世界が丸く、柔くなっている、まる
固さと柔らかさ
角張ったもの、丸みのあるもの
なんとなく世界が丸くなっているような気がする
鋭利な棘を失って丸くなったとか、角を落とされて丸くなったとかじゃなく、なんとなく世界が丸くなっている。
もちろん地球は丸いと言いたいわけじゃない。自分の脳髄に映る世界がだんだん丸くなっている。でも、地球は丸いなら、きっと宇宙も丸いですよね。
地球平面説に対して地球は球体であると主張したいわけじゃないし、天動説をはじめとしたそういう客観的な事実に、地球が回っているんだと反旗を翻すわけじゃない。
でも世界は四角だと思っていたが、不思議にも、不都合にも、自分の視界に映る世界はどこか少しずつ丸みを帯びてきている。
これは自分の中では大きな変化で、それがコペルニクス的転回を始めようとしている。本当に世界が丸くなっているなら、自分はコペルニクスだし、自分はガリレオ・ガリレイなので有罪判決を覚悟するべき。
丸みのある四角とか、摩擦や衝突で削れた歪な四角、ただ四隅を丸く怪我をしないようにデザインしている四角だけじゃなく、しっかりと四角張った形をした物に対しても全体的に丸みを感じる。
もう完全な四角に出会うことはできないのか。
四角のイメージやカラーに関係はない、その四角が白色でも黒色でも、パスカルカラーでも蛍光色でも、なんでも四角が丸くなってる。
四角はどこか重量があって良い。
辺ないし直径を1mとした場合、それぞれの面積は、
正方形ならば1(㎡)です。なんだけど、円ときたらπ(㎡)なんですよね。
つまりこれ、四角かった世界に丸が生まれたとき1-π(㎡)の余りが発生するんですよね。同じスペースを使いながらも四角はfullで、丸はalmostです。
これはよくない。
この余白に対して、むず痒さとか満たされなさを感じてしまう。ただその余白に対して、落ち着きや温かみを感じてしまうのも事実で。
四角と丸。その形より性質に違和感?
そう思えば、丸くなっているというのは不正確だったかもしれない。世界は柔らかくなっている。
なぜ、世界が丸く柔らかくなっているのか。
世界が丸くなってる。ということは、過去の世界は丸くなかったということ。
例に挙げるならば、昭和が想像しやすい。あくまでも自分のイメージにすぎないけれど。
昭和の堅苦しく、ゴツゴツとした、開放された窮屈な空。排気ガスや煙草の煙り、人熱れによってぼやけた視界。都市の人口は増えて、それらを収納するように団地が立ち並ぶ。鉄筋コンクリートが都市部に集まっている。満員電車。残業で余暇時間のない1日。車の後部座席には子どもが全ての席に座っている。朝も昼も夜も、人、人、人。物質、物体、物件。資産、利潤、札束。硬い、固い、堅い。
何もかもがぎゅうぎゅうに詰まっている。
丸くない、密度の高い余白のない四角だ。
それに比べて最近は、どこか余白で溢れている。労働も家事も、趣味も快楽も、地上も空も、暇も退屈も、悲喜交々も、選択も時間も、同情もお気持ちも。
余白を得た世界は、柔軟性をもっている。やわらかく空気をとりこんでクッション性を高めている。羽毛布団のあたたかさ、ソフトテニスボールの無害性、ふわふわのメレンゲ。そんな感じ。
どこか受動的で、包容力があって、すこし反発力をもって。
でも、どこか密度のない空虚で、一点に収束するブラックホールの様。
もう答えは出たかも、丸い世界は「空虚」。
言い換えれば自由で溢れている。もしくは選択で溢れている。あるいは不自由で溢れている。
社会の発展とともに余白を獲得していくんだろう。社会は洗練されていく。無駄すなわち1-π(㎡)が削除された。その意味では高密度に思える。でもある意味では低密度。矛盾しているけどそう思えてならない。
丸くしていたのは空虚な自分?
自分は虚無主義とか厭世主義なんですかね。過去を羨ましがって、現在や未来に蔑ろにしている。あるいは退屈なんですかね。世界が空虚なのは、己の感受性の空虚なんですかね。世界は自己の鏡写しならば、なにもない自分が映す世界はなにもない。ただそれだけなんですかね。あいまいな疑問しかない。
なんにせよ、自分は苦しんでいる。この先、削除されるものは自分だと思う。自分が丸くなっていく。世界が丸くなっていく為に自分が削られる。自分は角かもしれない。
でもここで諦めるわけにはいかない。自分の個人性ないし分人性まで削除してしまえば、それこそ死で。でも削除されない自信はない。抵抗の姿勢こそ見せるけれど、易易と突破される想像はついている。無責任な虚無感。
余談だけど、地球や太陽をはじめ天体は丸い。ミクロな視点では、細胞やら粒子は丸い。生活のなかにある四角いものも細かく見れば構成する物質たちは丸い。すべてのものは丸の集合で形成されている。
丸は極めて自然的なデザインかもしれないですね。丸に収束する運命。
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