寄って、スーパーの中にあるドラッグストアで、妊娠検査薬を買って帰ろうとしていました。

中出しはしていなかったんですが、生理が遅れていたので、念の為調べてみようと。この時私は27歳といういいお年頃。彼氏とは結婚する約束をしていたので「できてたら順番違っちゃうな~」って感じで、ふわふわ幸せな気持ちでいました。

さぁ妊娠検査薬を買って、いざ車に乗ろうとしたら

「ガソリンもれてるよ」

とおじさんが話しかけてきました。確かに、私の車の下にガソリンがこぼれたようなあとがある・・・。まぁおじさんが撒いたんだけど。

そのおじさんは、大体50歳過ぎくらいかなぁ?特にこれといって特徴もない普通のおじさん。そのおじさんは、さらにこう続けます。

「危ないよ!!どうにかしないと!!」
「爆発するよ」
「早くどっか動かさないと!!」

ちょっと怒ったような口調で、私を急かすように・・・。

私は「えっ!!どうしよう・・・怖い!!」「爆発?運転できない・・・」そんなことを言って、パニくってました。すると、そのおじさんはこう言いました。

「僕の知り合いの車屋がそこにあるから、持っていってあげるよ」

確かに、すぐ近くに車屋があります。車なら30秒くらいでしょうか?そこまで、ガソリンのもれている車を運転して持っていってくれるって言うんです。私を乗せて・・・。

わかってます。わかってます。バカです。私、トロイんです。

落ち着いて考えれば、なぜおじさんは「爆発する!!危ない!!」って言ってる、その車に平気で乗れるのか?自分が怒り口調になる程の危険な車に。

そして、なぜ私は見ず知らずの初めて会ったおじさんを、そんなにも信用しちゃってるのか?いくら私がトロイと言っても程があります。

でもね、パニックって本当に判断能力を鈍らせるんです。それでも私は鈍りすぎでしょうか?その時は「爆発するかもしれないことを教えてくれた親切なおじさん」としか思っていませんでした。

さて、私はタイトル通り、そのおじさんに誘拐されてしまいます。

私の車をおじさんが運転し、助手席に私が乗って、車屋に向かいました。親切なそのおじさんに「ありがとうございます」なんて言っちゃって。

「さぁ車屋だぁ。爆発しなくて良かった~」と胸を撫で下ろしたのも束の間・・・そのまま車屋を通過。

「えっ?車屋あそこですけど・・・」

そう言ってる私を無視して、おじさんは真正面を向き無言で車を走らせます。そこでやっと気付きます。

「やばい・・・。やばいんじゃない?これ・・・」と。

「そうだよ。よく考えれば、変な出来事じゃん。このおじさん何なんだよ・・・。何したいんだよ・・・。怖わいよ・・・」

そんなことを思っても時すでに遅し・・・。おじさんは何十秒か無言を貫いたあと、私に何か液体をかけてきました。15cmくらいの透明のビンに入った液体を私の右上半身に。

そして「それガソリンだから」と私に言うと、ライターを左手に持ち、私の方に手を伸ばし、右手だけで運転し始めました。

「確かにガソリンのニオイ・・・。服に火をつけられたら燃えちゃう・・・怖い・・・怖い・・・どうしよう」

外を見れば、いつも走り慣れた道。
トイレに行きたい時、よくあのコンビニに寄ってた。あそこの工場は友達が働いてる・・・。
そんなことを考えたって、コンビニには行けないし、友達に助けを求めることもできない。

※ここから「おじさん」と言うのは、胸糞悪いので「おやじ」と言います。

私の車は、軽自動車。おやじとの距離も近い。何か下手なことをしたら、服に火をつけられるかもしれない・・・。

おやじはライターで私を脅しながら、こう言いました。

「今日、○○市で強盗してきたから」

私は信じる寄りの半信半疑。何でそのまま鵜呑みにしなかったかというと、このおやじは、そこまで大きい事ができるようには見えないんです。

しかも、○○市で強盗してきたって、○○市からここまで、どんだけ急いで帰ってきたんだ?と・・・。

それに「俺悪いことしてるよな」って、若干思ってる感じがするというか、言うなれば、こういうことに慣れてないというか、そんな感じもしました。
でも怖いのが、無表情ってこと。その無表情が極悪なのか?慣れてなくて緊張しているのか?わからない。
そして口をきいてる内にわかったのは、純粋な日本人じゃなく、日系ブラジル人だということ。

7~8分走ったでしょうか?そのおやじは、またビンを持ち出し、かけようとしてきました。もしくは、かけようとする脅しか?

