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暮のこと

暮(くれ)というのは、私の自宅の呼び名である。
自宅に呼び名を付けている人は、私以外に未だ聞いたことが無いが、家に対して深い親しみを込めて呼んでいる。

暮は谷中という町にある。
私が谷中へ越すことになったきっかけは、当時職場であった上野公園の美術館に通いやすいようにで、広い割に家賃が安いのに惹かれて、築70年の風呂無しの古民家に住み始めた。
最初のうちは、夏は酷暑で、冬は尋常じゃなく寒くなる環境や、銭湯通いの生活に慣れるまで時間がかかった。
だが、住めば都というのは本当で、徐々に日本の木造住宅の良さを知ることになる。

木造というのは、お隣の声が聞こえるくらいにツーツーだ。だが、プライバシーが気にならなければ、マンションなどの密閉された空間にある圧迫感や、孤独感がなく、住居としては開放的で、隣人の存在を感じられることが安心感となった。
私の気質と相性がよかった。新居が古民家だったことは私にとって幸運だったと思う。

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