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雨夜音は彗星の如く

眩い光を放ちながら僕らに会いに来た。確かな軌跡を残し、皆に愛された。一生忘れない光景だった。今は見えない遠くに行ってしまったけれど、いつかきっとまた会える。











最後のメッセージは
「みんなのことがずっとずっと大好き。いつも心の隅に」











(以下は私視点の駄文)

ナナニジはまたかけがえのない人を失った。最年少メンバーの雨夜音。加入時には中学生であったことが仄めかされている。ブログによれば活動終了の理由は学業との両立が困難であること。病気の母を思いながらアイドルを続けることの苦しさも挙げられている。芸能界では高校生くらいから名を上げるのがよしとされるが、忙しい高校生活、メジャーアイドルという「仕事」と両立させるのは尋常ではない。ましてや家族に支えられるより支えなくてはという立場ならやっていけたものではないだろう。

一人ひとりが愛されている22/7(ナナブンノニジュウニ)メンバーだが、厳しい実力主義のグループでもある。雨夜音は、ナナニジの円盤ジャケット等を手掛ける堀口悠紀子原案の「八神叶愛」役に選ばれた特別なメンバーであった。錚々たるデザイナーたちによるキャラクター原案は優劣をつけられるものではないが、ほかの堀口悠紀子原案キャラはセンター「滝川みう」のみで、彼女にはそれだけの期待がかけられていたのだろう。花川芽衣(浅倉唯→椛島光)、帆風千春(千春)、チームとして重要なポジションから欠けていくのは最早このグループの宿命だ。でも誰も悪くない。それがナナニジでもある。このグループに最後に残るものは優しさであるべきだ。

22/7のアニメを見てオーディションを受けたという唯一のメンバー。好きな曲はアニメOP「ムズイ」を挙げる。一言で言うと彼女はナナニジの「これまで」を肯定する存在だ。アニメ「22/7」は普通の若い女の子が楽しく鑑賞するようなアニメではない。話題作でも明るい作品でもないのでもう一人のオタクメンバー椎名桜月が元々見てないのも当然のこと(ただしセーラームーンと金色のガッシュが好きというチョイスからは彼女が一見するより厳しい世界観の持ち主であることを伺わせる)。雨夜音は戸田ジュンちゃん回「ハッピー☆ジェット☆コースター」に感動したのだという。戸田ジュン役海乃るり(吉宮瑠織)も奇しくもナナニジの全てを肯定したメンバーであった。おそらく天城サリーをはじめとする先輩メンバーたちは素直に「ムズイ」を肯定することはできなかっただろう。歌詞の内容もさることながら、8人選抜の傷は深い。「選ばれなかった」現実を突きつけられた高辻麗(日永麗)は泣き叫んだというし、「なぜか」主役に選ばれた西條和・河瀬詩にとっても複雑な心境だったであろう。

天城サリーのTwitterでオーディションを知ったという彼女は全身真っ黒の服装で、最終審査に臨んだ。声優には幼い頃から憧れがあったというが、声優アイドルに一発で合格してしまうのはアニメオタクとしての狂気を感じるレベルの行動力だ(元々は声優への憧れすら、家族にも友人にも言えなかったが、一念発起したのだという)。

小倉唯さんと鬼頭明里さんが好きと語る雨夜音はかわいい声を作るのも得意だ。元々自分の声が好きではなかったという彼女だが、一線で活躍する女性声優達には地声なんて全く関係ない。理想の声を作るのがアニメの夢のあるところだ。

キャラクターの声真似をしたり、コスプレをしたり、メンバーの絵を描いたり、好きなアニソンをテンション高く歌ったり、オタクとしての彼女はアイドルにしてはとても自由に見えた。宮瀬玲奈(佐倉初)の公認の騎士団(にゃいと)代表でもあった。

実は「できる」人物でもある。22/7計算中では、河野都のように突っ走り、戸田ジュンのように天真爛漫。貴重なツッコミ役で、計算中スタッフにも重宝されていた。「狂犬」なんてあだ名もバラエティーでは誇るべきことだ。編集番組なのだから、いくら失敗してもいい。自分から積極的に動き、当たって砕ける勇気が彼女にはあった。

当初はあどけなさの残る顔立ちであったが、美しく成長し、背も伸びた。美しく長い黒髪と目力の強さにまるで上坂すみれさんのような印象を受けると感じていたのは私だけであろうか。

オンライントークはとってもフレンドリー。私はそんなに行ったわけではないが、壁のない感じで答えてくれるし、対等な一人の人間として話してくれる。1万人のTwitterフォロワーを手に入れるのも早かったし(なぜか音ちゃんは学校のクラス数で数えようとしていた。私たちのことをクラスメイトだと言いたかったのだと思う)、数多くのファンに深く愛されていて、8月31日の最後の生誕祭企画にも繋がった(熱心なファンの人が秋葉原に出稿された声優さんの誕生日広告に憧れているという話を覚えていた)。

雨夜音のことを明るいという人がいるが、私は元気な振る舞いの裏に、どこか影があり、闇の属性を強く感じる子だと捉えていた。それがおそらく滝川みうの後継者・八神叶愛の資質であるとも。余談だが、彗星は凶兆でもある。名前からして好天に非ず、光に非ずだ。


今の時代、アニメオタクはもはや暗い趣味ではないかもしれない。だが、雨夜音は「22/7」もそうだが「Angel Beats!」が好きというあたりに命の意味を真剣に考える人柄が見える。


「推しの子」で好きななのは星野アイ、もし異世界転生アニメの主人公になれるのならアインズ・ウール・ゴウン様と言っていた。年相応の厨二病的な強い力に憧れる心。それだけではなくアイドルを続けるには、力が足りない。私たちのためにも、もっと力が欲しいという優しくも冥い欲望があったのか。

最後に私が感動した雨夜音のエピソードを紹介する。映像を見返していないので細部は記憶違いがあるかもしれない。
SHOWROOMで「今まで見た一番面白いアニメは何ですか?」と聞かれた彼女は「難しいなー。面白くないアニメがないからなー。」と何の気無しに言っていた。
オタクというのはいつから大好きなはずのアニメやアイドルにぶつくさ文句を言ったりもする存在になったのか(楽しくああだこうだ言うのはまだいいのだが)。
私には眩しすぎてちょっと泣きそうになったし、その時の私は音ちゃんがずっとこういう人であれますようにと切に願った。

これから先、私たちには知り得ないところで彼女はどんなふうに成長するんだろうか。デビューが早過ぎたとは思わない。八神叶愛役になったのが間違いなはずもない。一度アイドルを辞めるのも正しい選択だと思う。


暗闇を進む彼女の行く先に希望がありますように。

そして願わくば彼女にもう一度会えますように。

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