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【参加記】アロハフェスで踊ってみた

学びは教室の中よりも日々の暮らしにこそある。つくづくそう思う。

去年のこの頃だったのかな。種々の理由によって「日々の輝き」が感じられなくなり、沈み続けてなかなか浮上のきっかけがつかめず、息が苦しくてしょうがなかった自分が、なぜかフラダンスの教室に入ろうと思いついた。自分のイメージからすれば最も遠いもの、全く想像もできない感覚に出会いたくて、そうすればきらりと光る新たな何かが見出せるのではないかと、わらにもすがる思いがあったのかもしれない。

どう見ても場違いの自分が、週に1回のレッスンをサボることなく続けていたら、気づかぬうちに体がフラの動き方を受け入れられるようになっていた。照れや違和感しかないが、常におろしていた前髪を思いっきり後ろにまとめ、陰で顔を隠すことを諦め、明るいライトを浴びる舞台にも出てみた。まるでどこかの別人に体が乗っ取られたように全く実感が涌かないが、間違いなく、腰をゆらゆらさせるあの踊りから最も遠い存在なはずの自分が、腰をゆらゆらさせている。

しかし、何かが違う。光るものを感じない。見出せない。なんであろう。

三連休に行われたお台場のアロハフェスのステージにも、出ることになった。話によれば国内で有名どころのフラダンスチームばかりが出場しているとのこと。控室に入ってみると、ハワイアンズのフラガールを連想させるプロ並みの風格を漂わせるチームばかり。ヘアスタイル、化粧、衣装、飾り、すべてが丁寧に精緻に整えられ、舞台に上がるということに対する彼女たちの並みならぬ気合が伝わってきた。

なんでここに自分が混ざっているのか、うまく気持ちの落としどころが見つからないまま、出番となった。先生に言われた「歯を見せて笑うように」ばかりに気を取られ、体が覚えていたはずの振りを途中で忘れてしまい、まさかのミスを連発してしまった。

踊りながら意識がふわふわと飛んでいた。お祭りに遊びに行くついでにちょっとステージに出ているぐらいの意識しか持っていなかった自分。うまく化粧はできないけどほどほどでいいやと、舞台を「軽く」受け止めることで逃げ道を作っていた。真剣にならなくていいという逃げ道、ここは自分の世界ではない、だから失敗してもいいし輝かなくてもいい、という逃げ道を。

結局私は、本気で新たな輝きを見出そうとしていたわけではないと気づいた。輝かなくてもいい、アマチュアとして甘んじられる、平凡でもおろそかでも追及されない「別世界」を求めていただけなのかもしれない。真の成長に向けて脱皮しなければならない苦しみから目をそらし、私は単に執行猶予の期間を延ばそうとしていただけなのかもしれない。

フラダンスの世界へのリスペクトが十分ではなかった自分が恥ずかしい。本気で何かに入り込むのが依然として苦手だが、心に決めた。次の舞台から、私はフラガールになる。
(Y)


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