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日本機械学会技術ロードマップ委員会2023年度オンラインセミナー~持続可能な未来の実現のための技術ロードマップ~(2023年3月20日)

はじめに

山崎委員長に「SFプロトタイピングに携わっている方のお話を聞きたい」とおねがいしていて、日立製作所でSFプロトタイピングに携わっておられる高田省吾様の講演が実現した経緯があり、直接お会いするのを楽しみにしていた。
セミナーはオンライン開催となり、直接お会いしてお話しすることは叶わなかったが、参加することができて良かった。

あらかじめ参加登録しておく必要があったのに気づかず、当日の昼に事務局にお願いしてZOOMのアドレスをいただくというドタバタをやってしまいました。事務局の方にはお手を煩わせて申し訳無いことをしました。

後日、正式に、できる限りの資料が公開されるそうですが、速報と感想としてお読みください

2023年度オンラインセミナー~持続可能な未来の実現のための技術ロードマップ~

2023年3月20日 (月) 15:00 - 18:00

【趣旨】
技術ロードマップ委員会では2050年の社会像から描く2050年に向けてのロードマップ策定の活動を進めております.その活動一環として「持続可能な未来の実現のための技術ロードマップ」をテーマにオンラインセミナーを継続して開催しております.今回は,「フューチャー・デザインの実践と社会イノベーション」,「未来の製品開発を支えるSFプロトタイピング」,「海事デジタルエンジニアリングのロードマップ」の招待講演を企画いたしました.忌憚のないご意見をいただき,日本機械学会および機械工学分野における技術ロードマップ策定の今後の活用に反映していきたいと考えます.

15:00~15:20 開会の挨拶と技術ロードマップ委員会の活動紹介

(株)日立ハイテク・山崎美稀 委員長
現在までの取り組みの紹介。詳細は日本機械学会技術ロードマップ委員会のHPをご覧いただければ良いでしょう

15:20~16:10 「フューチャー・デザインの実践と社会イノベーション」

大阪大学・原圭史郎 教授

山崎委員長は手短にお話しされ、15時8分から原先生にバトンタッチ

原先生は、環境問題に取り組んでいたのだが、環境関連の課題は長期にわたる課題が顕在化していること、そしてそれらの課題がなぜ解決しないのかを考えた時に、「未来人になって考える」フューチャーデザインの考え方の重要性に気づき、フューチャーデザインに軸足を移してきているとのお話からはじまった。

まず、産業革命以降の環境の状況変化のグラフが示された。
(感想;2000年に世界が挙両限界を超えるという「ローマ・クラブ」の警告「成長の限界」がすでに1985年ごろぶつぎをかもしていたな。私も2000年ごろに環境が壊滅的打撃を受けると恐れた一人だったな)

気候変動で、以下の問題が顕在化している
1.人口爆発、水・食糧の不足
2.資源・エネルギーの不足
3.インフラの老朽化と維持管理
4.財政・社会保障
これらの問題はいずれも長期に取り組む課題だが、現在の社会は対応できていない

そこで、西条先生が「フューチャーデザイン」の考え方を提唱された
ヒトの特性は、以下の特徴を持つ
 ・相対性:ヒトの五感は「変化」に対応する
 ・近視性:食べ物があればすぐ食べる
 ・楽観性:将来を楽観的に考える
一方、社会システムは以下の特徴を持つ
 ・市場:将来世代を考慮して分配する仕組みではない
 ・民主制:将来世代の利益を取り込む仕組みではない
これでは、「将来失敗」は目に見えている
(感想:すでに子ども世代は親世代より貧しくなっているし、所得は「5公5民」とかいわれているな)

フューチャーデザインの考え方

・重要なステークホルダーは「将来世代」
・現在の社会システムを「所与」とする
・将来世代に持続可能な社会を提供する

フューチャーデザインは、「将来可能性」を生み出す
現在の利得が減るとしても、これが将来世代を豊かにするのなら、この意志決定、行動、さらにはそのように考えることそのものが、ヒトをより幸福にする

