見出し画像

スタンダード<ヴァドロック・コンボ>調整録1

1.まえがき

 この記事は筆者がストリクスヘイヴン環境のスタンダードに置いて使用している<ヴァドロック・コンボ>調整過程の記事である。
 主にストリクスヘイヴン発売直後までの調整内容となっているため、最新リストについての詳細は次の記事にて紹介する。また、二環境をまたいだ調整になるため長くなると思われるので、ご了承願いたい。

2.デッキとの邂逅

 初めて目にしたのはTwitterでたまたま流れてきたデッキ。ヴァドロックコンボの初代ともいえるチェーン型の領海路ヴァドロックコンボ(出展:ヴァドロック変容ストーム 説明書
ループ等基本的な動きに関してはぜひ先駆者様の記事や動画を見ていただきたい。
 紙のEDHでネスロイデッキを組んだばかりの筆者は変容デッキかーおもしろそうぐらいのノリでブンブンして楽しんでたが変容デッキの常で除去にすこぶる弱いし安定感も然程、、、といった感じでフリープレイ専用デッキとなっていた。
 およそ一か月後、同プレイヤーが新リストでBo1ラダーでミシック#1を取ったとの情報が流れてきた。初めは一発ネタと思って遊んでいた自分の認識が変わったのはこの時だった。

3.ヴァドロック・「ループ」

 新しいリストはスタンダードでは比較的珍しい「無限ループ」デッキ。(出展:Perfect Thunder Storm(ヴァドロック変容ストーム)調整録
4年前に守護フェリダー&サヒーリコンボがスタン禁止を食らって以来、時折目にすることはあれど、大半は実用性からかけ離れたロマンデッキの域を出ない物で環境に表立って現れることはなかった。
 ところがこのデッキ、生物主体(除去に弱い)という弱点はあるものの非情に早い。最速《両性共生体》からの3ターンキル、《戦利品》や《領海路》による4ターン目5マナから《共生体》+《ヴァドロック》で更地からコンボ、もしくは《黄金架》が走って構えて5ターン目完走。数多くの禁止改訂の末の環境末期という、ぶっ壊れカード達が軒並み退場した上で環境もほぼ固定化、牧歌的ともいえるほどのんびりとしたスタン環境においてかなりのデッキに対して速度勝ちしているのである。さらにサヒーリコンボと違いコンボパーツは強力な飛行クリーチャーでありビートダウンも最低限行える。まさに令和に蘇った<双子の欠片・コンボ>といっても過言ではないだろう(言い過ぎ)。

 もちろんコンボの肝である《ヴァドロック》はデッキに4枚しかないカードであるしそう都合よくいかないことも多いかもしれない。それを解決したカードが《栄光の探索》であり、このカードの発見がデッキの強度を飛躍的に向上させた。

画像4

 さらにこのカードが絡むとヴァドロックは1枚でなく4枚引いたも同然となり、ループがほぼ確定する=ほぼ勝つという、5枚目以降のコンボパーツでありながら本体より強いというよくわからない構図になっている。元リストでは1枚の採用であったが即座に2枚に増やした。
 1枚目の《ヴァドロック》の変容で《栄光の探索》を唱えなおし2枚目を変容できる4マナある状態、概ねこれだけの条件でゲームに勝てるのである。

4.5枚目の《黄金架》

画像7

誰もが認めるカルドハイム最強生物

 前述の通り、《ヴァドロック》に関しては最適ともいえる5~6枚目の担保ができた。しかしながら変容元についてはあらゆるカードをコンボパーツとして吸収する《黄金架》がずば抜けて強く、《共生体》は《領海路》がないと事実上コンボパーツとしては成立しないといった弱点がある。(一応《領海路》を使わないルートは存在する)。何かいいカードは無いだろうかと模索していたところ当時紙で回していたオボシュティムールアールンドを改造したデッキに入っていたカードがあった。

画像5

マナ、生み出します

《語りの神、ビルギ》。《ヴァドロック》による呪文の踏み倒しは「唱えて」いるためヴァドロック+ヴァドロックによって唱える呪文によって赤赤が生成される。《共生体》が存在するか2枚目のヴァドロックを変容することで唱える呪文で1枚でも宝物トークンが出ればヴァドロックの変容に必要なマナが捻出されループが可能になる。さらにこのカードは神の名の通り伝説のクリーチャーであり人間ではない。MTGという世界においては神を変容させるという冒涜的行為がまかり通るのである。
 前述した《栄光の探索》によってサーチ可能な変容元として事実上の5~7枚目のドラゴンとして扱うことが可能になった。《栄光の探索》、あまりにも強い。
 また裏面の置物もあまった土地や2~4枚目の《領海路》等いらないカードでドローができ稀に使用する。最後の1枚を捨てたときに限って《戦利品》がめくれて殺意が芽生えるのもご愛敬である。

