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僕と槇原敬之の話

僕は音楽を聴くのが一番の趣味だ。邦楽・洋楽問わず様々なアーティストの曲を聴く。ジャンルも特に関係ない。そんな僕が最も敬愛するミュージシャンがいる。それが槇原敬之だ。

僕がマッキーの音楽を聴き始めたのは2011年頃であったと記憶している。当時の僕は小学校5年生。いわゆるサッカー馬鹿であり、サッカー以外には何の趣味もないような男であった。そんな僕がどうして彼の楽曲を聴き始めたのだろうか?おそらくサッカー以外に新しい趣味を見つけたかったのだろう。そこで僕は「音楽を聴く」という趣味を始めたのだった。当時、父親がドライブに行く際によく『"SMILING"~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』を流していた。父は別にマッキーのファンではなかったが、当時の僕は自然とマッキーの曲を覚えていった。曲を自然に覚えていくと、今度は最新のアルバムが聴きたくなる。そこで手に取ったのが『Heart to Heart』というアルバムだ。

『Heart to Heart』が発売された2011年は東日本大震災が発生した年でもある。このアルバムも震災をテーマにした楽曲が数多く収録されている。東日本大震災は小学校5年生の僕に大きな影響を与えた。当たり前の日常がいとも容易く奪われること、僕より何歳も離れた大人たちがパニックになっている姿に恐怖を覚えた。震災で遠い親戚が亡くなったと聞かされる。当時の僕は幼心にもそうした日々に疲弊していったのだろう。そんな僕はこのアルバムに収録されている『Remember My Name』という楽曲に救われたのであった。

中学生になっても僕のマッキー熱は冷めることはなかった。当時はジャニーズやAKB、EXILEグループの最盛期。同級生で槇原敬之を聴いている人なんているはずもなかった。それでも全然かまわなかった。自分だけその良さがわかっていればよかった。

TSUTAYAなどで過去のアルバムをレンタルして一通り聴いた後、僕はライブに行きたいという衝動に駆られた。しかし、当時の僕に一人でライブを観に行くというのはとてつもなくハードルが高いことであった。そんな中、地元にマッキーが来ることを知った。このタイミングを逃せばもう二度と観ることができないと思った。勇気を出して初めて観たコンサートは『Listen To The Music The Live ~うたのお☆も☆て☆な☆し 2014』である。カバーアルバム中心のセットリストであったが、今まで音源でしか聴いたことのないミュージシャンが目の前で歌っていることが非現実的であった。そして生で音楽を聴くという楽しみを知ってしまったのだ。一度ライブに行くと何度も行きたくなるのが人間である。そこで僕はファンクラブに入ることにした。今でもファンクラブの会員証は中学生の頃の写真のままである。そろそろ変えたいと思っている。

高校生になったタイミングで僕はTwitterを始めた。そこで僕はほかのマッキーファンの方と交流するようになる。ライブ会場では何人かのフォロワーの方と直接会う機会があった。そこで僕がとあるマッキーファンの方に言われた「あなたみたいな若い子がマッキーの曲を聴いてくれているのが嬉しくてたまらない。」という言葉が強く印象に残っている。よく本当に良い楽曲は時代を越えて聴き継がれると言うが、マッキーの楽曲もそういった普遍性があるとその時に強く感じた。

高校生の間、僕はマッキー以外のミュージシャンも数多く聴くようになった。しかし、マッキーの楽曲を聴き続けるということは止めず、ライブもツアーの度に訪れていた。『”TIME TRAVELING TOUR” 1st Season』では最前列で観る機会に恵まれた。この日のことを僕は一生忘れないだろう。

大学一年生、平成最後の日を僕は『Design & Reason』ツアーの東京国際フォーラム公演で過ごした。中学生の頃は地元のコンサート会場に行くのもビビっていたのに、今や東京に飛び出してライブを観ている。そして、きっとこれからもそんな日々が続くと思っていた。

あの日、僕はぼんやりとテレビを見ていた。そこにあのやかましいニュース速報の音が鳴り響く。テロップには僕が最も信じたくない言葉があった。彼が二度も同じ過ちをしてしまったことに怒りよりも「どうして?」という感情しか湧いてこなかった。こっちはこれから始めるデビュー30周年をお祝いする気で満々だったのに。事件からしばらくの間、彼の楽曲を聴こうとは思わなかった。

事件から数ヶ月後、僕は雨上がりの道を一人で歩いていた。そこに雲間から徐々に日がさしこむ。手にしていたWALKMANから『太陽』が流れ始めた。その瞬間、今までの思い出が頭の中を駆け巡った。

これからも自分の人生はマッキーの楽曲とともに続いていく。

その時、そんなことを思ったのだった。


僕は去年、20歳の誕生日を迎えた。もう人生の半分近くをマッキーの楽曲と過ごしていることになる。彼のメロディー、詞、声は僕の人生にかけがえのないモノになっている。それは学校の先生や周りの大人からは教えてくれないもっともっと素敵なモノだと思う。サッカーの試合の帰り、つらい受験勉強のとき、大学の通学時間、いつだってマッキーの楽曲とともにあった。何でもない平凡な日常に彼の楽曲がほんの少し彩りを加えてくれたような気がする。今更ファンなんて辞められるはずがないんだ。

先日、高校のときの親友から唐突にLINEが来た。そこには「槇原敬之でおすすめの曲ある?」と書かれていた。彼曰く「Spotifyで適当に曲を流していたらマッキーいいな」と思ったらしい。そんな彼のお気に入りは『林檎の花』らしい。それを聞いた僕はとても嬉しくなった。きっとあの時、ライブ会場で声をかけてくれた方も同じ気持ちであったに違いない。

今月の25日、槇原敬之はオリジナルアルバム『宜候』にて二度目の再出発を切る。"宜候(ようそろ)"とは、航海用語で船を直進させることを意味する操舵語例だそう。自分もこの巨大な船の船員として乗り込めたことをとても誇りに思う。海原に船を出し、新しい旅が始まるのはもうすぐだ。

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