フューチャーデザインの特徴は、「仮想将来世代」の存在
米国コロコイ族は、7世代後の立場に身を置いて世界を考察する
「現在」を「過去」と考える考え方は、
「未来」から「現在」を考える「バックキャスティング」ではない

フューチャーデザインの実験例(上条;高知工大)

学生3名で1世代になり、毎年以下の戦略を選択する
所持金3600円でスタート
A:満額受け取るが、次回は900円減額される
B:900円少ない額を受け取るが、次回は減額されない
3人全員が現代人のグループは、B選択率28%。性格を見ると28%全員が社会を考える性格
3人のうち一人が未来人の代弁者のグループは、B選択が60%

社会実践例:矢巾町

(感想:出ました日本経済新聞で紹介された矢巾町)

半年で6回の会合 4グループでディスカッション。最後に4グループの交渉を経て合意形成
現世代:将来を現在の延長と考える
 結果:即効性がありそうだが近視眼的提案
    提案が施策別・個別的
将来世代:街の長所や社会資源を活かす施策(登山モノレール)
    複雑で時間がかかる施策もいとわない
    社会や技術変革(空飛ぶ自動車など)に高い感度の施策
    普遍的価値を優先
両グループが提案する施策に隔たりは大きかったが、交渉・合意形成において未来世代の施策にシフトしていった。例えば現役世代が提案した「子どもの医療費無料化」は、費用対効果が低く、取り下げることになった。

さらに翌年の矢巾町
・町民千人から26名を無作為抽出
・一人が現世代と将来世代の双方を体験
・意志決定の理由と将来世代へのメッセージをまとめる
A,B:町営住宅のあり方
C,D:公共施設のあり方
グループA:ハコ物改善→生活の質や繋がりの時間軸を重視→地域に根ざした住宅
グループB:支出減→収入増→ライフスタイルを考慮した低相住宅
フューチャーデザインの成果:双方世代の視点を俯瞰する上位視点で考えるようになった

企業のフューチャーデザイン(詳細はひみつ)

オルが(技術開発)
帝国イオン(経営戦略)

吹田市(2022年)

テーマ:カーボンニュートラル
1回~5回 過去の施策の分析
6回 フューチャーデザインによる進め方の説明
7回~10回 地域の実情に合った議論が進んだ

大企業5者と阪大生15名の取り組み

テーマ:サステナビリティとウエルビーイング
因果図を使用したシステム思考にチャレンジ
第1回:現世代
第2回:過去の評価
第3回:未来世代
第4回:因果ループ図
第5回:未来世代

終了
(感想;写真を見る限り、参加者は若者に片寄っているように見受けられた。もっと多様な年齢、性別、職業の人選が必要ではないだろうか)

16:10~17:00 「未来の製品開発を支えるSFプロトタイピング」

(株)日立製作所 ・高田将吾 デザイナー

本日の本命講演

来歴

デザイナーとして、鉄道会社との競争に取り組んだのがSFプロトタイピングに取り組む発端となった

鉄道会社との共創では
プラネタリバウンダリ + ウエルビーイング
(Digitai Transformation)+(Green Transformation)

プロジェクトにデザイナーがいる理由

時代とともに
製品デザイン→情報デザイン→イノベーションデザイン と、活躍の場が広がる
製品の印象→UI(使いやすさ)→製品使用のシナリオ構成・使用の構造(経験のサービス化)
(感想:ダイソンは、半分以上がデザイナーで、地位も高いな)

日立では2010年から2016年ごろにビジョンデザインが始まった。
社会イノベーション事業に傾注し、顧客のニーズに気づき、一緒にニーズを満たす方法を考え、解決策を探る「共創」でアイデアを創出する
このためのさまざまなツールを開発してきた実績がバックボーンとして存在する

ツール1:ビジョンデザイン
15年以上先の生活者が必要とするだろう社会インフラを予見して開発
ツール2:25のきざし(2009年)→すでに答え合わせが可能
    デジタル社会のきざし(2016年)
    持続可能な社会のきざし(2020年)
Society5.0はドローンやパワードスーツなどの技術ドリブンだった。
我々は社会ドリブンでSmartの次に来る社会を予測し、「FareFund」の提案動画を作成した