5.《領海路》からの脱却

 ここまで触れていなかったが、筆者はこのデッキをBo3ラダーで調整していた。「<ヴァドロック・コンボ>といえばBo1、除去や墓地メタ、当時からトップメタのスゥルタイ根本原理用の踏み倒しメタで対策のとれるサイド後では勝てないだろう」といったのが世間一般での共通認識だったようだ。
 デッキに入ってるカードがほぼすべて必須パーツでありサイドアウトするとデッキが歪むのがコンボデッキの常であり、このデッキも例にもれずデッキ大半が固定枠である、、、と思っていた。
 しかし回してるうちに《領海路の開放》の2枚目以降弱すぎでは?そもそも《黄金架》、《ビルギ》経由なら不要では?というデッキの根本ともいえるカードに対する疑念が生まれる。つまり《領海路》はあれば強いが必須ではないカードであるという考えが浮上したのだ。

画像6

《共生体》と《領海路》は先述の通り基本的にズッ友であるが対策されやすいカードでもある。対策されやすいカードを抜いても依然コンボが成立するのであればそれはサイドアウト可能、それどころかメインデッキから減らしてもいいカードなのではないだろうか。
 特に《領海路》を使わないルートを担う《黄金架》は単体でも環境屈指の高性能クリーチャーである。サイドから打ち消しや除去を取った際にそれをもっともうまく使えるクリーチャーでもあり、この思想を後押しするに至った。

6.デッキリスト(カルドハイム後期)

ニッセン

こうして完成したのがこのリストだ。
特徴的なカードを上げるとすると《シルンディの幻視》とメインに押し上げられた《火の予言》の2種類だろうか。減らした《領海路》や《探索》《戦利品》といったコアパーツを探しだせて追加の土地でありヴァドロック対応呪文であるシルンディで実質のコンボパーツを水増し、それらを安定して3ターン目に打つ余裕が欲しかったため追加の2ターン目アクションとして《火の予言》を取った形となる。
 このデッキで日本選手権Season1を予選突破し本選でも8-3と惜しくもTOP8を逃したものの満足のいく結果を取ることができた。

画像2


 mtgwikiにデッキが乗ったよ!やったね!(どなたか存じませんが編集していただいた方ありがとうございます。)

7.プリズマリ大学への入学、、、しかし


 それなりに大きな大会で結果を残せたのもつかの間、ストリクスヘイヴンが発売されスタンダードはまた新しい環境に突入、、、、しなかった。
 まさかの環境継続である。左を見ればローグ、右を見ればサイクリングにグルール、後ろからは氷雪赤&白単にどつかれ依然玉座に居座るはスゥルタイ根本原理。数枚の強化パーツをもらったデッキはあれどストリクスヘイヴンのカードによって名を上げるに至るデッキが皆無なのである、、、しいて言えばフィニッシャーの《刃の歴史家》と講義パーツを手に入れた<ボロス・ウィノータ>と比較的多くカードをもらえた<プリズマリ・ドラゴン>ぐらいだろうか。
 では<ヴァドロックコンボ>はというと?

画像8

器用万能

《プリズマリの命令》通称プリコマ 4、以上。《ゼロ除算》も試してはみたがイマイチだった。なんだあんまり他と変わらんなと思ったあなた。発売前からも考察されていた(どこの界隈でだ)《プリコマ》は<ヴァドロック・コンボ>を確実に一つ上の次元に引き上げたカードの1枚だ。
・アグロ耐性の向上
  メインに無理なく4枚積めるコンボパーツが除去を兼任している強味である。こちらは1~2ターンずらしてやるだけで無限で勝てるデッキなので恩恵は非情に大きい。
・追加の《戦利品》
  《戦利品》という3マナベストムーブと言えるカードの枚数が純粋に増えた(実際はドロー性能が弱いが)ことにより4ターン目5マナの確率が格段に上昇した。さらにインスタント、解決時ディスカードにより打ち消しデッキ相手に気軽に打てるためいかなる相手にもサイドアウト不要な戦利品として4枠ほぼ固定で採用されることになる。もはや《戦利品》が追加のプリコマの立場だ。
・ファクトで負けなくなった
  《グレートヘンジ》《エンバレスの宝剣》《スカイグレイブの大槌》といったゲームを決めるカードが多く存在するためオマケにしては過ぎた能力。3マナ以下に重要生物の多い都合《ガラスの櫃》を割れるのは非常に大きく対白単、赤単の相性は劇的に改善した。《石とぐろの海蛇》は割れないので注意(プロ多色つらい)
・フィニッシュ力の改善
 
