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戦争と人間

新興財閥「伍代家」を狂言廻しにして、張作霖爆殺事件から太平洋戦争に突き進んでいく激動の時代を9時間を超える3部作で丁寧に描いている。日本兵に虐殺された韓国人村、その韓国人村で妻を虐殺された日本人、中国財界人、財閥令嬢、政治家、軍人、日本共産党員、それぞれの正義と思惑が入り乱れる中、日本国は軍部の過激派により否応なく戦争への道に進んで行くことになる。太平洋戦争を描いた映画はいくつか存在するが、その前夜を丁寧に描いた作品は貴重。
#戦争と人間

はじめに

東京都内の名画座で「戦争と人間」3部作を一挙上映(9時間越え)するというので出かけていった。

映画館のスクリーンは驚くほど小さく、小ホールに観客が集まってテレビの画面を見ているような感じだったのだが、あまりの壮大な構想に,いつの間にか映画の世界に入っていたのを覚えている。

ホールは常連客だいっぱいだったから、みな、極小スクリーンでもいいから名作を鑑賞したいという思いだったのだろう。

戦争と人間

五味川純平の『戦争と人間』全9巻である。なかなかボリュームがあるため未読なのだが、こちらもたいへん面白く、勉強になるようだ。

映画は決してハッピーエンドなどではなく、太平洋戦争に突き進む時代描写で終わっている。
本作の見どころは、登場人物がそれぞれの思惑で行動し、かつそれぞれの正義が衝突するところだ。

この激動の時代に自分が生きていたら、いったいどうしただろうか。

人生を甘く生きていける平和な現代の日本で人生の主要な時間を過ごすことができているのは「運が良かった」としか言いようがない。
現代の平和な日本国を築いてくださった先人、そして私を育ててくれた両親、貴重な友人や研究者との出会いに感謝。

現在は「太平洋戦争前夜」にそっくりだという人がいる。
日本が軍備を着々と増強し、「機密保護法」の制定や「日本学術会議任命問題」など、言論と自由の封殺に進んでいるのは確かだと感じているが、本作品を鑑賞すると「太平洋戦争前夜」と現代の異なる面も浮き彫りになる。

単純に割り切るのではなく、当時と現代の同じ部分、異なる部分をじっくりと考え、自分が残された人生を(私の場合は研究者として)どう生きるのかを考えるのが重要だと思う。

50年以上前には、日本にもこのような大作を制作する力があったのだ。

国家による情報統制を憂える映画「新聞記者」では、私が映画を観賞したイオンシネマ岡山のスクリーンに足を運んでいたのは年配の方ばかりだった。日本では、このような政治色の強い映画はヒットしないのだなと思っていたが、
NETFLIXが資金提供したドラマ「新聞記者」は、老若男女を問わず鑑賞されたようだ。

NETFLIXが制作資金を用意したと仮定して、果たして今の日本に「戦争と人間」現代版を制作する力があるだろうか

おわりに

後にレーザーディスクだ発売されたけれど、横長スクリーンは当時の27インチブラウン管テレビで見るには小さかった。

結局、大スクリーンの映画館では一度も観たことがないままになっている。

まともな大きさのスクリーンで鑑賞したい

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