2023年度 ヒメオオクワガタリサーチ合宿 活動のご報告
担当:石原 雅貴(いしはら まさき) 【キャンプネーム】やんまー
こんにちは、トヨタ白川郷自然學校の生物係、やんまーです。
夏に担当した、ヒメオオクワガタリサーチ合宿の様子について、ご報告します!
今年度は、小学生6年生が2人、中学生7人、そして高校生1人の、計10人での開催となりました。
寒冷なブナの原生林に住むヒメオオクワガタは、西日本や関東地方では生息地が限られますので、毎年、はるばる遠方からも参加していただいています。今年は東京や埼玉、兵庫県などから来てくれた参加者がいました。
このキャンプは、寒冷な地に住むがゆえに、日本に生息する多くのクワガタとは、ちょっと変わった生活をしているヒメオオクワガタを見つけ出し、豊かな原生林でのフィールドワークを楽しみながら、自分で決めたテーマについて研究を行う、サイエンスキャンプです。
前半の日程で主役のヒメオオクワガタを探し出し、後半は自分たちの研究テーマを掘り下げて、レポートを作成します。
最終日には”ひと夏の学会”として、発表会を行い、みんなのレポートをまとめた”ヒメオオクワガタ攻略マニュアル”という冊子を毎年作っています。
毎年、この時期には台風の影響を受けますので、スケジュールを柔軟に変えながら催行しているのですが、今年は最初から高速バスが遅れてしまい、3時間ほど遅れてのスタートとなりました。
メインフィールドも通行止めになってしまったため、初日は自然學校泊となりました。
さらに今年は、猛暑でいつものフィールドが水不足に陥り、クワガタの観察が難しいことが予想されたので、白川村のあちこちに行ってフィールドワークを行いました。
1日目のハイライトです!
バスをご利用の参加者を待つ間に、クワガタトラップを設置。
生態が似ている近縁種のアカアシクワガタを、捕獲することに成功しました!
合流後にみんなでヒメオオクワガタの基礎情報を確認し、夜は自然學校の近くでライトトラップを行いました。
そのまま自然學校で就寝し、2日目はいよいよブナ林へ出発!
午前中に訪れたポイントでは、成虫を見るのが難しいのですが、生息環境を理解するのには素晴らしい場所です。
まだこのキャンプでは見つかったことがない、ヒメオオ幼虫を探して朽ち木を割っていくと、大きなクワガタの幼虫が出てきました。
他にも、岐阜県絶滅危惧種のオオチャイロハナムグリや、寒冷地では貴重な樹液を作り出すコウモリガの成虫など、ヒメオオクワガタ生息地の環境を満喫しました。
午後からは道が開通したので、いよいよメインフィールドへ!
最初のポイントで目ざとく発見!
今年も無事に見つけることができました。
拠点のテントを立てて、野営開始です。
3日目は山場のレポート作りです。
爽やかに晴れてくれたので、午前中はもう一度ヒメオオの生息地を端まで往復してきました。
午後からは、各々が決めたテーマで、実験&レポート作りタイム!
今年は、大きく分けると以下のテーマが出てきました。
・クワガタが好む朽ち木
・ツリートラップに来る昆虫と好みの違い
・ヒメオオクワガタが住む環境の昆虫相
・低標高と高標高の直翅類(キリギリスの仲間)について
同じテーマや、近いテーマの参加者が集まって協力して作業をしました。
夜までかかって頑張った参加者もいましたが、無事に全員がレポートを完成!最後の夜もライトトラップをしました。
最後の4日目は、それぞれのレポートを発表する、ひと夏の学会。
テントを撤収して、自然學校へ向かいました。
このキャンプでは、自分の興味関心を自分なりの視点で掘り下げることを大切にしています。昆虫も自然の一部ですから、実際に観察してみると、自分が想像していた通りのことが起こることは、なかなかありません。
起きた現象を前に、一生懸命考えて、自分なりの仮説をまとめると、発表会がとても楽しくなります。
今年の参加者たちはどう感じたでしょうか、全てはわかりませんが、楽しんでもらえていたら嬉しいです。
今年のキャンプは、台風の影響と猛暑のために、過去のこのキャンプの中で、一番クワガタ達を観察するのが難しい回となってしまいました。
ヒメオオクワガタは見つけられたものの、比較対象になる他の種類のクワガタはほとんど観察できず、スケジュール変更や雨天の中でのテント設営などで、フィールドワークの時間が短くなってしまったことが大きな反省点です。
一方で、4日間で大きく3カ所のフィールドを使ったことで、これまでにない発見がいくつもあったことは次回に繋がる収穫でした。
来年はフィールドと拠点選定を見直して、もっともっと、仲間と一緒にフィールドワークを楽しめる特別な時間を過ごせるよう、ブラッシュアップしていきたいと思います。
毎年必ず新しい友達との出会いと、昆虫との出会いが待っているこのキャンプ、是非遊びに来てくださいね。