 今までは戦闘後メインフェイズで勝つためには大量にヴァドロックドラゴンを増やして手札に《海駆けダコ》を満載にして実質勝ちの状態にする、《棘平原》を顔面に20回以上打ち込むといった非常に面倒な手間をかける必要があった。また、《黄金架》の性質上ループに入るのはマナが増えている戦闘後のほうが敷居が低い、ほぼ勝ち盤面を作ってもそのターンのうちに勝ちきれないというのはどんな不測の事態が起こるかわからないということでもある。
 《プリコマ》は顔面になんと2点も飛ぶ。たった10回打ち込むだけで勝てるのである。たった倍ではあるが操作量が半分になるのである。棘平原は集めるのに時間をかけてさらにそこから20回も打ち込むとなるとアリーナの仕様上時間が確実といっていいほどに足りない。そもそも土地としておいてることも多く墓地に1枚しかないとかもザラ。《プリコマ》は自身がエンドカードでありつつ無限ドローのパーツであるため1枚引き込むとすぐに2枚目3枚目が見つかりそのまま無限バーンで簡単に焼き切ることができる。このため時短のために採用されていた《オルヴァール》《永久羽》の無限分身が不要となったのだ。
 得たものは非常に大きかったがいいことばかりではすまないのが世の理。
・3マナ域の肥大化
 追加の3マナ域が増えたので当然である。まして4枚採用カード。抜けるカードがなかなか見つからず《共生体》や《火の予言》が抜けていき結果アグロ耐性があまり変わらないといった事態にも。
・カード消費の増加
 《戦利品》と同じモードで使うと手札が1枚減ってしまうため手札の土地と呪文のバランスを取るのが難しくなった。ドロー後ディスカードなので土地を捨ててしまって引けないといった事故はなくなったものの土地を伸ばしづらく感じることが増えた。ヴァドロックで回している時にも手札が増えていかない為手詰まりになることも増えてしまった。

 強力なカードを得たものの代償の問題解決にいい案が無く、環境的な話でもトップメタである<スゥルタイ根本原理>が得たカードがアグロに強いカードだったので<赤単>の勢いが如実に落ちそれをいいことに<スゥルタイ>を狩るためにと一時期ローグが異様に増えた。コンボデッキ故に赤いにも関わらず《アゴナスの雄牛》が取りづらく打ち消しにも弱いこのデッキではローグは明確に不利寄りのデッキだった。 
 紙の大会も依然緊急事態宣言で開かれず変わらない環境にマンネリを感じていたところに某狩猟ゲームの発売が重なってしまったのでしばらく気晴らしにモンスターハントをたしなむことになる(

8.転機

 狩猟生活に明け暮れたゴールデンウィークが過ぎたころ、Twitchで配信を練り歩いているとある情報が舞い込んできた。SCG Tour Online で <ジェスカイ変容>が6-0したというのだ。情報網は広げ得、智は力なり。筆者はSCGのほうは全く参加しておらずいまいち凄さがわかっていないのだがプロたちも多く参加している大会ということは知っているので勝ち組リストなのは間違いないだろう。というわけでデッキを拝見。

画像3

ヴァドロック・・・コンボ?

あえて<ヴァドロック・コンボ>と書かなかったのはコンボよりもアドバンテージに重点を置いたどちらかというと旧式チェインに近い構成である故だ。《表現の反復》、《スカルドの決戦》、《ヴァドロック》らによって《アンリコ》を唱えたいという意図が見て透ける。ループ要素はドラゴンルートに絞ってどちらかというとコンボもできるアドバンテージで押しつぶすタイプのミッドレンジといった雰囲気を感じる。前述の《プリコマ》による弊害に対し各種アドバンテージ確保の枠を作るという至極真っ当な手段で解決したのだ。
 アドバンテージ獲得手段が多く《非実体化》を4枚とれているのも大きく《黄金架》出して《非実体化》のイージーウィンが狙いやすいのも良いだろう。
 しかし疑問点も多い。冒頭でも述べた通り、筆者はヴァドロックコンボの魅力は4ターン、5ターン目に無限で勝ちうる速度と思っているため悠長にドローを繰り返す構成には非常に懐疑的である。アドバンテージ問題は解決したもののコンボ力が大幅に下がっているのである。だが疑ってはじめから回さないというのは無礼なものと何度か回してみるうちにこのデッキと既存デッキとの違いが浮き彫りになってきた。
そうして<ヴァドロック・コンボ>はまた一つ変化を得るのだがそちらについては別記事にて紹介することとする。長くはなってしまったが調整の集大成を次記事に書き残すのでぜひ見ていってほしい。

9.終わりに


 前環境からの調整という現時点であまり役に立たない記事で非常に長くなってしまい申し訳なく感じる。このデッキには非常に意欲的に取り組めていてどこかで記事と書きたいとは思いつつも環境ギリギリまでパっとした成績が残せず踏ん切りがつかなくこのような時期になってしまった。
 また筆者は生粋のチューナーであり、調整は得意なもののデッキ作成が非常に苦手だ。このような素晴らしいデッキの雛形を作り上げて頂き、記事へのリンク等をさせていただいたビルダー、uiro氏には多大な感謝と尊敬の念を示します。

 

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?