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一方通行の愛の話

片思いというのは辛いですね。
相手の気持ちはわからないものです。嫌悪感を抱かれてる可能性もあります。
ましてや、相手が動物だと尚更わからないものです。
今回はそんなお話です。


私は土地の境界などを測量する土地家屋調査士事務所の補助者です。
土地の境界を決めることによって境界紛争がなくなり相続や売買などしやすくなる。
そんなある日1件の依頼が来た。

「うちの土地を分筆してもらいたい。」

分筆というのは一つの土地を二つ以上にすることである。
ちなみに土地のことを「筆」という。
もっというと土地の単位が筆である。なので我々の業界人は筆ということがある。

何故「筆」というのか、戦国時代に豊臣秀吉が太閤検地を行った際に土地の所在や面積・所有者を筆で書いてたからだそうだ。


話を戻す。
調査すると、依頼人Aさんの土地は隣の家を含んだ土地になっている。

赤のラインが分筆腺である

左の家が依頼人Aさんの土地と持ち家
右の家は依頼人Aさんの土地上に建ってる隣人の家
なので赤色のラインで分筆しなければならない。

依頼人Aさん宅へ

調査を済ませ測量に入る挨拶へ
このファーストタッチが大事である。
何故大事かというと、これからの仕事を円滑にするためではなく、おこぼれを貰うためである。

昔ミカン農家の方に挨拶したことがあり、その時は食べきれないからとのことでミカン1箱頂いた。
他にも一緒にタケノコ掘りに行ったり、お菓子をもらったりと良いことばかりであった。
その為今回も気合が入っていた。



ピンポーン


チャイムを押すと奥から70代だろうか、依頼人Aさんが出てきた。

「初めまして今回測量させていただきます、○○会社のりゅうたけしと申します。よろしくお願いします。」

Aさんはとても愛想がよくて話しやすい。
昔行った名古屋の受付とは大違いだ。


Aさんと話していたが、玄関の入り口の鳥かごのようなものが見えた。
目を凝らしてみると、、、文鳥?なにか手の平サイズの鳥。
(しめた!!仲良くなるチャンスだ!この鳥で会話広げて仲良くなろう!!)
そう思った私は聞いてみた。


「なにか飼われてるんですか?」


「あぁこれね、メジロ」
「もう3年は飼ってるかな」

Aさんは鳥かごを開けメジロを愛でようとする。
流石に3年も飼ってるから懐いてるんだろうなと見ていると


メジロはAさんの手を突きまくる。


どんだけ嫌われとんねん!
メジロの突きが亀田興毅の練習風景とマッチする。
恐ろしく速い突き、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね

「痛い痛い痛い!!!」

可愛がってるメジロに突かれるAさん
はよ手離せよ(笑)

もうだめだ笑い堪え切れない。
おこぼれを貰うことはあきらめよう。
そう思い、簡単に挨拶をし作業へ移った。


人間が一方的に好意を寄せてただけだった。

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