これからのトランジッションは、共創と対話が重要

SFプロトタイピング

Art and Design           +        SF          +           Buisiness
          ↓           (SF Prototyping(2010) )         (Senario Plannnning(2012))
    ↓        ↓          ↓
   → 日立のSFプロトタイピング   ←

商品の障壁を解決するためのSFを多数本書き、技術開発陣にフィードバックした

SFプロトタイピングに至った背景
車両保守部門との共創 働き方改革に取り組む中で障壁回避のため未来社会をSFした
STEP1:2050年の働き方のSF作成
STEP2:物語を共有
STEP3:物語に現場の人などがコメントをつける(WORDのコメント機能を活用)
STEP4:働き方に対するインタビュー(コメントの意図を確認する)

SF小説の制作

1.マクロトレンドを押さえる
2.「きざし」からエッセンスを抽出する
3.3人のペルソナ(性格付けされた登場人物)を設定する

ペルソナがいるので、「私はこの人物に考えが近い」など、話が出やすくなるし、場作りにも役立つ

必要な情報を個人が抱え込んでいること、裏マニュアルを個人が抱え込んでいることなどがあぶり出された、情報を共有化するにはデジタルマニュアルの導入が必要だが、デジタル化にはさまざまな問題が生じることもわかってきた
これらは引き続き共創の課題として検討していかなければならない

以上のことから、SFプロトタイピングは
潜在的な課題を、SF小説化することで明確にし、解決策を提示するところまでを担える
その後、PoC(Proof of Concept)および社会実装は現場が取り組む課題である

いろいろな部署を巻き込むことが重要。現在、以下の課題に取り組んでいる
・メタバース:スタートアップ7者と観光ビジネスの創出
・エネルギーのあり方

質疑応答の時間があったので質問した
質問「未来は予測するものではなく創造するものである」著者の樋口恭介さんや「SFプロトタイピング」著者の宮本道人さんとのコミュニティなどはありますか
答え:樋口恭介さんは青山新さんとanonpressを立ち上げて、Discordコミュニティも作っておられます

(追記:以下のnoteですね)

宮本道人さんは情報交換をしたりしています
しかし、SFプロトタイピング学会のような大きな集まりはありません

17:00~17:50 「海事デジタルエンジニアリングのロードマップ」

日本郵船(株) 山中遼 課長代理
私は船乗りです。
現在、海事デジタルエンジニアリング社会連携講座(MODE)を担当しています

船乗りがロードマップを作成するに至った経緯をおはなしします
国際貿易は成長産業で、物流費はGDPの8.4~14.7%を占めています
CO2排出量は2.1%で、早急にゼロにしないといけない
商船の建造は日韓中で9割を占めているが、日本のシェは半減
高級客船や油井ブイなど高利益率船はヨーロッパ

ヨーロッパではモデルベーストシステムエンジニアリング手法が確立している

自動運航船の社会実装を目指すMEGURI2040DFFASプロジェクト始動
コンテナ船朱雀を無人運行(2020年2月~2022年5月)
CyberSeaシミュレータを使えたのが大きく、3ヶ月でデジタルツインテスト終了

ロードマップ作成の5本の柱

1.MDB/MBSEモデルの開発
2.脱炭素船の自動運転
3.設計・製造プロセスの生産性向上
4.海洋利活用や物流効率化の促進
5.人材育成・ネットワーキング

質疑応答

質問:ロードマップ作成のメインプレーヤーは誰ですか
答え:欧州のようにエンジニアリング主導で行うのは困難だったので海事クラスターが主導して作成しました

おわりに

今後の技術ロードマップ委員会の運営方針にも関わる貴重なお話を、具体例を交えて聞くことができた。
次回はぜひ懇親会でいろいろお話を伺いたいものだ
山崎委員長、おつかれさまでした

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