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『死と生の狭間』 大谷浩一作品展 2022.8.1-9.1

ギャラリー暮 展覧会記録

《展示作品》
「被爆のマリア」(油絵)
 大谷浩一 文章
「死と生の狭間」(油絵)

展覧会期間 2022.8.1 〜 9.1
於 カタテマ床の間、ギャラリー暮

◯被爆のマリア(油絵) 2021年制作◯
長崎の原爆で被害を受けた、浦上天主堂の「被爆のマリア」と呼ばれるマリア像をモチーフに描かれた絵。
大谷さんは田口ランディさん著「被爆のマリア」を読んだ際に、この絵を描こうと思い立った。
2年の歳月をかけて完成した後に、ウクライナ侵攻が始まり、本展覧会を暮が企画した。

◯死と生の狭間(油絵) 2015年制作◯
舞踏家、大野一雄の肖像画。
大野一雄は世界に"舞踏"という表現方法を広めた第一人者。生命の輝きと思わせる美しい踊りをされた方。大谷さんは、大野一雄が踊る写真を見て「あまりにも美しい」と心動かされ絵画制作に至った。



《展覧会によせて》
この絵と、本展のタイトルとした、『死と生の狭間』は大野一雄がよく使っていた言葉です。大野一雄はこうも言っていました。
“私たちはお母さんのお腹から生まれました。お母さんを食べて、お母さんの一部は死に、お腹の中の私が生まれていく。死と生を同時にやっているわけです。”
命の重なり合いで、命を食べて育っている。
その言葉が私の中で、戦中を生きた方、亡くなられた方たちから受け継がれ、私たちの生命に繋がっていることと重なりました。

私は、死と生の狭間 の言葉のうしろに、で生きる という言葉が隠れているように思います。大野一雄は、死と生の狭間に居て、そこにいるからこそ、強い「生」のエネルギーを発していたのだと思います。魂からの真の光をまとうようにして踊り、生き続けたのだと思います。
戦中を生き延びた人も同じです。打ちのめされる様な、本当の死の深淵を通過してきたからこそ、強い「生」のエネルギーが必要で、それが底力であり、強く美しい魂を感じとることができるのではないかと思います。

そして、死と生の狭間は、現在もこの日常に垣間見ることができます。死と生の狭間を生きて生きて生きていたいと、そう思うのです。

土地の半分以上を寺や墓地を占める谷中という町。古い建物が残り、昔からこの土地に住み続けている方々が多いこの町で、戦争、そして生きることをテーマに展覧会が開けたことをありがたく思います。

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