もう誰も書かない伝言板があるバスセンターのあかるい孤独 (北町南風)

バスセンターは明るい。たぶん、昼はもちろん、夜も明るい(と思う)。その敷地の開放感、バスという乗り物の鷹揚さ、入れ替わり立ち替わり現れるスタッフと乗客。明朗なコール。そして照明の多さ。だから、バスセンターは、いつだって寂しそうになど見えない。しかし、昔はよく使われていた伝言板は、枠が錆びて汚れて誰も見向きもしない。撤去されるほども意識されず、完全に存在を忘れられている。伝言板は、本当は一人ぼっちでとても悲しいはずだ。でも、賑やかで明るいバスセンターの中で、その気持ちをおもんぱかる者はいないし、そのことで救いもあるのだ。教室の隅っこで、目立たなくていつも一人だけど、一人創作などをしながらみんなを観察してけっこうほくそ笑んだりしている陰キャのKくんだろうか。

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