九拾六

散りゆく花びらのように

心をほどけたなら

あの日に抱いた温もりを

風にのせて伝えられたなら


誇らしげに掲げたこの手は

すぐに霞んで消えてしまった

幻にも似た光に

眼を奪われていたようだ

今を見ていた筈の視線は

いつからか空を見上げて

想い描いた世界の中に

心は置き去りのまま


つまらない自分を抱き抱えたままじゃ

上手く歩けもしないんだ

空の中身がやたら重くて

両手でだって持ちきれないよ


散りゆく花びらのように

心をほどけたなら

あの日に抱いた温もりを

風にのせて伝えられたなら

何が本当かわからないから

せめて自分でありたいけれど

それも何かがわからないから

少しだけ空を見つめてみようか

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