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昔愛した男が生きていた―序

※こちらの記事は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のネタバレを含みます。そうは言いつつも筆者は未見です。


「私がエヴァで好きなキャラ、誰だか当ててみてくださいよ~」

過去の私のセリフである。

目も当てられないほどのウザい女とウザいオタクムーヴのハイブリッドだ。

しかし、この質問には模範解答が存在するので、基本的に回答は容易だ。

渚カヲルである。

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私の世代のオタク女の「エヴァの好きなキャラ」の60%ぐらいがこの渚カヲルを指名する。

カヲルくんはイケメンで、物腰柔らかで、とにもかくにも主人公に優しい。かつ、ミステリアスで声が石田彰なのだから完璧である。

だが、私が狂ったのはカヲルなどではなかった。

ともすれば、主人公の碇シンジ?

違う。

あの、有名な綾波レイ? 

惣流(式波)・アスカ・ラングレー?

葛城ミサト? 加地さん?

それらも違う。

じゃあわかった、鈴原トウジだ! ちょっと変わった人だね!

違う違う違う!


私がエヴァンゲリオンで好きなキャラは、この人以外ありえない。

それが

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相田ケンスケである。

ほら見てよこのヴィジュアル!!!!

一億点だろうが!!!!!!

めがね、そばかす、髪型、髪色、体型、色白な肌

ああああああ、もう好きすぎるぞ!!!!

彼は、「最高のキャラデザイン」の頂点なのである。(当社比)

さて、冒頭の

「私がエヴァで好きなキャラ、誰だか当ててみてくださいよ~」

に戻る。

結局、目の前の名前も知らない人は

「え、あのメガネだろ? きみってマイナー好きそうだもん

とあっけなく正解を引き当てたのだった。

そんなもんだよ、現実なんて。


クソみたいな話だが、私は相田ケンスケのどこが好きかいまいち言語化ができない。

なんだろう、強くも無く、弱くもない、だけどどこか特別さのにじむあの感じが「等身大」で好きなのだ。

どっか、エヴァのキャラクター達は人間じみていない。

私は、エヴァンゲリオンの主人公が彼ならば、こんな拗れた話にならなかっただろうとすら思う。

こんな経済効果だって生まれなかったし、きっとこんな社会現象にもならなかった。

それぐらい、相田ケンスケという男はつまらなくて面白くて、やっぱりつまらない。

だから私は彼が好きだ。

特別なようで特別ではなく、やっぱり特別な彼が好きだ。


なれそめを語ろう。

彼と初めてお知り合いになったのは再放送だ。新劇場版「序」が公開される際に放送された。

「うーん、社会現象だし見てみるか」と思って鑑賞したのだ。

私はそこに登場した相田ケンスケに、釘付けになった。

一人戦争ごっこに興じる、オタクの男の子。

それはあまりに神々しく、あまりに痛々しく、あまりに美しかったのだ。

おもわず祈りたくなってしまうほど

無邪気で穢れの無いその姿に、私は心底彼を「好き」になっていた。


別に生涯の伴侶というほどの推しではない。

大きい感情を持つキャラクターならもっといる。

だが、私の根底に確実に相田ケンスケという男の存在は刻まれていた。


しかし――私は彼を死んだとばかり思っていた。


エヴァンゲリオンには触れてこなかった。

どうも聞いた話ではあんな事になっている訳だし、どうせケンスケなんて死んでしまったんだろう。

そうなんだとばかり思っていた。

そうなんだとばかり……。

だけど、違った。

相田ケンスケは生きていた。

大人の姿になって。

あの無邪気な少年はどこか知的かつ行動的な空気をまとい、大人になっていた。


だから、私は近々、彼に会いに行かねばならない。

失恋もしなくてはならない。


どうか私の小さな旅を祈ってほしい。


あの頃、戦争ごっこに興じる少年に祈りを捧げた19歳の女のように。

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