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作品に導かれて

私の家は根津駅が最寄りで、家に帰る道のりでカレー屋ラッキーの前を通る。
私はずいぶん前から、ラッキーの前を通る時、つい壁面を覗き見てしまう変な癖がついている。
ラッキーでは、マスターの心意気で、作家に壁を貸している。作品は3週間おきに入れ替えられる。私はその展示される作品が気になって壁面を覗いてしまうのだ。

色川さんの絵を初めて見た時もそうで、ラッキーの前の通りから壁に掛かる作品を見たのだった。
ただ、その時はいつもと少し違った。
ガラス戸越しに作品の強さが伝わってきて、"見逃してはならない"と直感的に感じ、お店に吸い込まれるようにして入って見たのが、色川さんの絵だった。

私が購入したのは、"Air shelf"というタイトルの絵で、標本のように様々なモチーフが敷き詰められる形で描かれている。いろいろなものを連想させられて、この絵の前に立つと、しばらくぼーっと眺め入ってしまう。

色川さんはリトグラフの作品を多く作られている。繊細な線で緻密に描き込まれ、細かく細かくエネルギーを刻み込み一つの作品にする。それは、制作においてバランス感覚が良く、描くことに対する持久力があるからこそ成せる技だと思う。
そうして、出来上がったものは、やはり、いつ見ても美しいのだ。


*作家紹介*

色川 美江



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