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オランウータンGreenの生涯:命の尊さを考える

|自然から学ぶオヤジのコラム 

内容はひと昔前の話になるが、現在でもこのようなことが、世界中で、毎日のように起こっているんだろうなあ~と思うと胸が苦しくなる。
 
これは、2009年/仏【ジャクソンホール・ワイルドライフ・フィルム祭 】で、★グランプリを取り、BSで「世界のドキュメンタリー:GREEN」というタイトルで放映された番組の話だ。

オレはこの番組を見て、痛烈な衝撃を受け、その年に自分の釣りのHPに掲載したら、結構な反響をもらったので、今またリライトしてみた。

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場所はインドネシアのジャングル
象やトラ、サル、トカゲ、鳥、虫、アリ、魚、鹿やいのししまで、ここは、アフリカかと思ったほど、たくさんの生き物達がいる、自然豊かなジャングルが舞台だ。

ナレーションは一切ない。
自然の姿と自然の音、わずかな効果音が入るだけの、一見つまらない番組だった。
しかし・・・、なぜか、1時間近く見入ってしまうことになる。
 
【GREENというオランウータンが主人公】である。
その森に生きた、オランウータンの母親の名前だ。

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 まず、飛び込んできた映像は、そのオランウータンが、結構大きなバックから、顔だけ出して、今まさに息絶えようとしている姿だった。

赤土の未舗装のガタガタ道を、砂ぼこりで見えなくなるぐらいのスピードで進むトラックの荷台に、まるでごみのように積まれ、大きくゆられながら運ばれている。

「これは、なんだ!」言いようのない虚脱感というか絶望感というか悲壮感みたいな感情が、こみ上げて来た。
 
良くある、アマゾンやアフリカの生き物を主人公にしたドキュメントとはちょっと違う。まさに、何かを訴えてくる映像だ。
 
画面が変わり、豊かな森と、さまざまな生き物の生態がすごくリアルに映し出された。
タダじっと、その生き物たちにカメラを向けて、いろいろな表情を静かに撮っている。
サルが木の上で、昼寝をしている。眠くて目を開けていられない。体は木からまさに落ちようとしている。それを何度も繰り返し、そのうち物音にハッとして、姿勢を正す。ホッとする光景だ。

朝の水辺では、象がまるで顔を洗うかのように、鼻からビッシュと水を吹き出し、気持ちよさそうに洗顔をしている、そこに、鹿やサルが、何の警戒もなくトボトボ現れ、彼らも目覚めの水浴びを始めた。

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そして、その近くの木には、オランウータンのGREEN、がいた。彼女は、枯れ枝の中にいる小さな虫を探しては、それをついばんでいる。
横にいる子どもはGREENが少し食べると、横取りをして、その枝にいる虫をついばむ。
しかし、GREENは横取りされてもまったく怒ることもなく、次の枝を探る、そんなごく自然な光景が流れてゆく。
それをじっと見ていると、表情はまさに人間そのものである。

 映像は変わり
そんな、人間となんら変わらない営みがあるジャングルの木が、周りからどんどん刈り取られ始めた。
その刈り取られた木は、おびただしい本数で、数台のトラックで、何度もピストンをして運んでゆく。

あ

行く先は、製材所だ。きれいに製材され、化粧され、いろんな製品の材料として、各国に輸出されていた。

注文先に届いた材料は、さまざまなものに加工され、人間が利用する物へと変わってゆく。

そんな事が、何度も繰り返されて、やがて、あの豊かな森は見る見る小さくなり、整地されていった。

数週間が経過した朝、あれだけ水辺に集まっていた動物たちは、どんどん少なくなり、数えるほどしか姿が見えなくなった。 動物達はどこへ行ったのだろう。

しかし、GREENたち親子は、まだ、いつもの木で何の変化も見せず暮らしている。 
 
原木、製材、材料、⇒住宅、家具、パルプ、紙など、すべて人間が必要とするために・・・。
 
その後、刈り取られた土地には、次から次に食用オイルを採るための、椰子の木が植林され、整備されていった。

そして動物の数は、さらに少なくなってゆく。が、
GREENたちはまだ健在だ。

そんなことは構うこともなく、伐採は進み、木の本数が数えられるぐらいになった時、ほとんどの生き物はいなくなった。
 
GREENたちは・・・?  いた!ちゃんと、いつもと変わらぬ生活をしている。

工場や住宅が、GREENたちから見えるぐらいの距離に、立ち始めた。

さらに、伐採は進む。

ついに、大木が1本だけ残されて他の木はすべて、刈り取られてしまった。
 
カメラがアップになってゆく。何か、動いている。
なんと、その大木に、GREEN親子だけが寄り添うように残っていた。

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なんとも、いえない光景である。

むなしい?寂しい?悲しい?なんだかわからない感情がこみ上げてきた。
その直後、その大木も、ついに切られてしまった。

その切り株の横には、横たわって衰弱したGREENの姿があった。
子どもは、GREENを見つめながらゆっくりと回っている。

体は、どろどろの赤土がべっとり付いて、まるで泥の中から這い出てきたような姿だ。GREENは目をぱちくりさせながら、カメラをじっと見つめていた。

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数日後、子どもはGREENに寄り掛かったまま動かなかった。ガリガリにやせ細り、そう、その子はすでに死んでいた。GREENは、その子を抱き寄せるようにして、かろうじて目を閉じたり開けたりしている。

その後、地ならしをしていた現地の人間が発見し、持っていた大きいカバンにGREENを入れてというより、つめてトラックの荷台に載せ、ゆれる、ガタガタ道を何の気遣いもなくスピードを出して去っていった。
 
気が付くと、GREENは工事現場の事務所にいた。毛布に寝かされ、とりあえず点滴をされ、横には食べ物が置いてあった。
その横たわる姿は、人間のそのものだった。
 
GREENはじっと、カメラを見つめていた。その目は感情にならない、何かを訴えるような悲しそうな目だった。

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数日後、GREENは息を引き取った。
 
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乱獲や自然破壊は結局人間の欲を満たすためだけのエゴの何者でもない!
 
このわずかな、文を読んで、少しでも何か感じるものがあれば、その気持ちを大事にして欲しい。

あらためてオレも、知らないうちに自分本位、人間本位になっていることに気づき、人間のエゴがどれほど愚かで悲惨な結果を生むのかを思い知らされた。

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同じ地球の住人として、人間以外の命でもそれを奪う権利は誰にもない。
食物連鎖のように、命をつないでいくためにはやむを得ないこともあるが、単に豊かな生活をするために、「他の命を犠牲にしてもいい」という理屈はどこにもない。
こんな簡単な事を、相手が人間ではないというだけで、平気で無視してしまう愚かさ。本当にあってはいけないことだと思う

では、また !! (写真はすべてイメージです)

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