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規約のコピーは適法?

こんにちは。名古屋の元テニスコーチ弁護士の柳川豊です。

ATPはいよいよ最終戦のNitto ATP ファイナルズがイギリスで行われていますね。

私は、昨年度の同大会に優勝したチチパス選手に注目しています。昨日は、全米オープンの覇者ドミニク・ティエム選手に惜しくも負けてしまいましたが、あの力強いフォアハンドストロークと片手のシングルハンドストロークは魅力的ですよね。

何はともあれ、上位8名しか参加できない最終戦ですから、どの試合も楽しみです。

さて、前回は、テニススクールのスクール生からの視点で、規約についてお話をしました。

その記事に対し、テニス法プロジェクトを一緒にさせていただいている山本先生からこのようなコメントをいただきました。

前回の記事は、スクール生側の視点で規約を読むことの重要性をお話しましたが、山本先生からのアドバイスを参考に、今度は、テニススクール側の視点で規約に向き合ってみようと思いました。

ということで、今回は、テニススクールのスクール側からの視点で、規約を作り込む必要性ついて、お話ししたいと思います。

(ちなみに、竹内結子さんとは何も関係のない話となります。)

今回のテーマは、

『規約のコピー利用』です。

「テニススクールの規約なんて、大体どこも同じでしょ?」

「だったら、インターネットに上がっている何処かのテニススクールの規約をそのまま使っちゃえばいいんじゃない?」

そう考えるテニススクールもあるかも知れません。

そこはちょっと待った!

規約については、著作物に当たるとされた判例があります。

東京地方裁判所平成26年7月30日判決はこのように述べています。

「規約としての性質上,取り決める事項は,ある程度一般化,定型化されたものであって,これを表現しようとすれば,一般的な表現,定型的な表現になることが多いと解される。このため,その表現方法はおのずと限られたものとなるというべきであって,通常の規約であれば,ありふれた表現として著作物性は否定される場合が多いと考えられる。
 しかしながら,規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。
 これを本件についてみるに,原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点において,原告の個性が表れていると認められ,その限りで特徴的な表現がされているというべきであるから,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号),すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。」(引用した判決文のうち筆者太字変更)

すなわち、規約は、ある程度一般化、定型化されたものであるから、通常は著作物には当たらないが、

作成者の個性が表れているような場合には、特別に著作物に当たるというのです。

このようなことからすれば、テニススクールの規約についても、一概に著作物ではないとは言い切れないということです。

前回の記事でもお話させていただきましたが、規約は、当該テニススクールとそこに通うスクール生との間のルールなのです。

そして、それぞれのテニススクールに様々な特徴があることから、その特徴はルールにも反映されます。

そうすると、その規約を作成したテニススクールの特徴が反映されているような規約をコピーしてしまえば、著作権法に違反してしまう可能性があるのです。

このようなことから、テニススクール側としては、

「規約なんてどこのテニススクールも同じでしょ。」

と安易に考えてしまうのではなく、きちんと法律家の助言を受けて規約を作り込む必要があるということが分かりますよね。

今回は以上となります。テニススクール側からの視点での規約作成の必要性が勉強になったという方、規約のコピーは違法となる可能性があること等が参考になったという方がいましたら、♡やフォローお願いします。次回は、規約を作成するために、気をつけることをお話ししたいと思います。

弁護士 柳川 豊

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