私は「もうやめてよ!!」と言い、おやじが持ってたビンを奪い、窓を開けて外に投げました。私も自分の行動にびっくりしたのですが、手と口が勝手に動いていました。またガソリンをかけてこようとするおやじに、怖さと同時にムカつきもしたんでしょうね。

普通だったら怒るであろう、その行動に対し、おやじは何を言うでもなくそのまま運転を続けました。この時、さっきまで、10:0だった私とおやじの関係は、9:1くらいになった感じがしました。

さらに何分か走るんですが、何せ田舎なので信号があまりありません。あったとしても青信号。車が止まる時がないから逃げるチャンスがないんです。だから田舎って嫌いなんだよな。

とにかくチャンスをうかがいながらも、私はこんな事を思っていました。

「どこに向かってる?この先何にもないじゃん」
「早く逃げないと、どこか目的地に着いた時に何される?」
「殺される?犯される?」
「犯されて殺される?」
「トロイなぁ・・・」
「私、死ぬ時までトロイんだ。みんなに笑われるかな」
「そういえば、さっき妊娠検査薬買ったんだっけ。犯されて殺された時に、バックから妊娠検査薬出てきたら・・・マヌケだな」
「彼氏との幸せな妊娠検査薬・・・。初めて買った妊娠検査薬・・・。ついさっきまで呑気に幸せだったな・・・」

そんなことを思っていると、四つ角に「止まれ」の看板。少し速度をゆるめたおやじ。私は「もうここしかない」と思い、まだ走っている車のドアを開けて飛び降りました。

おやじはびっくりして、「おいっ!!」と運転しながら左手で私の腕を掴んできましたが、降りかけている私を助手席に戻すことはできず。

私は、何とか着地に成功しましたが、腰が抜けてしまっているのか?足がカクカクしていて思うように走れません。地面に足がついてるかもわからない感覚で、必死に走りました。「誰かに助けを求めなきゃ!!」と。

でも、さすが田舎。すぐに人が見当たりません。何十メートルか走ると、やっと1人男性が立っていました。私はその人に飛びつき

「助けてください!!誘拐されました!!助けてください!!」

と震える声で言っていました。この時、恐怖でいっぱいなのに、すごく必死なのに、頭の中のもう1人の私は・・・

「『助けてください!!』って。『助けてください』って何なんだよ。2時間ドラマのセリフみたいじゃん・・・。何だ今の言い方・・・何この私。ドラマかよ・・・」

こんな風に思っていました。

2時間ドラマでよく聞く「嘘くさいセリフ」と「嘘くさい演技」
私はその嘘くさいセリフを、嘘くさい演技をしている役者の様に言っていました。大根役者だなぁと思ってたあの人たちは大根役者じゃありませんでした。みなさん、あの方たちは名演技です(笑)

そして、私が嘘くさいセリフを言ってる最中に、私の車が横を通りました。

「あの車!!あの車私のです!!私、誘拐されたんです!!」

私は車を指差し、必死に訴えました。おやじは、私が男性に助けを求めている姿を見ると、車のスピードをあげて走り去りました。

私が助けを求めた男性は仕事を終え、駐車場に向かうところでした。「とりあえず車に乗ろう」と言われ、車に乗ると、すぐに警察を呼んでくれました。車の中で、初めてちゃんと男性の顔を見ることができたのですが、30代半ばくらいの真面目でもやんちゃでもない感じのお兄さんでした。

私は、安心した気持ちと怖さが混ざっているような、よくわからない気持ちで警察を待っていました。警察を待つ車の中で何を話したか?あまり覚えていないのですが、誘拐された経緯を話した気がします。

しばらくすると、パトカーがやってきて、警察に事の経緯を話しました。何だか警察は面倒くさそうで「大丈夫だったか?」というような心配をしてくれる人は1人もいませんでした。そういうもんなんでしょうかね。
「いい年ぶっこいて何やってるんだよ」とでも思っていたのかもしれません。

経緯を話すと、私はパトカーに乗って警察署に行かなければなりません。まだこの出来事で、恐怖いっぱいな私がパトカーに乗り込もうとすると、「この人に住所とか聞かなくていいの?」と警察の人が少し怒り口調で言いました。

