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春節休暇真っ只中のあいりん地区と新世界を彷徨く

あいりん地区へ

2月9日、春節休暇中である中、南海新今宮駅に降り立った俺はすぐそばにある横断歩道の前に立っていた。

新今宮には何度か来た事があるがいつもいくルートはJRの出口の方向に道沿いに沿って歩くというものだ。というかそれしかしていない。なので、今回の旅は自分にとって未開拓のルート開拓という意味合いが強かった。好奇心は猫を殺すとは言うけれども、知らない事を自らの目で知れるという好奇心には勝てない。そんな諦観的で実は楽観的な気持ちを持ちつつも横断歩道を渡り、「旧あいりん総合センター」の横を抜けてあいりん地区へと入っていく。

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旧あいりん総合センター横はこのような状態である。段ボールや立て看板に描かれた文字はこの地域のガラの悪さを感じさせるが、インターネットの惨状を見るに本当はこれぐらいの事をみんなも思っているのでは? と思うようになった今日この頃である。テントはズラっと並んでいて人が生活している様子が見受けられた。

そしてしばらく道沿いに進むと長蛇の列が現れる。並んでいるのは皆中年や老年の男性達だ。並んでいる先は南海電車高架沿いの場所に移転した「西成労働福祉センター」だ。自分が休日に物見遊山している間にも彼等は職を求めて並んでいると思うとモロに社会というのを実感して身が縮こまってしまうような思いになる。あくまであいりん地区はその人の生活がある場所であり、自分はただの部外者なのだ。

西成労働福祉センターを抜けると露店が立ち並ぶ光景が広がる。一度はネットか何かでご覧になった人も居るだろう。露店では店主と見られる男性が客の男性と談笑していた。なので邪魔をしたら悪いと思いその場を足早に立ち去って行った。

露店を抜けると右手に見えてくるのが南海萩之茶屋駅である。左手にはアーケード商店街があり、そちらの方へと入っていく。

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あいりん地区でよく見かける格安宿泊施設(ドヤ)である。あいりん地区はこのような建物が十数軒もあり、海外からの旅行客にも人気を集めているらしい。

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アーケードを一旦抜けて左に曲がると西成警察署がある。侵入者を拒むかのような厳重な建物はかつてこの地で歴史があった事を伝えてくれる。

アーケード街をブラブラしているとゲームセンターが見えてきた。中を見ると昔のビデオゲームとメダルゲームが置かれている歴史の趣のあるゲーセンだ。メダルの競馬ゲームに興じる男性の姿や、ビデオゲームの定番である上海をやりながらタバコを吸っている女性の姿があった。結局そこでもゲームをやらずに隣にあった喫茶店に入る事にした。「珈琲館白木屋」である。

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ストロングコーヒーを頂く。ストロングという名に負けない味の濃さ。煙草との相性も良い。

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モーニングセットのお供はホットサンドとトーストとで選べるがホットサンドが売り切れだったのでトーストで。玉子は50円、良心的な価格である。

あいりん地区にはもう少し居てもよかったが、最初に見た雰囲気に当てられたのかもしれない。当初の予定よりも早くに出て、今池方面へと抜けて行った。今池駅そばにあるホルモン屋がめちゃくちゃ並んでいたのは覚えている。

今池から山王商店通りの方に進んでいく。今池通り(動物園前通り)ですら人通りがそれほど多くない時間帯なのに、山王に入ると全く人通りはおらず閑静な住宅街が広がる。これを右に入れば飛田新地の旅館が立ち並ぶのだから、大阪の新地というのは上手い具合に社会に溶け込んでいるのかもしれない。阪神高速の高架を抜けると人の気配を完全に感じなくなった。見るところも無いし戻ろうかと思ったところにこんな建物を発見した。

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閉店したパチンコ店である。周りを見回すと民家と駐車場しか無くこんな所に建っていたのかと思わずには居られない。もしかしたら開発などで取り残されたのだろうか? そんな疑問を持ちながらも商店街に戻り北上して行き、地下鉄動物園前駅に着いた。道路を渡った向こうにはパチンコ店と幾人かの観光客の姿がある。俺は横断歩道を渡り、その見慣れた光景に溶け込みに行った。

新世界へ

時間はちょうどお昼前ぐらいだったが、ジャンジャン横丁にある人通りはいつもより少なく感じられた。何しろ春節休暇中である。八重勝はいつものように行列を作っていたが、その隣にあるてんぐにはほとんど列が無かった。並ぼうかと思ったが諦めて、北へと進む事にした。

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日曜昼間の新世界の人通りである。普段ならばあまり想像がつかないだろう。串カツだるまなどの一部の有名店には行列ができていたが、それ以外に行列はほとんど無かった。客引きがうるさかったのは覚えている。結局目につく店を見つけられないまま、通天閣前の煙草屋でピースリトルシガーを買った以外は特に何をする訳でもなく、地下鉄恵比寿町駅で地下鉄に飛び乗る事にした。目的地まで歩いて行かなくも無い距離だったが、流石に少し歩き疲れてしまった。地下鉄を乗り継ぎ降りた先は今回の旅の目的地である、心斎橋である。(続く)


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今池駅近くにあった鳥居を模したものに「諸行無常」という貼り紙。全てを言い表している気がして思わず写真を撮ってしまった。



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