「そっか。こういうタイミングで聞くんだ・・・」と思う反面、「こんな状況で『住所と名前聞かないと』なんて思う余裕なんてねぇんだよ」と思いました。警察からすれば当たり前のことかもしれないけど、こんなことになってるの初めてなんだから・・・。メモ帳やペンを持っていないので、警察の人から借りてメモしました。

そしてパトカーに乗って警察署へ向かうんですが、そこでも何を話したかはほぼ覚えていません。話していないかもしれないです。なぜ記憶がないのかは、理由があるので別のnoteにまとめます。

警察署に着き、色々と聞かれました。そして犯人のおやじが言ってた「○○市で強盗」なんてものは、その日になかったということや、おやじは金品狙いというより体目的だっただろうってこと。

体目的って・・・マジできもいわぁ。その言葉自体、気持ち悪い。「ヤろうとしてた可能性が高い」って言い方の方が、まだ心の傷も少し軽くなる気がする。

私はキャミにパーカーにジーンズという服装だったんですが、とりあえず証拠品として、主に液体がかかっているパーカーを置いていくことになりました。

そして、私の車もそこまで遠くない場所に乗り捨てられていたことがわかったのですが、車も証拠品として、警察署で保管することになりました。

警察署を出る頃には、外も暗くなっていて、仕事を終えた彼氏に迎えに来てもらい家に帰りました。

数日後、警察から連絡がきました。乗り捨てられた車は、鍵が抜かれていたこと。その鍵も無理やり鍵を抜こうとした跡があったこと。液体は本当にガソリンだったこと。助手席のシートの右側が燃えた跡があったことなどを教えてくれました。

やっぱり、そっち側の男でした。悪い事あんまりしたことない奴。だせぇ奴。そのだせぇ奴に引っかかってる私のことは置いといて(笑)

悪いことをあんましたことがない奴が頑張っちゃったから、焦っちゃって、鍵なんて回せばすぐ抜けるのものを、引っこ抜こうとしてるし、シートにこぼれた少量のガソリンで車か?シートか?何か燃やそうとしてるし。マヌケだわぁ~。私に言われたくないかもだけど(笑)

他に取られているものはなかったんですが、キーケースには、家の鍵もついて、もちろんそれも持ってかれてるので、万が一、車検証などを見られていたら住所がバレている可能性もあると思い、家の鍵を替えてもらいました。

そして彼氏は、なるべく私の家に泊まるようにしてくれました。私が「迷惑かけてごめんね」と言うと、彼氏は「怖い思いをしている時に、そばにいてあげられなくてごめんね」と、私がトロくてこうなってしまったことは何も責めず、全く非がないのに謝って、悔やんで、筆不精なくせに手紙まで書いてくれました。

この優しい彼氏が今の旦那なんですが、これ以来、手紙はもらっていません(笑)それだけ旦那にとっても衝撃的だったってことですね。

この文章を読んでいて「トロイ」というフレーズが、何回も登場したかと思うんですが、私は小さい頃から親に「お前はトロイんだから」と言われて育ってきました。

だから何かある度に「私ってやっぱりトロイなぁ~」ってすぐ思っちゃうんです。今回の件は本当に私のトロさが原因なんですけど。

この事件が怖かったのは事実なんですが、それと同じくらいに「私のトロさが原因」ってことに、すごく落ち込むんですよね。自分を責めるというか。

でも、旦那だけは「トロイところも可愛いんじゃん」と肯定してくれます。そんな旦那に出会えたことに感謝しています。

そして犯人のおやじは、まだ捕まっていません。これからも捕まることはないと思います。証拠もなければ事件からもう10年も経っていますし。

とりあえず、死ぬほど怖かったこの事件を通してわかったことは、トロイことさえも可愛いと言ってくれる旦那の優しさ。

そしてそして、最後にオチをつけさせてください。

私の旦那は車屋さんで~~~~~~す!!

車屋さんの彼氏がいるのに、車のことで脅され、車で連れ去られ・・・マヌケだなぁ~。電話してすぐ聞けよ!!私!!

やっぱ私ってトロイんだね~~~~~~~!!
もうね、落ち込むとか言ってるレベルじゃないよね。

もう、これは仕方ないっしょ。持って生まれたものなんだよ(笑)しょんねぇ、しょんねぇ(笑)

バカは死ななきゃ治らない?トロイのも死ななきゃ治らないんだと思う!!それでも、そこを肯定してくれる人がいて良かった~。チャンチャン♪

でも、やっぱり行動に気を付けないと。こんなこともあるからね。今は笑い話にできるけど、マジで危なかったから。


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